【愛はズボーン インタビュー】
4枚目は“自分の中で認められる
一番いい駄作”にしたいと思った
L→R 白井達也(Ba)、GIMA☆KENTA(Vo&Gu)、金城昌秀(Gu&Vo)、富永遼右(Dr)/Photo by 日吉"JP"純平
大阪アメリカ村を拠点に活動を行ない、アッパーかつ心に響く音楽性と様々な感情を揺り動かすライヴで多くのリスナーを魅了している愛はズボーンが4thアルバム『MIRACLE MILK』を完成させた。同作は“ミラクル”“マジカル”“ケミカル”という3ワードをテーマに据えてより幅を広げ、新たな魅力を披露した好盤となっている。愛はズボーンがさらなるスケールアップを果たすきっかけになることを予感させる同作について金城昌秀(Gu&Vo)に訊いた。
自分たちの人間性が反映されている
ようなアルバムにはなった
『MIRACLE MILK』の制作に入る前はどんなことを考えていましたか?
僕らは過去に3枚フルアルバムを出しているんですけど、ヴォーカルがふたりいる中でメンバー4人の関係性だったり、または自分自身のこと、GIMAのことといった自分たちにフォーカスして自分たちのことを歌って、それを愛はズボーンを通してお客さんに届けるということばかりしていた気がしたんですよね。あまりテーマも決めなくて、“愛はズボーンってこういう世界観だよね”ということを言葉にせずに、ざっくりした感じでやってきていて。それを今回はやめようということになって、決めたテーマが“マジカル”と“ケミカル”だったんです。マジカルは魔法やし、ケミカルは化学ということで、どちらも人間の想像を駆り立たせるもので、そういう世界観がいいなと思って。そのふたつのコンセプトを中心にしたアルバムを作っていこうと考えて、制作に入りました。
また新しいことに挑戦されたんですね。『MIRACLE MILK』は“勢いにあふれたアッパーなアルバム”という印象ですが、それだけではなくてエモさやピュアさ、生真面目さといったものが感じられて、そこがすごく魅力的です。
それが伝わっているなら嬉しいです。コンセプトを立てていても“自分たちを歌う”という部分が、結果的に入っていると思うんですよ。自分たちの人間性が反映されているようなアルバムにはなったんじゃないかなと思います。
それがいい方向に出て、気持ちを引き上げてくれると同時に心に染みる良質なアルバムになっています。そして、今作は楽曲の幅がかなり広いと同時に“おっ!”と思う曲が並んでいることも注目です。そういう中でも、特に思い入れの強い曲を挙げるとしたら?
アルバムタイトルになっている「MIRACLE MILK」は間違いないですね。バンドとしても推していきたい曲ですし。あとは、2曲目の「ひっかきまわす」はライヴで定番にしていこうという気持ちで作って納得のいくところに落とし込めた曲なので、印象が強いです。なので、その2曲になりますね。
それぞれどんなふうに作れられた曲でしょう?
「ひっかきまわす」は曲の作り方を、ここ最近とは変えたんです。先にタイトルが決まっていたので、自分たちがどうやって作ったのか思い出せなくなるまで引っ掻き回そうということを、みんなで話したんです。じゃあ、どうやって引っ掻き回していくかとなった時に、原点回帰しようと。バンドを組んだばかりの頃はスタジオに週に1~2回、深夜パックで8時間とか入って1曲を作るのに何週間もかけていたんですよ。でも、10年近くやっていく中で要領良く曲を作れるようになるためにDTMを導入したし、共有の仕方とかも定番化していった。なので、それをやめて、原点回帰しようという話をメンバーとしたんです。それで、1回作ったものを壊して、作り直しては壊して…ということを繰り返していきました。メタルリフみたいなものを乗っけようと誰かが言ったら、みんなでケラケラ笑いながらそれをやってみたり、途中で転調してその先に違う曲のリフをぶち込んでみて、そのあともう1回転調し直すとか。そうやって、本当にもう自分たちの狙いどおりの曲になりましたね。
昔ながらにメンバー同士で角を突き合わせて曲を作るというのは素敵ですし、構築と破壊を繰り返したにもかかわらず初期衝動にあふれているのもさすがです。「ひっかきまわす」の歌詞はどんなふうに書かれたのでしょう?
この曲の歌詞はお客さんに伝わる伝わらないということは途中から放棄しました。愛はズボーンはそういう楽曲が多いんですけど。僕は“耳キャッチ”と呼んでいて、要は“アイ・キャッチ”ではなくて“イヤー・キャッチ”ですよね。“今なんて言ったんやろう?”と気になるようなワードはお客さんのために入れ込んでいますが、それ以外の自分の真意みたいなところは伝わらなくてもいいと思っている節がありまして。「ひっかきまわす」は本当にクリエイターズ・クリエイトであって、創作している人が閃いた瞬間とか、何かを思いついた瞬間とかの頭の中を描いた歌になっています。パッと閃いて電球がチカチカ光るという歌詞で、しかもそれが脳内で何万個も同時にチカチカしているという。クリエイターというのは、全てを一気に思いつく瞬間が絶対にあると思うんですよ。それで、“できたっ!”てなるけど、“面倒くせぇ…”っていう(笑)。閃いた時は“これは1カ月、いや2カ月かかるな”とか“これをかたちにするためには、こうして、ああして、これもやらなあかん”みたいなことが全部、脳内で爆発した感じになるから、それをもう1回引っ掻き回す…という歌詞です。
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自分の中で認められる一番いい駄作にしたいと思ったアーティスト
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