ロバート・パーマーが誰よりも早く
ニューオリンズ・ファンクに
挑んだ傑作
『スニーキン・サリー・
スルー・ジ・アリー』
“ブルーアイドソウル(BLUE-EYED SOUL)=青い目をした白人のソウルシンガー”ということになろうか(だいぶアバウトな言い方だが)。主にR&B、ソウルミュージックを歌う白人シンガーに対してあてられるように思うが、ヴァン・モリソンあたりになると、肌の色に関係なく本物のブルース&アイリッシュ・ソウル・シンガーと言ったほうがよさそうである。識者によっては色々な定義がありそうなのだが、個人的にはあくまでブラックにはなりきれないのを承知の上でソウルミュージック、R&Bへのリスペクトを持ち、クールかつソフィスティケイトされた感覚で歌う(演奏する)アーティストを指す感じだろうか。と言い出したら、ヘビーメタルやトラッドを除くほとんどのアーティストにあてはまってしまいそうなのだが、ロバート・パーマーというシンガーはその持って生まれたシンガーとしての素質だけでなく、ルックスも含め全身でブルーアイドソウルを体現していたような人ではなかったかと思う。
1949年、英イングランド北部に位置するヨークシャー生まれ。10代の頃からバンド活動を始めたという。経歴としては、パーマーはアラン・ボウン・セット、Dada、そしてヴィネガー・ジョーというバンドを遍歴し、ソロに転じている。筆者が彼の名前を知ったのは72年頃だろうと思う。当時、FM大阪のラジオ番組でアルバムをまるごと一枚放送する画期的な番組があり、レコードが買えない中学生にはたいそうありがたく、まめに放送を録音して…というのが生活習慣だった。ある時、ヴィネガー・ジョーという英国のバンドの『ロックン・ロール・ジプシーズ(原題:Rock'n Roll Gypsies)』(’72)が紹介された。女性ヴォーカルがリードという、なかなか熱いR&Bバンドで子供の耳にもカッコ良いなぁと思った記憶がある。放送のなかほどでDJがバンド紹介をし、ツインリードの女性がエルキー・ブルックスといい、男性のほうがロバート・パーマーというシンガーであることが語られたのだった。音楽雑誌でも取り上げていなかった彼らを、ラジオ番組が紹介したことが今でも不思議に思えてならないのだが、私はアルバムを買う余裕がなかったので、しばらくその録音テープを聴いていた。だいぶ後になってレコード屋でようやく見つけたアルバムのジャケットは、女性のほうがステージで踏ん張っているショットをとらえたもので、アイク&ティナ・ターナーみたいなイメージだった。
ヴィネガー・ジョーはアルバム3枚を残し、73年頃に解散し、パーマーはソロ活動へと移行したようなのだが、私が彼の名前を再び目にするのは80年代も半ばになってからのことだと思う。本作もとうに出ていたにも関わらず興味が別のところにいっていたので、アルバムをチェックするということもなかった。アイランドレコードでのソロキャリアも順調で、スーツをびしっと決めた姿はロックっぽくはないものの、格好良かった。あの頃のロック界でそんなスタイルを定着させているのは、他にロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーぐらいだったろうか。
パーマーとの邂逅はふいにやってきた。リトル・フィートやミーターズ、ネヴィル・ブラザーズ、ドクター・ジョンなど、米国南部のR&Bに惹かれ、関連するアルバムを物色していた時、レコード屋の知人が、その方面を探しているのなら、これを知らないのはマズいだろと、リトル・フィートやミーターズがレコーディングに参加しているというパーマーの『スニーキン・サリー・スルー・ジ・アリー』を勧めてくれたのだ。その場で買ったアルバムを聴き、今のいままで本作やパーマーのことをほったらかしにしていたことを少し恥じた。それにしても、これがソロデビュー作とは!
アーティスト
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