【THE COLLECTORS ライヴレポート】
『THE COLLECTORS
35th anniversary live action
"Living Four Kicks 2022"』
2022年7月23日 at 豊洲PIT
2022年7月23日 at 豊洲PIT
そして、山森“JEFF”正之(Ba)と古沢“cozi”岳之(Dr)の気持ち良いビートに乗って反戦の想いも織り込んだメッセージが1曲目から響き渡ってきたことで、このバンドの、ひいては加藤の生きる姿勢がのっけからくっきりと明確に打ち出されていた。そう、“生活、社会、政治は地続きである”という。また、この日の選曲にも「NICK! NICK! NICK!」が組み込まれていたことにも、戦禍に見舞われている人々への祈りのような気持ちが強く深く伝わってきた(とはいえ、この曲はほぼ定番に近いので、一貫した姿勢・信条が世情と相まってさらに…という感じだ)。
もちろん、連日35度台を叩き出す猛暑の夏真っ盛りとあって、ポップでロマンチックなサマーチューンも爽快に鳴らす。「JET HOLIDAY」で旅に出て、古市コータロー(Gu)のワウが効いた「SUMMER OF LOVE」でドーバーの白い壁を目指し、“マイアミなんか行ったことない”(加藤のMCより)からこその夢を膨らませながら高らかに歌い上げる「マイアミビーチ」で楽園へ。そうそう。“全てが凍りつく”“白い雪原”へと、さながら巡礼者のごとく足を踏み入れていくサイケデリック&ビートナンバーは、よりアグレッシブなサウンドへと深化し、聴く者の想像力を豊かに喚起させ、涼を体感できるようなトリップも。
サマーチューンを次々と繰り出していく間には、イントロが奏でられた瞬間にいくつもの拳があがり、マスク越しに“おー!”という小さな叫びが聴こえてきた、ごくごく初期のナンバーも投下。こういった30数年前の、特に少年の心を描いた楽曲を今もフレッシュさを持ってプレイできるのは、THE COLLECTORSの大きな魅力のひとつだろう。人として成熟しながらも、若さを否定するようなつまらない大人には決してならなかったからこそ、新たな感動をこうしてまた呼び起こせるのだ。
当然、年齢を重ねてきたからこそ描ける想いや情景もある。それがまさに、中盤に披露された未発表新曲の「ジューシーマーマレード」だ。非常にキャッチーなサイケポップナンバーだが、歌詞のモチーフはポルノスター。昨今、セックスワーカーやAV新法にまつわる話題もさまざまあるので、それが加藤のアンテナに引っかかった…のかどうかは知る由もないけれど、実にタイムリーなものを選んで楽曲にしているのは確か。
そんな未発表新曲もあれば、“初めてライヴで演奏しました”(加藤)という2015年にリリースされたアルバム『言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと』からのナンバーもあった。この楽曲をセットリストに入れた理由を古市は“フィーリング”と語っていたが、35年の歴史がくれるサプライズのプレゼントのようで、ファンにとってはたまらない一曲だったのではないだろうか。
コロナ禍からまだまだ抜け出せない世界へのストレスを打破すべく、現時点での最新オリジナルアルバム『別世界旅行〜A Trip in Any Other World〜』からは「お願いマーシー」「全部やれ!」と言ったアップチューンをセレクト。「お願いマーシー」に関しては加藤がインタビューで“コロナが終息したらやらなくなるかも”と冗談まじりに話していたが、どうやらしばらくはこの起爆力はマストであり続けそう。いや、コロナが消え去ったとしても、こんなにもカッコ良く2020年代を象徴するロックンロールチューンは、いつだって、どこだって、聴かせてほしいものだ。
古市、山森、古澤の3ピースで演奏されるインストゥルメンタルのブルースロック「MILK COFFEE BLUES」へと続く、古市のリードヴォーカル曲は、山森が“じゃあ、コーちゃんが歌います”と紹介したソリッドなロックナンバー。作者は加藤だが、この不良の匂い漂う楽曲は、古市にしか歌えないし、古市だからこそ似合う。心やさしき不良の歌声はソロの経験の積み重ねで、より味わい深くなっていた。
声をあげられない代わりにサイリュウムで意思表示というのも、もはや当たり前の光景となっているが(その肯否はあるにせよ)、ユニオンジャック・カラーの3本のサイリュウムを重ねて振っているオーディエンスの姿がとても印象的だった本編ラストは、音も声も言葉も輝きながら真っ直ぐに胸を打つミディアムナンバー。グッとくる気持ちが緩やかに、けれども何度も何度も湧き上がり、思わずこの曲のタイトルとなっている言葉をメンバーに返したくなるようなひと時だった。
アンコールは事前にもらったセットリストには未掲載だった楽曲もプラスされ、“THE COLLECTORSと言えばこれ!”というナンバーも披露されたので、ステージ上もフロアーもエネルギーとパワーが炸裂。とりわけカバーアルバム『BIFF BANG POW!』からUKネオモッズシーンの名曲を聴かせてくれたのは感涙もの。メジャーで活躍し続ける日本唯一のモッズバンドは、今日も最高に洒落ていて、イカしていた。
撮影:後藤倫人/取材:竹内美保
アーティスト
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