【vistlip ライヴレポート】
『vistlip 15th Anniversary LIVE
【Domestic Strawberry Jam】』
2022年7月7日
at Zepp DiverCity (TOKYO)
2022年7月7日 at Zepp DiverCity (TOKYO)
場内にオープニングSEが流れ、ジャム工場をモチーフにしたセットが組まれたステージにvistlipのメンバーたちが姿を現した。客席から湧き起こる熱い拍手を圧するように瑠伊が奏でるファットなベースリフが鳴り響き、ライヴはアップテンポの「Sara」からスタート。白で統一したコンセプチュアルな衣装を身に纏ったメンバー5人が並び立った情景と力強く疾走するサウンドに、グッ!と気持ちが引き上げられる。場内の熱気は一気に高まり、オーディエンスは1曲目から息の合ったジャンプを繰り返すアツいリアクションを見せ、ライヴは上々の滑り出しとなった。
「Sara」の勢いを保ったまま退廃的な歌中と“悪ガキ感”が漂うサビを配した「FIVE BARKIN ANIMALS.」やバウンスビートを活かした大人っぽい雰囲気の「BGM「METAFICTION」などが矢継ぎ早に披露されていく。華やかなオーラを発しながら、それぞれの曲調に合わせて表情豊かな歌声を聴かせる智。クールな雰囲気と楽曲のエモーションを増幅させる多彩なギタープレイのマッチングが印象的なYuh。ソリッドなギターワークを行ないつつ硬派なラップも織り交ぜて、激しいステージングを展開する姿が最高にカッコ良い海。ウネりとキレの良さを併せ持った重低音とフィジカルなステージングで魅了する瑠伊。ドラムセットの後ろから強い存在感を発して、タイト&パワフルなドラミングを決めるTohya。メンバー5人がひとつになって生まれる絶妙なケミストリーと一曲ごとに空気が変わる流れが相まって、ライヴが進むに連れてvistlipの世界はどんどん深まっていった。
ダンサブルな「HEART ch.」を聴かせたあと、智のMCが入る。“楽しんでいますか? 『Domestic Strawberry Jam』へようこそ! 今日はね、5人でジャム工場に勤務しています(笑)。素晴らしいタンクがあって、美味しいジャムをみんなで作るからね。音楽用語でも“ジャム”という言葉があって、今夜はメンバーの即興とかセッションとか、そういうあまり見せたことがないような部分も盛り込んでいこうと思っているので、楽しんでください”。リラックスした表情で話す智の言葉に、オーディエンスは温かみにあふれた拍手を贈っていた。
その後はロマンチックな雰囲気の「STRAWBERRY BUTTERFLY」やエモーショナルな「星一つ灯らないこんな夜に。」「SINDRA」などをプレイ。こういった洗練感を纏ったナンバーをライヴでもしっかり表現する辺りは実に見事で、音を紡いでいくことを楽しんでいるメンバー達の姿を見て、vistlipはいいかたちで歴史を重ねてきたなと思う。楽曲クオリティーの高さに加えて、バンドとしての表現力にさらなる磨きがかかった現在の彼らは本当に魅力的な存在だ。
ライヴ中盤ではYuhと海のアコースティックギターのアンサンブルをフィーチャーした「OBLATE SCREEM」や、智の“確かなものなんて何もないけど、俺たちにはひとつだけ証明できることがあります。みんなを愛しているということ”という言葉とともに届けられた「音色 -melody line-」、心に響くサビを配したアップテンポの「Dead Cherry」などを演奏。心地良い瞬間が連続して訪れる彼らのライヴは中だるみなどとはまったく無縁で、観飽きることがない。オーディエンスも聴く体勢になって、vistlipが描き出す色彩豊かな世界に浸る喜びをじっくりと味わっていることが印象的だった。
メンバーたちが素顔のやりとりを見せて客席を湧かせたMCに続いて、“ここから上げていきたいんでね。みんなついてこれますか? もっと楽しもう!”という智の言葉からライヴは後半へ。アグレッシブモードにシフトチェンジして、「TIMER」や「偽善MASTER」といったハードチューンを畳みかける。ステージ全体を使ったフィジカルなパフォーマンスを展開しながら轟音を轟かせるメンバーたちと、それに応えてアツいリアクションを見せるオーディエンス。勢いにあふれていながら決して粗暴な雰囲気ではなく、爽快感に満ちているのも実にいい。Zepp DiverCity Tokyo場内は高揚感に包まれて、本編のラストを飾った「LION HEART」では熱気と一体感で素晴らしい盛り上がりとなった。
バンドとしてのポテンシャルの高さを遺憾なく発揮して、来場したファンとともに最良のかたちで15周年の始まりを祝ったvistlip。楽曲、演奏ともにハイレベルで、彼らのミュージシャンシップの高さを改めて感じたし、MCやメンバー全員が即興のラップを披露した「LION HEART」、アンコールの頭でTohyaが披露した「PUC(パンダ・うさぎ・コアラ)」といった笑える要素を失わないことも彼らの魅力と言える。この辺り、vistlipは奥の深いバンドだと思わずにいられない。
15年という長きにわたって充実した活動を行なってきたvistlipは、今年3月にリリースした『M.E.T.A』でまた新たな顔を提示した。そんな彼らだけに、今後も輝き続けることは必定と言える。今回のライヴのアンコールで智が語った“ファンのみんなが今まで俺たちを照らしてくれたと思う。俺たちもおまえたちが迷子にならないように照らし続けていきたい”という言葉が実現することは間違いなさそうだ。
撮影:nonseptic/取材:村上孝之
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