「劇団『ドラマティカ』ACT2」開幕 
北村 諒(朝比奈ルシカ/鳴上 嵐)と
橋本祥平(雫 斗真/月永レオ)のW主
演がペアを組んでテロリストを追う!

大人気アプリゲーム『あんさんぶるスターズ!!』(以下、『あんスタ!!』)のキャラクターで構成される「劇団『ドラマティカ』ACT2/Phantom and Invisible Resonance」の幕が開いた。原作にはないオリジナルストーリーが紡がれる本シリーズ。キャラクターたちによる演劇(劇中劇)に期待が高まるばかりだ。
キャラを知れば知るほどに「おもしろい!」舞台
今回の物語は理想の世界を作ろうとする組織と、それを暴こうとする警察とエージェントたちの対立を描くもの。情報屋を営むバー「ta-ta」のマスター、ギィ・フェルディナント(乱 凪砂:松田 岳)のもとに集う朝比奈ルシカ(鳴上 嵐:北村 諒)と京極哲太(日々樹 渉:安井一真)。謎のテロリストである「ファントム」を追うために京極の部下である笠舞 歩(氷鷹北斗:山本一慶)が連れてきたのは死刑囚の雫 斗真(月永レオ:橋本祥平)だった。ルシカは斗真と組むことになり、京極の下で歩と共に「ファントム」と接点があるとされる和蒜 デニス 健治(斎宮 宗:山崎大輝)を追おうとするが、ふたりは衝突を繰り返すばかり。作戦行動中も一触即発の状態が続き、和蒜を前にした時ですら小競り合いをしている状態で、ついには――。
朝比奈ルシカ/鳴上 嵐 役:北村 諒
雫 斗真/月永レオ 役:橋本祥平
テロリストと警察・エージェントというテーマは、日常的にドラマや小説などの題材になっており、親しみやすい。『あんスタ!!』という作品を通すことで少年漫画のようなワクワクとドキドキが加わったストーリーになっている。
さらに、朝比奈ルシカなどのACT2での役柄も、『あんスタ!!』のアイドルたちに寄り添った劇中劇であることがよくわかる。上昇志向の強い氷鷹北斗、振り向き方ひとつにも柔らかさを感じる鳴上 嵐、刃のような鋭い視線を送る月永レオ、実はすごい立場の人である日々樹 渉、無駄のない動きを好む斎宮 宗、いろいろな一面を持つ乱 凪砂。ACT1とはまた違った役柄設定で『あんスタ!!』のキャラクターを表現していることに感嘆せざるを得ない。劇中劇であるため、ある程度キャラクターに寄り添った役柄であるのは当たり前かもしれないが、その加減が実に絶妙である。大胆にキャラクターから遠ざかった役であるようにも見えるし、役柄を演じているキャラクターそのものにもしっかり見える。演出・脚本の素晴らしさとともに、役者たちの努力も鮮明に見てとれる。
京極哲太/日々樹 渉 役:安井一真

ギィ・フェルディナント/乱 凪砂 役:松田 岳

また、ACT1同様に『あんスタ!!』の原作ストーリー内でのキャラクター同士の関係も描かれている。今回のACT2で言えば、同じユニット『Knights』のメンバーである嵐とレオ。そして夢ノ咲学院で同じ演劇部であった北斗と渉はわかりやすいだろう。
散りばめられた仕掛けと、続編を希求したくなるラスト
注目してほしいところはたくさんある。例えば衣装。ファンタジーの世界観ではなく現実世界のため、比較的シンプルな見た目をしているが、役者のスタイルの良さが際立つようなシルエットになるように作られているようだ。ターンをするたびにひらりと余韻の残るジャケットの裾はもちろん、眼鏡やタトゥーなどの装飾にまで漫画やアニメのような、視覚的なカッコよさがある。
また歌唱曲のみならず、劇中に使われている曲、客席でのBGMなど音響にも着目してほしい。こちらは実際に耳を傾けてみるといいだろう。

和蒜 デニス 健治/斎宮 宗 役:山崎大輝
笠舞 歩/氷鷹北斗 役:山本一慶

最後はこちらの想像をきっぱりと裏切られ、衝撃と驚きの連続だ。こんなに驚かされるなんて! という感想も聞こえてきそうだ。
芝居、歌、ダンス、アクション、映像、理想と現実、社会風刺……今回の舞台も「てんこ盛り」である。物語の仕掛けを含めて、もちろん物語単体でも楽しめると思う。しかし『あんスタ!!』のキャラクターを知っていれば知っているほど、役柄の後ろに無限の奥行きを感じるおもしろさがある。経験豊富でキレのある美しいアクション、殺陣を見せるW主演の北村 諒と橋本祥平。キャラクターや作品に対して真摯に取り組む姿勢が透けて見えるような役者たち。まさに彼らでないと成立しない公演だ。
終幕後、やはり「唐揚げ」が食べたくなった。
「劇団『ドラマティカ』ACT2/Phantom and Invisible Resonance」は、2022年7月24日(日)まで、東京・大阪・京都で公演予定。
取材・文=松本裕美