蟷螂襲が主宰するPM/飛ぶ教室、神戸
港の歴史を語る『港でカモメがやすん
でる日はね、千帆ちゃん』を再演
『カーネーション』『おちょやん』などの、NHK大阪放送局の朝ドラの常連俳優でもある蟷螂襲(とうろう・しゅう)。その彼が主宰と作・演出を務める劇団「PM/飛ぶ教室」が、2019年初演の会話劇『港でカモメがやすんでる日はね、千帆ちゃん』を、新たなエピソードを加えた形で再演する。
『港で……』は、大阪ガスが主催する演劇プロデュース企画「イストワールhistoire」の一環で上演された作品。「OMS戯曲賞」最終選考に残った劇作家たちが、関西各地の歴史的な出来事をベースにした新作を作るというシリーズで、蟷螂が受け持ったのは神戸港の歴史。元船乗りだった祖父を持つ看護師・千帆が、水先人の国家試験を受ける決意を家族に打ち明ける中で、それぞれの世代の神戸港の記憶や想いが語られていく。
本物のクルーズ船内で上演された、PM/飛ぶ教室『港でカモメがやすんでる日はね、千帆ちゃん』初演(2019年)。
初演は、神戸港内をめぐる観光クルーズ船「神戸シーバスファンタジー号」(2020年6月引退)内で上演。実際の港の風景を眺めながら語られる神戸港の物語は、当然ながらとてつもない臨場感を与えたが、上演が45分以内に限定されるというネックがあった。今回はその心配のない劇場公演ということで、初演では語りきれなかったエピソードを追加。特に千帆の祖母・ツヤコばあちゃんの話を盛り込んだことで、神戸港の歴史をより広く深く掘り下げる芝居になったそうだ。
蟷螂からは、以下のようなメッセージが届いた。
念願だった神戸での再演が、新型コロナ禍での二度の順延を経てようやく叶うことになりました。2019年のファンタジー号初演バージョンに、時間にして35分ほど加筆した改訂版で上演させていただきます。今回書き足したのは、千帆の祖母のツヤコばあちゃんのこと。終戦直後の神戸港での、艀船で育った水上生活に始まって、その後の闇市を生き抜いて、船乗りのじいちゃんとの邂逅を得て74年の人生を終えたツヤコばあちゃんの事情を語ることで、初演からさらに時代をさかのぼって、神戸の街やひとの変遷をたどります。港あってこその神戸だった頃のことを、港湾や船での仕事のきびしさをまじえて御覧いただきます。
PM/飛ぶ教室 蟷螂襲
PM/飛ぶ教室 蟷螂襲
文学的でありながらも人情にあふれた蟷螂の長台詞を、俳優たちが時にひょうひょうとユーモラスに、時にグッと来るほどエモーショナルに演じていくPM/飛ぶ教室の舞台。ドラマティックな逸話には事欠かない神戸港と水先人の世界を、たとえ実際の港の風景がなくても、その声と言葉だけで、目に見えるように浮かび上がらせてくれるはずだ。
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