辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)×浜中文一
宿命の激突、再び!~舞台『スマホを
落としただけなのに』が開幕
舞台『スマホを落としただけなのに』が2021年6月9日(水)、日本青年館ホールで開幕した。本公演のオフィシャルレポート・舞台写真が到着した。
志駕晃が手掛けた同名の人気ミステリー小説を原作として、昨年初めて舞台化されたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、公演が途中で中止に。再演を心待ちにしている観客の声に応え、およそ1年3ヶ月の時を経て、今回、初演キャストそのままに“アンコール”上演されている。
舞台は警察の取調室。若く美しい黒髪の女性5人を残忍な方法で殺害し、その遺体を山中に埋めるという猟奇的事件の容疑者・浦野善治(浜中文一)の取り調べが行われている。ベテラン刑事の後藤武史(原田龍二)の厳しい追及にも、浦野は、飄々とした態度で、自らを刑務所番号にかけて「ハチバン」と名乗るなど、本名すら明かそうとしない。
そんな中、警察に転職したばかりで、サイバー犯罪に強い若手刑事・加賀谷学(辰巳雄大)は、浦野が不正ハッキングに使用していたスマホの解析に成功。その被害者とみられるサラリーマンの富田誠(佐藤永典)に聴取を行うと、スマホを落としたことをきっかけに、さまざまな被害に遭っていたこと、そして、富田の恋人・稲葉麻美(早川聖来)が浦野のターゲットになっていたことを突き止めてーー。
舞台「スマホを落としただけなのに」
今や生活必需品と言っても過言ではないスマホ。そのスマホを運悪く落としてしまったことで、あらゆる個人情報や秘密が暴かれ、犯罪に巻き込まれていくという、現代版ホラーと言えるだろう。ただ、本作は、単なるホラーに留まらず、事件に関わる人々の背景や心理状況を描くことで、「デジタル信号化のできない情けとか絆とか愛とか、それらが如何に愛おしく尊いものかというメッセージ」(脚本・演出の横内謙介)が込められている。
加賀谷学役を演じる辰巳は、警察に転職してきたばかりという設定などから、冒頭から少し「異質」な存在感を醸し出す。難しいサイバー用語をすらすらと口にしながら、人とのコミュニケーションはあまり得意ではないという加賀谷の人物像を非常に丁寧な芝居で見せていた。物語が進むにつれ、「異質」なのは、彼か、それとも我々か。そんなことまで考えさせられる奥深さがあった。
浦野(ハチバン)役を演じる浜中は、その屈折した心理状況や狂気を見事に体現。「連続殺人事件の容疑者」という設定で、俳優としてはなかなか演じるストレスも大きいかと推察するが、本当に「ハチバン」が憑依してしまったかのようなスリリングな芝居から、終始目が離せなかった。
舞台「スマホを落としただけなのに」
舞台「スマホを落としただけなのに」
稲葉麻美役を演じる早川は、この1年でグッと大人びた。初演と比べて、稲葉麻美という役の本来の強さだけではなく、弱さにもフォーカスを当てており、より役を深めた印象。「悲劇のヒロイン」の裏側にあるものをしっかりと伝えた。
初日のカーテンコールで、辰巳は「こうして舞台に再び立てたのは、みなさんのおかげです」と観客に感謝の意を述べ、観客の目の前で芝居ができた喜びを噛み締めていた。そして最後に、辰巳は「千秋楽までみんなで駆け抜けたいと思います」と決意を語った。
さらに脚本・演出の横内謙介は初日観劇後、辰巳雄大と浜中文一に対し、「素晴らしい俳優たち。ふたりとも演技の楽しみを、本質的に掴んでるから、PLAYがきっちりと劇となる。世の人々に、広く知って欲しい。」と讃え、ヒロインの早川聖来には「(昨年より)また伸びた。この大きな舞台で、映える。そして情感が伝わる。こういうのを大器という。」と称賛した。
上演時間は約2時間10分(途中休憩なし)。公演は14日(月)まで。東京都の開催制限に準じ、チケット発売中。当日券も販売されるので、詳細は公式サイトにて確認してほしい。
取材・文:五月女菜穂 撮影:GEKKO
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