【水樹奈々 インタビュー】
今の自分の気持ちを表せるように
歌詞を改めて読み直しながら選曲した
水樹奈々
昨年11月7日に開催した自身初のオンラインアコースティックライヴの映像作品『NANA ACOUSTIC ONLINE』。ファンをやさしく愛で包み込んだ同公演にはどんな気持ちが込められ、どのように制作されたのか? 選曲の意図やリハーサルの様子などを語ってもらった。
これしかない!という
セットリストを考えた
当日は初のオンラインライヴということで、最初はとても緊張していたそうですね。
そうなんです。やはりみなさんの直接の反応がない中で歌う感覚に慣れていなくて、やけに緊張してしまいました(笑)。でも、いつものメンバーが側にいてくれたし、新しくチェリーボーイズ(バックバンドの呼称)に参戦してくださったメンバーもすごく楽しい方々だったので、演奏でもMCでもたくさん助けていただきました。360度、私を取り囲むかたちでバンドメンバーが配置されていたことも大きくて、チェリーボーイズのみなさんとよりアイコンタクトが取れたので、とても楽しく歌うことができましたね。
これまでアコースティックアレンジで披露したことのない曲をセレクトしたとのことで、選曲は結構悩まれましたか?
悩みました。毎回、プロデューサーの三嶋章夫さんと1カ月くらい悩むんですけど、今回はアレンジを一から全て行なわなければいけないので、途中で曲を変更できないということもあり、より悩みましたね。いつものライヴだとリハーサルの途中で急に変わることがあって、ひどい時は本番当日にセットリストが変わることがあるんです。でも、今回はそれができないので、本当にこれでいいのかと吟味をして、“三嶋さん、途中変更はできないですよ。これでいいですね”と何度も確認をして、これ以上はないというセットリストを考えました。
ラブソングが多い印象でしたが、そこは意識されてのことですか?
コロナ禍の中でお届けするライヴなので、愛をテーマにしようと思いました。人に会いたくてもなかなか会えない日々が続いていて不安が募る中で、寂しかったり温もりを求めたりする気持ちを少しでも音楽で癒やしてもらい、画面越しではあるけど、ファンのみなさんとの愛のつながり合いを改めて感じてもらえるようにしたいと思って。今の自分の気持ちを表せるように、歌詞を改めて読み直しながら選曲しました。
歌詞の内容も重視していたということですね。
はい。例えば「Invisible Heat」は見えない温もりを表していて、“なかなか会えない日々が続いても必ずあなたの側にいるから、この温もりを感じてほしい”という想いを込めて選んだり、「ONE」は“今は大変な時だけど、同じ時代に生まれた喜びを噛みしめながら、みんなで一緒に乗り越えていこうね”という想いを込めています。また、「宝物」の歌詞には《みんなの声が響いているよ》という一節があったり、ステージから見えるみんなの笑顔が私にとっての宝物なんだと歌っていて。今はみなさんの前でパフォーマンスする機会が減っていますけど、どんなかたちであっても自分の歌を届けることをやっていきたいという気持ちを、みなさんに改めて伝えたいと思って選曲しました。そして、「Sing Forever」は全公演中止になってしまった20周年記念ツアー『NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020』で歌う予定だった曲で、自分が歩んできた道を歌詞にしています。“幼い頃から歌ってきたけど、これからも歌い続けるんだ”という強い想いが込められた曲なので、20周年イヤーのうちに絶対に歌いたくて選びました。最後の「No Rain, No Rainbow」は、明るく締めたいと思って選びました。まだまだ大変な状況は続くけど、その先にはみんなと笑顔で会える明るい未来が待っていると信じて、この曲を最後にしたんです。
アコースティックアレンジする上で大変だった曲は何ですか?
アレンジはギターの渡辺 格さんとバイオリンの門脇大輔さんに半分ずつお願いしたんですね。流れを説明しますと…8月くらいに全ての曲についての打ち合わせをして構成を決めた上で、ベースとなるデモテープを作っていただき、それを実際にリハーサルの中でブラッシュアップしていくという。リハーサルは4日間だったので、その短い期間の中でどうアレンジを詰めていくか、クオリティーを高めていくかという感じでした。どのアレンジが難しかったかはおふたりに聴いてみないと分かりませんが、最初に届いたデモは1曲目に歌った「エデン」で、格さんからは“ライヴの掴みになる大事な曲だから、まずはその方向性をしっかり決めよう”ということでした。
ピアノで始まるアレンジでしたね。
それは私からのリクエストでした。ピアノで1分くらいのプロローグ的なアレンジを作っていただき、最初のワンコーラスはほぼ歌とピアノだけで、そのあとから他の楽器が徐々に入っていく構成にしたいと。あと、オリジナルよりもテンポを落としてほしいというお願いもしました。リハーサルではデモよりもピアノの音を間引いて、白玉が多い構成にしてもらって。頭サビまではドラマチックに少し緊張感も持たせたかったので、グッとテンポを落としてスローにして、そのあとはテンポを速めて少しずつ盛り上げていくような構成にして。それが決まったことによって全体のビジョンがバッと見えました。
リハーサルでどんどん変わっていったと。
はい。自分が実際に歌ってみた感覚でアレンジを削ぎ落としてみたり、逆に加えてみたり、テンポを変化させてみたりということを行ないました。おふたりがアレンジの土台を1カ月前から譜面に起こして、データにしてくださっていたおかげで、歌うとさらに気持ち良くて自分が体感してもっと変化させたいと思うアイディアがたくさん見えました。たった4日間のリハーサルでしたけど、すごく有意義でしたね。
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