【数土直志の「月刊アニメビジネス」
】アニメの世界企業登場か、拡大続け
るアニプレックスの挑戦
テレビアニメ「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」キービジュアル
その筆頭がアニプレックスだ。もともとはDVDといったアニメパッケージのメーカーだが、現在は制作スタジオの運営、スマホアプリゲーム、音楽、映画配給やグッズ制作・販売などに次々と進出している。
巨大エンタテインメトグループのバンダイナムコグループの同じ時期のアニメ事業(映像音楽プロデュース部門+IPクリエイション部門)の売上げが687億円、アニメ製作大手の東映アニメーションの売上高が548億円、海外のアニメ事業が強いとされるテレビ東京のアニメ事業が215億円。これらを比較すれば、アニプレックスの巨大さが理解できる。
この豊富な資金を新規事業や新分野への進出、さらに企業買収や出資に投じることで、一大企業グループを構築する。いまやアニプレックスはアニメパッケージメーカーではなく、総合エンタテイメント企業に変貌している。
アニプレックスが重要なのは売上高というよりも、利益の大きさである。売上高の大きなエレクトロニクスで主要事業がしばしば巨額な赤字を計上するなかで、アニプレックスは高い利益率で安定して業績に貢献している。さらに成長率が高く、グループ内で存在感が増すエンタテイメント分野のなかでも海外に強く、アニメ市場自体も拡大している。次世代のグローバル事業というわけだ。
それが20年2月に、アニプレックスはフランス、ドイツ、オーストラリアのグループ会社をファニメーション傘下に移管し、同時にソニー・ピクチャーズと伴に、ファニメーションに出資した。
グループ全体で、グローバルのアニメ事業を推進するソニー本体の強い意志が示された。同時に、その中核にアニプレックスとファニメーションがおかれたことになる。
ソニー本体は今年4月にその中国で日本アニメ事業をする最大手ビリビリに約430億円の出資をした。資本関係を通じて関係性を強める。
注目すべきは、ビリビリは19年にファニメーションと事業提携を結んでいることだ。つまり3社がそれぞれ結びつきを持ち、日本、米国、中国とアニメの3大市場をネットワーク化する。これが今後グローバルで大きなパワーを発揮するかもしれない。
買収金額は1000億円を超えるのではないかともするが、報道に対してソニーは否定も肯定もせずに沈黙を守る。しかし報道のように買収を交渉中で、さらにそれが実現するとなるとアニメ業界へのインパクトは大きい。
ただし他の日本企業にとっては、ソニーグループのコンテンツが海外で優先されるのでは、自社コンテンツが十分ビジネス展開できないのではとの懸念をもたせることになる。
もちろん日本のアニメ業界は、長年にわたり築かれた複雑に張り巡った資本関係、人脈で強い相互依存関係にある。そうではあっても他の大手アニメ企業にとっては、グローバルビジネスにおけるソニーグループへの依存度が高くなり過ぎることに必ずしも賛成とはいかないはずだ。
アーティスト
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