【東京パピーズ インタビュー】
真面目に生きて歌ってれば
自然と一貫したものができる

L→R 阿部絵平(Dr)、木村太郎(Vo&Gu)、ヒロ・ハミルトン(Ba)

2018年より現体制となり、2020年1月に1stアルバム『地球儀』をリリースした東京パピーズ。現在はその全9曲のMVを制作中という彼らに、バンドのバイオグラフィーをはじめ、大事なものを確信するきっかけとなった同作について語ってもらった。

自分たちが直したいところって
くだらないことが多い

結成時からのオリジナルメンバーは木村さんのみですが、東京パピーズはどんな経緯で始まったんですか?

木村

もともと友達に誘われて大学のコピーバンドサークルに入ってたんですよ。そこで同じサークルの人がオリジナル曲をやるために組んだバンドに誘われて、ヴォーカルで入りました。それまでは曲を作ったことがなかったんですけど、“ヴォーカルなら曲を作りなよ”って言われ、『東京』(2015年12月発表のミニアルバム)に入ってる曲はほぼ初めて作った曲なんです。

『東京』のレコーディングには阿部さんも参加されていますね。

木村

その時からトシさん(吉岡俊一)がプロデュースで関わってくれるようになって、“作品は今後も残っていくものなんだから、東京パピーズを続けるんだったらレコーディングするメンバーのことも改めて考えてくれよ”って話があったんです。ちょうど大学を卒業するタイミングで、みんな就職してバンドを辞める時期でもあったから、今後のことも考えてレコーディングに参加するかどうかを当時のメンバーと話し合って。で、ドラムは抜けるってことだったので、うまくてカッコ良いと思ってた絵平を誘いました。

阿部

前にやってたバンドで東京パピーズと対バンして、太郎がThe WhoのTシャツを着てたからそれがきっかけでちょっと話してはいたんですけど、それから徐々にイベントでよく会うようになってきて、レコーディングの2カ月前に突然誘われました(笑)。

木村

急ぎだったし、もうその時はバンドもグチャグチャだったんですよね。

阿部

今、やっと固まってきた感じがするね。

その後、木村さん以外のオリジナルメンバーは抜けてしまいますが、木村さんはどうして東京パピーズを続けようと思ったんですか?

木村

最初は大学を出て働こうかと思ってたんですけど、いろいろあって心が折れたんですよね。就活もしたけど、その時にちょうど病気したこともあって“もう無理だ”と思ってしまって。まぁ、若かったのでバンドをやるだけやってみるのもいいかなと、それから今に至るまでズルズルと(笑)。

その後、おふたりが正式加入して2018年に現体制になるわけですが。

木村

ハミーを誘った時はとにかく周りの人にベースがうまいやつがいないか訊いて、共通の知り合いに紹介してもらったんですよね。

ハミー

だから、お互いに強い印象があったわけではなかったんですけど、スタジオに入る前にちゃんと曲を聴いたら良かったので、最初にスタジオで合わせた時、いいと思われるように頑張った記憶があります(笑)。

阿部

ハミーが入って一発目のライヴなんて、“パピーズってこんなにうまかったっけ?”って感じだったもんね。ベースがいいと全体がうまく聴こえるというか、すごくハマった感じがした。

木村

ふたりが正式に入るまでの長いスパンに何回もメンバーチェンジがあったので、気の合う人が残ったって感じですね。

東京パピーズは2019年からプロデューサーの吉岡俊一さんが発足したKingfisherRecordsに所属して、バンドを始めた頃に比べてかかわってくれる人が増えたと思いますが、意見をもらうことに抵抗はなかったですか?

木村

抵抗がなくなってきたからかかわる人が増えてくれたんだと思います。抵抗があったこともあるけど、その時は本当に誰も人がいなかったので。

そのご自身が変わったタイミングはいつ頃なんですか?

木村

4、5年前にライヴのあと、酔った勢いでトシさんに殴りかかって、猛烈に周りの人やトシさんに怒られて(笑)。その日からですかね。その時押さえつけられて仰向けになってるところに絵平に“太郎、お前本当にカッコ悪いよ”って言われてビービー泣いて(笑)。俺は本当にダメだって思って。

先ほど言ってたバンドがうまくいってなかった時期でもあり?

木村

そうですね。その時は自分もいっぱいいっぱいで、バンドを始めた若い頃って突っ張ってないといけないとか、人の言うことを聞いちゃいけないとかあるじゃないですか。それが自分の意地ならいいけど、周りがそれを求めるみたいな悪い風潮があって、僕も必死にそうしてたと思うんですよね。すぐに喧嘩してたし。それを見てたトシさんが“音楽は全部いいし、悪いやつじゃないのに、なんでおまえはそんなにクソなんだ”って叱られて更生したというか(笑)。そういう大人の人がいてくれたのはラッキーですけどね。

先ほどバンドがやっと固まってきたという話もありましたが、1stアルバム『地球儀』はどんな気持ちで取りかかったんですか?

木村

1stアルバムっていいアルバムが多いけど、たぶんそれまでのベストアルバムだからだと思うんですよね。だから、『地球儀』も難しいことは考えずにベストアルバムを作ろうっていう感覚でした。

コンセプトってくらいに固いものではないんですけど、遠くにいる人のことや世界で起きていることだとか、あまり自分の近くにないものを歌っているような気がしました。

木村

最初からどんな作品にするのかイメージができるに越したことはないんですけど、特にテーマを決めなくても真面目に生きて歌ってれば、自然と一貫したものが完成すると思うんです。だから、そう感じてもらったのは、ただ僕がそういう性格ってだけなんだと思います。

今作は全曲が一発録りなんですよね?

木村

今作に限らず『東京』からずっとそうで、一発録りしかしたことがないんですよ。トシさんがそれしかさせてくれないから(笑)。僕はもっと直したいところがたくさんあるんですけど、たぶん本人たちが直したいところって得てしてくだらないことが多いじゃないですか。例えば“私はブスだから”って言ってても周りは可愛いと思ってたり。だから、その本人が気になることは気にしない、直させないっていう主義を信用してやってます。

阿部

時間を置いて聴いたら“いいじゃん”ってなることもあるよね。

木村

そう。最初は自分たちが落ち込んでても、ここのミスもいい感じになってるなってことがある。

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