それぞれにひたむきに役を生きる、4
人の主役の魅力を紹介! ミュージカ
ル『ビリー・エリオット』観劇レポー
ト
テレビ、舞台で活躍し、バトントワリングで全日本選手権大会での優勝経験もあるという川口調のビリーは、児童期と思春期とを揺れ動く様が魅力的。おばあちゃんに宝物を隠している箱を見られてしまい、「秘密」と言ってからすぐさま「何でもない」とあわてて重ねるところや、「父ちゃんのバカヤロー」と言ってしまい、…しまった…という表情を見せるところなど、言うつもりではなかった本心をうっかり明かしてしまったことへの恥ずかしさを感じさせる。だから、亡き母からの手紙をウィルキンソン先生に読ませるシーンでは、…そんなビリー少年でも、この人には本心を明かしていいと思っているんだ、それだけ、先生には心を開いていいと思えたんだ…と思えて、ドキッとすると同時に安堵する。ウィルキンソン先生のレッスンでも、女子の間に男は僕一人…という意識がうかがえ、黒一点感が濃厚。「Angry Dance(怒りのダンス)」でうわあ~~~っと感情をほとばしらせてタップを踏んだとき、一瞬、ゾクっとするほどかっこいい。そして、一緒に演奏するかのように、ロックサウンドと自身のタップの音とを共鳴させる。このナンバーのラストで「ちくしょー」と言わんばかりの仕草をするところも、荒ぶった感じに大人っぽさを感じさせ、成長した姿に思いを馳せたくなるものがある。器械体操が得意で、カーテンコールでも決めてくれた(9月21日12時の部)。
『ビリー・エリオット』舞台写真。左:利田太一、右:安蘭けい(撮影:田中亜紀)
両親共にバレエダンサーで、コンクールでの入賞経験も多数という渡部出日寿は、さすがの踊りの上手さで見せる。気持ちが乗っていて、動きがエレガントで軽やか。ピルエットした際、伸ばした脚が遠心力でびゅいーんと引っ張られてさらに長く見えるような醍醐味があり、美しい。器械体操を見せてもエレガントで、オールダー・ビリーとパ・ド・ドゥを踊る「ドリームバレエ」のシーンでも、手先、足先とも常にピンと伸びているのが綺麗。あどけない魅力があり、それでいて、食ってかかるときのセリフの言い方がちょっと生意気な感じなのもキュート。一人で立ち尽くしていたりする姿が心をしめつけるようなビリーである(9月16日12時の部観劇)。
それぞれが力と個性を存分に発揮し、ひたむきに生きるビリー少年の物語。一人の少年が、周囲の環境やそれゆえの困難に負けず、自身の夢を叶えようと懸命に前に向かって進む姿に心打たれる。4人のビリーの舞台人としての今後に大いに期待したい。
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