【cali≠gari インタビュー】
20年前のアルバムを録音し直す
チャンスなんて普通はない

L→R 村井研次郎(Ba)、石井秀仁(Vo&Gu)、桜井 青(Gu)

2000年に石井秀仁(Vo&Gu)が加入してちょうど20年。現体制初のアルバム『ブルーフィルム』を新たにレコーディングした『ブルーフィルム -Revival-』がリリースされる。新録のみならずカバー曲や新曲も収録された通称“エロアルバム”について、過去の逸話を含めながら話を訊いた。

きれいなエロも汚いエロも猥雑に
詰め込んでみた初のコンセプト作

まずは20年前に発表したインディーズ時代の『ブルーフィルム』を新録した『ブルーフィルム -Revival-』をリリースすることになった経緯から教えてください。

桜井

本当はニューアルバムを出したかったんですけど、コロナ禍の中、全国ツアーを回ることもできないので、当初は『ブルーフィルム』をリマスタリングして出そうという案に変更を考えていたんです。でも、せっかくビクターさんからリリースのお話をいただいていたから、石井さんが加入して最初のアルバムだし、20年目の節目なので、“改めて録り直させてもらうのはどうですか?”って提案させてもらったら、“それ、やりましょう!”となったという流れです。

代表曲「エロトピア」やタイトル曲「ブルーフィルム」が収録されている今作はファンの間では“エロアルバム”と呼ばれているとのことですが、数ある作品の中でもエロティックな要素が強いんでしょうか?

桜井

初音源は『第1実験室』(1994年のデモテープ)で、そこから始まっているんですが、当時から “コンセプトとか考えるのはぶっちゃけ面倒くさいからやめよう”って言っていて、思い描いたものを好きなように詰め込む感じで作っていたんです。そんな中、初めてテーマを決めて作ったのが『ブルーフィルム』で。前任のヴォーカルがエロティックでどぎつい感じの曲を作っていたこともあって、当時の自分の作風も考え合わせてたんですね。“きれいなエロから汚いエロまで猥雑に詰め込んだアルバムってビジュアル系にないよね”って。そもそもまず、“ブルーフィルム”って昔の時代を知ってないとどういう意味なのか分からないじゃないですか。

そうですね。ポルノ映画のことだってピンとこないかも。

桜井

特に日本では“ピンク映画”って言われてましたからね。今みたいにネットも普及していないから簡単に意味が分からなかったし、そこが良かったのかもしれない。

憂いや切なさを含んだ意味での“ブルー”というイメージもあったんですか?

桜井

色からそういうふうにとらえる人もいるかもしれないですけど、“青春”のほうが近いですね。「ブルーフィルム」という曲を作った時は自分が30歳手前だったので、当時はもう“青春”とか言ってる場合じゃないという想いもあって作った曲です。

切なくてヒリヒリした痛みが伝わる名曲ですものね。

桜井

その切なくて痛い曲をオッサンがやってどうするんだ!?っていう(笑)。

(笑)。石井さんは加入して初のアルバムだし、当時のことをいろいろと思い出したのでは?

石井

『ブルーフィルム』のレコーディングに入る1週間前ぐらいに加入したので、いろいろ覚えてますけど、勢いで臨んだ感じですね。バンドのことを完全に理解する前に入ったから“こういうことかな?”って想像しながら歌詞を書いたり。新録するにあたっては特に難しいことはせず、当時のスキルで録りました。

村井さんは当時、アルバムをどうとらえていたんですか?

村井

思い出せることと思い出せないことがあるんですが、“当時はみんなでスタジオに集まってレコーディングしていたなぁ”ってPCに向かいながら思い出していました。今とはプレイも秀仁くんの声も全然違うので、当時の音源を“若いな”って冷静に聴いちゃいましたね。

今回、新たにレコーディングしてみてどんなことを感じました?

村井

“あのバンド状況でよくこんなアルバムが作れたな”と思ったのと同時に、今もバンドをやれていること自体が単純に幸せだと感じました。20年前のアルバムを録音し直すチャンスなんて普通はないじゃないですか。この環境に感謝しなきゃいけないなと。嬉しいですね。

桜井

僕も研次郎くんと同じで“あぁ、20年経ったんだな”と思ったし、“昔のアルバムを録り直させてもらえる機会なんてそうそうないよな”って。

入手困難なアルバムだからファンも嬉しいと思います。

村井

そうですね。昔を懐かしんで聴くのもよし、最近、cali≠gariを好きになった人にも聴いてほしいですね。

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