【松尾太陽 ライヴレポート】
『Mini Album「うたうたい」
発売記念生配信ライヴ』
2020年9月16日 at 生配信ライヴ

2020年9月16日 at 生配信ライヴ

 ミニアルバム『うたうたい』初回生産限定盤に封入されていたシリアルナンバーの入力によって視聴することができた今回の配信ライヴ。開演時間を迎えると、画面に映し出されたステージ上でバンドの演奏がスタートした。瑞々しいサウンドが響き渡る中、松尾が現れて歌い始めた1曲目は、Vaundyが作詞作曲を手掛けた「Sorrow」。歌声を響かせる姿がとても伸び伸びとしている。明るい笑顔はステージに立って歌う喜びをまぶしいくらいに伝えてくれた。そして、大塚 愛の提供曲「mellow.P」も披露。ダンサブルなサウンドに合わせて身体を揺らしつつ歌うさまを観ていると、視聴者である我々の心も爽やかに弾む。手拍子をしながら一緒に踊りたくなった人がたくさんいたのではないだろうか。

 “みなさん、こんばんは。お久しぶりです。やっとライヴができました。それだけで僕は嬉しいです。みんなで一緒に楽しんで、ほんの少しでもネガティブなことを忘れられるような、そんな時間にしていきたいと思っています。最後まで、ただただ音楽を楽しむ時間にしてください!”と視聴者に呼びかけた松尾は、昨年のソロライヴと同じバンドメンバー、山口寛雄(Ba)、黒田晃年(Gu)、皆川真人(Key)、よっち(Dr)を紹介。そして、新型コロナウィルスの影響でファンと直接会えない状況に触れて悔しさを滲ませつつも、“なにくそ!という反骨心だけで生きているようなものなので、これからも楽しめることをしていきたいと思っています!”と決意を語っていた。このような最初のMCタイムを経て届けられた3曲目「掌」。松尾が作詞作曲をしたこの曲は、彼が大阪から上京した頃の気持ちが反映されている。新しい環境への不安はありつつも乗り越えて前に進む決意が歌詞で描かれているが、ソロ活動を始めた現在の心境と重なるものも少なからずあるのだと思う。彼の実像をじっくりと映し出しつつ、聴いている我々も温かく鼓舞してくれる曲であった。

 バンドメンバーたちによるインストゥルメンタルナンバーのあと、衣装チェンジをしてステージに戻ってきた松尾。先ほどまではミニアルバム『うたうたい』のアーティスト写真などでお馴染みの黒いオールインワンだったが、スタイリッシュなモスグリーンのセットアップスーツに着替えていた。そして、披露された「The Brand New Way」はミニアルバム『うたうたい』のテーマ“シティポップ”をまさしく体現したサウンド。松尾はシティポップが大好きである旨を以前からたびたび語っていて、昨年のソロライヴの際も往年の名曲のカバーを披露してくれた。こうして自身のオリジナル曲でシティポップを表現できるというのは、大きな喜びなのだろう。軽快にステップを踏みつつ歌っていた姿はとても活き活きとしていた。

 “ソロ活動を超特急と並行してやらせてもらっていますが、少しでもいろんな方々に元気になっていただけるエンタテインメントをお届けしたいです。その一心で今こうして配信ライヴもお届けてできていると思うと、ありがたく思います。直接みなさんと目を合わせられるライヴが恋しい今日この頃ですが、ポジティブな活動を続けていくと、そういったものが言霊となって新しい明日、明るい未来につながっていくと僕は信じています。これからも松尾太陽と超特急の活動を頑張っていけたらいいなと思っています”。

 力強い気持ちを伝えてくれたMCを経て、いよいよライヴは佳境に差しかかった。まず届けられたのは高田 漣が超特急に提供した曲「ソレイユ」。ブルージーなエレキギターで彩られながら響き渡った歌声は、青空が広がる屋外の穏やかな風景をイメージさせてくれた。そして、ラストに披露されたのはバンドマスターである山口が作曲した「Hello」。“紆余曲折があるかもしれないですけど、それでも僕は見えない明日へ突き進んで行くんだという気持ちが込められている曲です”という言葉が添えられたこの曲は、凛々しさで満ちあふれていた。

 用意していた全曲を歌い終えると“本日は配信ライヴにお集まりいただき、ありがとうございます。素敵な時間になりました。また会いましょう。本当に幸せな時間でした!”と挨拶をして、視聴者に向かって何度も手を振った松尾。心を込めて歌ってくれた6曲は、彼の音楽に対する深い愛情、歌への強い想いも、視聴者のひとりひとりに伝えたはずだ。“うたうたい”としての彼の未来への期待が大いに膨らむライヴであった。

撮影:米山三郎/取材:田中 大



セットリスト

  1. 1. Sorrow
  2. 2. mellow.P
  3. 3. 掌
  4. 4. The Brand New Way
  5. 5. ソレイユ
  6. 6. Hello

松尾太陽

マツオタカシ:両親の影響で幼い頃より1970年、80年代の音楽に慣れ親しんで育ち、12年6月に超特急のバックヴォーカルとしてCDデビュー。伸びやかな歌声と、ソウルフルなファルセットから艶やかに響く低音までを使い分ける表現力には定評があり、19年9月に開催した自身初となる単独公演『Utautai』のチケットは完売。平成生まれながら音楽ルーツと豊富な知識、さらに、どんな楽曲世界にも没入して登場人物を演じ切る七色の歌声で、今、大きな注目を集めている。20年9月にミニアルバム『うたうたい』でソロデビュー。

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