ミュージカル『ビリー・エリオット〜
リトル・ダンサー〜』東京公演が開幕
〜本作の見どころを改めて解説!
なぜ、このミュージカルはこんなにも人々を魅了するのか。到着したばかりのオフィシャル舞台写真とともに、本作品の魅力や見どころを解説してみたい。
11歳のビリーを演じるため、オーディションの条件は、声変わり前の8歳〜13歳ぐらいの男の子に絞られる。それでもビリーになりたいと全国から1511名の応募があり、292名が書類審査を通過。そして、2019年6月に8名に絞られ、そこからレッスンを重ねて、最終的に日本版2代目ビリーとして4名が選ばれた。
東京都出身の利田太一くん。幼少期からバレエを始め、コンクールで入賞経験多数。2017年初演時にもオーディションに参加し、今回見事リベンジを達成した努力家だ。以前、ビリーに共感するところを聞いたときは、「ビリーはバレエをずっと頑張っていますが、僕もバレエを3歳からやっています。でも「バレエの好きなところは何?」と言われても、うまく答えられないんです。ちょっとわからない。(笑)けれど、「Electricity」の「うまく言えません」という歌詞を聞いて、「これだ!」と共感しました。それですっかり『ビリー・エリオット』にはまりました」。
東京都出身の渡部出日寿くん。両親ともに世界トップクラスのバレエダンサーといういわばバレエ界の“サラブレッド”で、実際、自身も数多くのバレエコンクールで入賞。今回、芝居や歌は初挑戦だったが、等身大のビリーをのびのび表現している。以前、SPICEが行った取材で、憧れの人は誰かと尋ねた際は「前回の公演でビリー役を演じていた前田晴翔くん」と回答。その上でどんなビリーを演じたいか聞くと、「自分にしかできない、最高のビリーになりたいです」と笑顔で話してくれた。
4人とも初めからすべてを“完璧”にできたわけではない。得意分野を伸ばし、苦手なジャンルを努力で克服し、いま、こうしてこの舞台に立っている。そう、本作は、ビリーの成長を描いているが、ビリーと同じように、ひたむきにレッスンを重ねてきたビリー役の彼らの成長が見て取れるからこそ、リアリティがあり、より観客は感動するのである。
柚希は初演に比べて、いい意味で肩の力が抜けた。宝塚歌劇団トップスターの名残りが良くも悪くも見えていた初演だったが、再演はよりウィルキンソン先生の人物像を深め、直接語りはしないが、ウィルキンソン先生が諦めたであろう「夢」、「母」であることや「女」であることに対する思いなどが、芝居の間に滲み出ていた。
再演からの参加となる、ウィルキンソン先生/安蘭けい、お父さん/橋本さとし。言わずと知れた実力派俳優だが、本作でどんなパフォーマンスを見せてくれるか。期待したい。
アンサンブルの群舞がセクシーな「Grandma's Song(おばあちゃんの歌)」、大人になったビリー(オールダービリー)と一緒に踊る「Swan Lake Pas de Deux(白鳥の湖 パ・ド・ドゥ)」の幻想的な空間、炭鉱夫のヘッドライトが誇り高く美しい「Once We Were Kings(過ぎし日の王様)」など、そのほか挙げるとキリがないのだが、洗練された演出は必見だ。
作品中では、「社会というようなものは存在しない」と言い切り、個人の「自助」を強く促進したマーガレット・サッチャーへの痛烈な皮肉が込められており(「サッチャー!くたばれ」などとなかなか露骨な政治批判が盛り込まれている)、その社会的な背景が描かれることで、大人が楽しめるミュージカルとして、グッと作品の厚みが増していると思う。
上演時間は、1幕80分、休憩25分、2幕75分(計3時間)。 この「奇跡」をぜひ目撃してほしい。
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