つるの剛士炎上:ロマン優光連載169
「バスケットで育つパクチーの写真」Photo:すしぱく(PAKUTASOより)※画像はイメージであり、無関係です
つるの氏の言動で問題があると指摘されるような行動はなんだったのか? 一つには農林水産省の農業関係の窃盗事件が多くなってることに対する注意喚起のツイートを引用RTする形で、自分の畑も外国人とおぼしき人物から作物を盗まれたと報告することで、農業関係の窃盗は外国人犯罪であるという解釈をする人が出てきて、悪質な差別的な人たちが騒ぎだす切っ掛けになるということ。犯人とおぼしき人物に関する情報の根拠を提示できないあいまいな状態でSNS上で披露することで、つるの氏の農園のある地域で無関係の人が疑われたり、偏見の目で見られる危険性があったこと。かなり大雑把に要約するとこの二点です。
前者に関しては、そこまで考えて気を付けてツイートした方がいいのは確かですが、そこまで気を付けてる人がどれだけいるかという話にはなります。後者に関しては、犯人をはっきりと特定して提示できない状況で「あの大学の生徒に万引きされた」とツイートで拡散したら、その大学の生徒全員が疑いの目で見られる可能性があり無関係な人に迷惑をかけるからダメというのと同じで、外国人差別につながるからよくないという以前の雑なふるまいではありますし、確かに、それが外国人差別を煽ることになる可能性があります。しかし、つるの氏は具体的な外国人差別発言をしているわけではありません。どういう意図があってやったのかは他人がわかるわけではない以上、ネット・リテラシーの問題として指摘するしかありません。それをつるの氏を差別主義者で意図的に行ったとして攻撃するのは無理筋だと思います。
つるの氏は『虎ノ門ニュース』のような番組に出演したり、親学の会合に出席したり、新しい保守界隈に近しいと見える人物です。野党は桜を見る会の追及しかやってないという、国会中継を見れば事実でないのがすぐわかるようなことを呟いたり、エビデンスに欠けた野党批判・左派批判をしたり拡散したりする人でもあります。また、つるの氏が支持しているような保守界隈を支持する人の中には非常に悪意に溢れた差別的な言動をSNSで振りまいている人たちがいて、つるの氏を今回応援している人たちの中にも混じっています。そういう人たちが、つるの氏のそれ自体には具体的な差別的な言葉がのっかっていないツイートを利用しながら、悪意に満ちた差別的な言動を撒き散らしているという状況もあります。
そういう部分に普段から反感を抱いている人の一部が、証拠と言える証拠もないのに差別主義者であると決めつけるようなトーンの強い言葉で彼を批判してしまったのだと思います。明確な証拠もないのに決めつける行為は普通に許されないことだし、つるの氏を批判している人たちの論拠になっている部分でもあるわけで、自分たちがそれをやっていたら仕方がないのです。
自分が発した差別的な意図がない発言に対して、特定の属性に対する差別的な悪意に満ちた応援リプや賛同リプが大量に集まったり、その発言にのっかる形で差別的で悪意に満ちたメッセージが発信する人が大量にいたとしたら、どう感じるのでしょう? 自分だったらその内容を不快に感じるだろうし、こういう人たちと同じように思われて責められたら困るとビビるし、迷惑に感じると思います。だから、あの人たちと私は関係ありませんと表明するか、そういうことはやめてくれと表明すると思います。モラルの問題でもあるし、リスク管理の問題でもあります。
つるの氏はまさに同じようなシチュエーションの中にいたわけですが、その状況を指摘されているのに明確な自分の立ち位置に関する声明はださなかったことは個人的には不思議な感じがします。差別は嫌いとは言ってるけど、それも具体的に何を指しているかはわかりません。かといって、「つるの氏がそういった連中を否定したり同意見でないことを主張しないのは、彼らと同意見の差別主義者だから!」と短絡的に結論を出して攻撃するのは、別に証拠があるわけでもないのにおかしいんですよ。意見は全く違うが芸能人という職業柄、応援してくれるファンの個人的主張への論評は差し控えている説。Twitter上のファンめいた人たちが本気でどうでもよく、何を言ってるか気にしたこともないし、何を言ってるかも知らないくらいどうでもいい説。差別問題に対する興味が非常に少なく、自分の中での比重が軽いため、彼らの主張が変だなと思ってはいるが、とくにわざわざ触れるほどの重要性を感じてない説。ちょっと考えればいくらでも仮説は出てくるわけです。普通に考えて、芸能人のツイートに特定の属性に対する悪意に溢れた酷いツイートが大量に群がってるのは変な光景だし、その状況で本人が反応も示さないのも変な状況だなとは思うけど、それ以上のことは断言することはできないんですよ。そうである以上、「つるのさんの発言を利用して多くの差別的な人たちが悪意あるツイートをして、結果として苦しんでいる人がいます。つるのさんはフォロワー数も多く影響力も多いです。被害を受けて気持ち的に大変でしょうが、できれば、そういう部分に配慮してツイートしていただけるとありがたいです」とお願いしたり「こういう感じの状況では、はっきり立ち位置を説明しないと、差別発言に利用されたり巻き込まれたり、逆に差別主義だと言われて攻撃されて嫌な思いもすると思うので、はっきりしといたほうがいいかも。」と提案するぐらいしかできない気がします。
つるの氏の今回の発言は情報の出し方や引用RTの付け方に雑なところが多く、ネットリテラシーとしてもどうかというところもあり、外国人に対する偏見を助長するような可能性はあったのは確かです。ただ、こういうことって、差別等の社会的問題やリテラシーの問題について普段から考えている人ならわかりやすいけど、普段そういうものに興味がない人たちにとってはよくわかんないと思うんですよ。そういう点ではつるの氏みたいな感じが一般的なんですよ。露骨に差別的な悪意を撒き散らしている奴を叩くのは派手だし楽だけど、そういう普通の人の無関心を変えていかなければならないわけで。SNS上で展開していくなら、わかりやすい丁寧で優しい感じで説明していかないと見向きもされないと思うんですよ。強い言葉を使って個人への糾弾みたいな形でやってしまうと、高圧的な態度と見られて広く反感を買う可能性の方が高いんです。実際、この騒動ってそういう風な感じになってますよね。人間なんて、自分が本気で興味ある事柄以外のことは、一生懸命に情報を集めながら検証を重ねて考察したりはしないわけで、なんとなくの雰囲気とか人の印象で把握してしまうものです。その結果、証拠もなしに極端な糾弾をしたりする人とか、バカみたいな変な絡み方をした知名度が高い人が悪目立ちしたせいで、「盗難の被害者・つるのさんに頭がおかしなパヨクが差別主義者だと言いがかりをつけて攻撃した」くらいの話として認識している人も大勢いるわけです。
町山氏は『ウルトラマンティガ』の中の一エピソードとして「少年宇宙人」という回の話をあげながら、つるの氏に対して教え諭すみたいな態度を見せたのはいいのですが、「少年宇宙人」はつるの氏が主演をつとめた『ウルトラマンダイナ』の中のエピソードであることが、つるの氏本人に指摘されてしまい、かなり失礼な話なのにたいして謝りもせず、さらに『ウルトラマンA』の最終回の内容を紹介してさらに教え諭そうとしたりしてたのですが、色々なところがひどくてびっくりします。
まず、「ちゃんと」作品を観ていたら主役ヒーローを覚えていないということはないと思うのです。知識として内容を知っているだけで、観てたとしても「ちゃんと」観てたわけではないでしょうし、別に好きでもないのでは。そうでないと、こんな間違いはしでかさないでしょう。
その程度の思い入れの作品をわざわざひっぱりだしてきたのはどういう意味があるのでしょう? ウルトラヒーローを演じたことがあるからといって、エピソードの話をされたことで説得されるというようなことは普通に考えてあり得ないでしょう。だいたい、プライベートでは左寄りの人が右翼的役柄を演じたり、ミソジニー丸だしの人がフェミニスト的な役柄を演じたりすることなんて普通にいくらでもあるだろうし、俳優と社会的なことを話し合おうとしてるからといって、かって演じた役にまつわる話を持ち出すのは変なんですよ。しかも、本人が出演していない別作品のエピソード持ち出してきてなんか説得しようとか無理ないですか。まあ、別作品でなくて、本人の主演作だったわけですが……。
非常に素直に考えてみると、別にそれでつるの氏を説得できると信じていたわけではなく、ウルトラヒーロー役者にウルトラ作品の良エピソードで説教してやってるかっこいい町山をみんなで褒め称えてほしいという動機だったのかなという感想が出てきてしまいます。ウルトラ役者にウルトラマンネタでマウントをとって誉められたいという感じですかね。もしそうなら、自分が誉められるためにたいして好きでもないのに作品を利用するのはよくないし、社会問題に取り組むなら自分が誉められることとか考えずに真面目にやるべきでしょう。
「ちゃんと」観てない作品をひっぱりだして説教のネタにしようとしたら、相手に自分の主演作だと指摘されるのってかなり恥ずかしい話だし、すごく反省した方がいいと思います。「ちゃんと」観てない作品を偉そうに語ろうとしていたなんて、評論家として致命的なミスです。本業でもないところで評論家としての姿勢を疑われるようなことをしてたら、世話ないですよ。たいした問題でないかのように言う人はいるでしょうが、もし御本人がそれを言うようなことがあれば、文化に不誠実すぎるし、ほんと終わったってことですね。北村紗衣氏やジェット・リョー氏に対する粘着質で高圧的で無理矢理なあげあしとりばかりの絡み方を見たりするたびに、本当に悲しくなっていたのだが、もはや悲しくもない。忙しいからTwitterの通知切ってたのだが、なんか町山氏に引用RTされていて、それをRTするんじゃなくて、「少年宇宙人」をちゃんと観たのかどうかはっきりしてほしい。もし、本気でちゃんと観ていてああいうことになったんだったら、どこか体が悪いかもしれないので、心配なので色々調べた方がいいと思う。
結局、自分が目立つことを優先した結果、恥ずかしいことをやらかしてしまい、リベラルはバカみたいな話にされて、結果としてリベラルや左寄りの人々の足を思いっきり引っ張ったことを自覚してほしい。今回だけではなく、町山さんの最近の言動に呆れているリベラル・左の人も大勢いることを自覚してほしい。「町山は変わった」みたいに叩かれるのは、左寄りの発言が多いからネトウヨっぽいやつに理不尽に叩かれてると思ってるかもしれないし、実際ひどい言われもされて大変だとも思うが、思想とか関係なく言動が呆れられだしているのに気付いてほしい。被害者しぐさとか言い出したら、さすがに引かれると思う。それをあの人が言ったらおしまいだと思う。
つるの氏がそんな町山氏に対して不快にさせてすいませんみたいな形で謝って終結宣言を出したわけですが、何で不快にさせたと思っているのか具体性がなかったりするものの、絶対的に印象はいいわけで、さすが芸能人だなと思いました。ただ、義理の弟さんがパクチーを盗もうとしていた人を許してあげた上に野菜まで渡して返してあげたという話が出てきたのにはびっくりしました。なんというか、義弟さんがそこまで優しく許してあげているのに、Twitterでつるのさんがああいう感じで騒いだのは、義弟さんはどう思ったのか気になるのでした。
https://books.rakuten.co.jp/rb/15761771/
在庫のあるネット書店はコア新書公式ページから
http://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_027.html
https://books.rakuten.co.jp/rb/15176097/
https://books.rakuten.co.jp/rb/15204083/
主要配信先・書籍通販先などは下のリンクからhttp://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_025.html
http://books.rakuten.co.jp/rb/14537396/
主要配信先・書籍通販先などは下のリンクからhttp://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_021.html
https://books.rakuten.co.jp/rb/13104590/
主要配信先・書籍通販先などは下のリンクからhttp://www.coremagazine.co.jp/book/coreshinsho_010.html
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
https://wp.me/p95UoP-3N (コピペして検索窓に)
おすすめ記事
-
『OKMusic』サービス終了のお知らせ
2024.02.20 11:30
-
音楽ファンの声、エールを募集! music UP's/OKMusic特別企画 『Power To The Music』 【vol.89】公開
2024.02.20 10:00
-
今年でデビュー50周年の THE ALFEEが開催する、 春の全国ツアー神奈川公演の チケット販売がいよいよ開始!
2024.02.13 18:00
-
音楽ファンの声、エールを募集! music UP's/OKMusic特別企画 『Power To The Music』 【vol.88】公開
2024.01.20 10:00
-
宇多田ヒカル、 初のベストアルバム 『SCIENCE FICTION』発売決定& 全国ツアーの詳細を発表
2024.01.15 11:00
人気
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第1回 『自己紹介を。』 -
2014.12.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第16回 『巡り合いを。』 -
2016.03.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第2回 『忘れられていることを。』 -
2015.01.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第3回 『魔法の言葉は在るということ、を。』 -
2015.02.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第4回 『モヤモヤの正体を。』 -
2015.03.20 00:00