ダニー・ハサウェイのプロデュースで
ファンク度を増した
コールド・ブラッドの『悪の極致』
ビル・グレアムの経営手腕
しかし、フィルモアの出演アーティストの中には、大手レコード会社との契約がまとまらないこともあった。それがグレアムのお気に入りのアーティストの場合もあったので、彼は受け皿となるインディーレーベルを設立し、大手レコード会社に配給を依頼することにした。それがサンフランシスコ・レーベルで、このレーベルと最初に契約したのがコールド・ブラッドであった。実はアトランティックはコールド・ブラッドとの契約を考えていたのだが、グレアムに先を越されてしまっていたので、配給のみを担当することになった。
サンフランシスコ・レーベルは、続いてタワー・オブ・パワー、ハマー(L.Aエクスプレスのジョン・ゲランが在籍したグループ)、ヴィクトリア(サイケデリック・フォークシンガー)など、いくつかのアーティストと契約するのだが、グレアムは日々のホール運営に追われていたので満足にプロモーション活動ができず、どのアーティストも売れずじまいであった。結局、グレアムの経営手腕は空回りし、このレーベルは短命で終わってしまうことになる。
ベイエリア・ファンク
ふたつのグループの特徴は両方ともほとんどメンバーが白人で大所帯であること、ソウル、ジャズ、ファンク、ロックなどを融合させたサウンドであること、複雑かつキレの良いホーンセクションが存在することなどである。コールド・ブラッドとタワー・オブ・パワーの登場により、彼らの音楽は“ベイエリア・ファンク”とか“イーストベイ・グリース”などと呼ばれ、従来のファンクとは違う位置づけがされるようになる。
ベイエリア・ファンクのグループは、コールド・ブラッドとタワー・オブ・パワーのふたつのグループが中心である。コールド・ブラッドのリードシンガーはリディア・ペンス(白人女性)で、ジャニス・ジョプリンやボニー・ブラムレットばりのダイナミックでシャウトするヴォーカルが特徴だ。ジャニスはペンスのヴォーカルが好きで、ビル・グレアムにコールド・ブラッドのオーディションを行なうように進言していた。また、タワー・オブ・パワーはリード・ヴォーカルが黒人男性(70年代では)で、当然だが黒っぽさが特徴となる。ホーンセクションの一部のメンバーはこれらふたつのグループ(もしくはそれ以上)を掛け持ちしていたが、基本的には独自のキレを持つタワー・オブ・パワーのホーンセクションのみが、ロックやソウル(時にはカントリーも)のセッションに参加することも少なくなく、彼らが参加すると必ずサウンドが締まるのだからすごい。
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本作『悪の極致』についてアーティスト
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