【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:配信ライヴが
今後のシーンにもたらすもの

Editor's Talk Session

BARKS、OKMusic、Pop'n'Roll、全日本歌謡情報センターという媒体が連携する雑誌として立ち上がったmusic UP’s だからこそ、さまざなテーマを掲げて、各編集部員がトークセッションを繰り広げる本企画。第九回目はコロナ禍の中、配信ライヴを積極的に行なっているバンドということで、バックドロップシンデレラの豊島“ペリー来航”渉(Gu&Vo)とオメでたい頭でなによりの赤飯(Vo)に参加してもらった。

座談会参加者

  • ■烏丸哲也
    ミュージシャン、『GiGS』副編集長、『YOUNG GUITER』編集長、BARKS編集長を経て、現JMN統括編集長。髪の毛を失った代わりに諸行無常の徳を得る。喘息持ち。

  • ■豊島“ペリー来航”渉
    バックドロップシンデレラのGu&Voであり、ライヴハウス池袋LIVE GARAGE Admの店長。世界の民族音楽が好きでウンザウンザを流行らせようとしている。

  • ■赤飯
    日本一オメでたい人情ラウドロックバンド“オメでたい頭でなにより”のヴォーカル。サウナ、ホラー映画をこよなく愛する男。

  • ■石田博嗣
    大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。

  • ■千々和 香苗
    学生の頃からライヴハウスで自主企画を行なったり、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。マイブームは韓国ドラマ。

  • ■岩田知大
    音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP’s&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。

ライヴがなくなって
すっかり意気消沈

千々和

今回は配信ライヴを行なっているバンドにお話をおうかがいしたく、おふたりに参加していただきました。コロナ禍でライヴができなくなり、思うように活動もできない現状についてどう思われていますか?

赤飯

オメでたい頭でなにより(以下、オメでた)はお客さんとの距離が近いライヴに重きを置いているバンドだと僕は思っています。それこそが一番大事にしているもので、自分自身もそれを正しいと信じて、それに生き甲斐を感じてライヴをしていました。しかし、その生き甲斐であり、“バンドの武器”と考えているライヴが封じられている現状です。すっかり意気消沈してしまいました(笑)。だって、ほぼ毎週一本はやっていたものですから。

豊島

思ったよりも深刻だったよね。バックドロップシンデレラ(以下、バクシン)はライヴをやると密々の密な感じで、ソーシャルディスタンスもないのですが、それが持ち味だという自覚がある中で、そのライヴができない状況になった。もともとライヴが多かったバンドではあったんですが、実はそんなにバンドとして意気消沈みたいな感じではなくて。ちょっとした開き直りみたいなところもあるというか、周りのバンドもライヴをやれていないんだから仕方ないっていう節がありましたね。逆に今まで忙しかったから、ヴォーカルのでんでけあゆみに関してはちょっと喜んでいたり(笑)。

全員

(笑)。

豊島

もちろん最初のうちだけですけど(笑)。ライヴがないということでは、今のところ“まぁ、大丈夫かな”と思ってはいるんですけど、経済的な話になってくると若干昨年よりは大変ですね。

千々和

そのような状況から配信ライヴをやるために動き出したのはいつ頃ですか?

豊島

僕が池袋Live garage Admというライヴハウスで店長をしているということもあり、配信ライヴを池袋Admでやろうと動き始めたのは、緊急事態宣言が発動された瞬間からでした。4月7日に発動されて、4月の後半くらいからは自分のバンドではないんですけど、他のバンドで配信ライヴのブッキングを始めましたね。池袋Admで弾き語りの配信ライヴを最初にやったのは僕で、そのライヴをやった日にバクシンでもやろうと決めて、5月31日にバンドでもやったんです。

石田

その弾き語りライヴで何か手応えを感じられたんですか?

豊島

想像していたよりも楽しかったんですよ。性格にもよるかもしれませんが、お客さんがいると良くも悪くもお客さんを意識しすぎてしまうところがあって。弾き語りをひとりでやってみた時、最初はMCで何をしゃべっていいか分からなかったりした部分もあったんですけど、90分くらいのライヴだったので演奏している間に音楽だけにのめり込んでいく感覚があって、これはこれで気持ちが良いと思ったんです。これを自分のバンドでもやってみたいっていう手応えを感じたというか。

石田

その弾き語りですが、スタジオで演奏するのとはまた違う感覚だったのですか?

豊島

スタジオで演奏する時もだんだん音楽に入り込んでいくじゃないですか。それに近い感覚があったので、そこが良かったんですよ。だから、すごく自分の中で音楽的だったというか…。

石田

なおかつ、それをいろんな人が観てくれているわけですしね。

豊島

そうなんですよ。観てくれている感覚はありましたね。でも、どっちかと言うと弾き語りの時は自分の世界だけにどっぷりハマってしまった感じで、バンドでライヴをやった時にもっと観てくれている感覚がありましたね。

千々和

バンドによって配信ライヴでのアプローチも違ってきますよね。渉さんが話されたようにのめり込んで演奏をする方がいれば、画面の向こうで観ているお客さんを意識したユニークな演出をする方もいて。オメでたの2回目の配信ライヴを拝見させていただいたのですが、番組のパロディーやコントを取り入れていて面白かったです。準備が大変そうな気もしましたが、一回目の配信ライヴの時点で早くから動き出していたんでしょうか?

赤飯

予定していた振替ライヴが全部キャンセルになった時に“9月までライヴができないのは嫌だから配信ライヴをやろう!”ということになったんですね。そこから内容を詰めていき、準備を本格的に進めたのは6月29日の配信の1カ月前くらい前…5月頭から準備をし始めましたね。“いかに目の前の人に楽しんでもらい、笑ってもらうか”にプライオリティーを置いているバンドなので、前々からライヴでコントをやりたいという話は出ていたんです。今回配信をやるにあたり、“普通にライヴをやっても、やっぱり表現したいものにはならないよなぁ”と思いまして、それならいっそ今回をきっかけにしてしまえということで、がっつりコントを入れた形式にしました。つながりのあった作家さんにもチームに入っていただいて、やりたいことやアイディアを一緒に整えてもらいながら、リハを進めていきました。ああでもない、こうでもないと実際の場当たりを通して肉付けもされていきましたね。で、第一回目の配信をやってみて、“改善点が多いな!”とすごく思ったんですよ。コントと曲のバランスというか、曲が少なかったよなって(笑)。

全員

(笑)。

赤飯

あと、進行がダラダラしたのもあって“あかんな~、これでは”って。そんな反省点を第二弾につなげた結果、自分も含めてチーム全体に手応えがあったと思っています。

烏丸

“ライヴができなくなって意気消沈”とのことでしたが、配信ライヴを通して新たなバンドの観せ方やエンターテインメントのかたちが見えてきたのではないですか?

赤飯

そこまでのことは言えないですが、コロナをきっかけにどう変わっていくのか、どう適応していくのかを考えられないと、もう死ぬだろうなとは思いましたね。

岩田

2回目のライヴはコントを曲振りに使いながら、お客さんを飽きさせずにライヴを展開されていてとても面白かったです。どのような点をブラッシュアップされたのですか?

赤飯

前回よりも音楽と笑いのメリハリをつけて、決まり切った台本の台詞だけじゃなくアドリブを取り入れていくことで良くなったと思いましたね。

烏丸

回を重ねるにつれてブラッシュアップされ、もっと面白くなっていくことと思いますが、本来の生ライヴに戻った時、これまでとはひと味違うものになっていそうですね。

赤飯

今回の配信ライヴを通じて、お客さんを入れてのライヴでも取り入れたいと思えれば取り入れたいですし…なので、一個新しい引き出しが増えたという感覚ですね。