【Mili インタビュー】
Miliは好きなことを
やりたい人が集まっている

Mili are Cassie Wei(Vo)、Yamato Kasai(Gu)、Yukihito Mitomo(Ba)、Shoto Yoshida(Dr)、Ao Fujimori(Illustrations&animations)

“世界基準の音楽制作集団”ことMiliがシングル「Intrauterine Education」(『攻殻機動隊 SAC_2045』コンセプトシングル)、そして「雨と体液と匂い / Static」を2枚同時リリースする。人気アニメ作品のテーマソングとなった各楽曲の制作背景を、楽曲のサウンド面を司るYamato Kasai(Gu)と、歌詞世界を彩るアジア系カナダ人シンガーのCassie Wei(Vo)に訊いた。

古くさいダサさを
どうやってカッコ良く聴かせるか

シングル「Intrauterine Education」と「雨と体液と匂い / Static」を拝聴して感じたことなんですが、Miliの曲はAメロ、Bメロ、サビがあって、その意味ではJ-POPと言えると思うんですけれども、2番以降はその繰り返しではなく、Bメロが長めだったりするという。

Kasai

そうですね。突然、別のパターンが始まったりしますね。J-POPにはA→B→サビで間奏があって、またA→B→サビ、そして大サビがあってサビとか、いろいろあると思うんですけど…これは僕がアニメのテーマソングを作ってて気づいたことなんですけど、A→B→サビって1分半に収まりやすいんですよ(笑)。

オンエア向きの構造だと?

Kasai

そうです、そうです(笑)。1970年代はA→サビとか、A→Bの繰り返しとかがすごく多かったんですね。まぁ、分かんないですけど、僕が思うに、たぶんテレビサイズから1分半という尺で、A→B→サビが通例になってきたのではないかと感じているんですよ。なので、Miliの曲も1コーラス目は収まり良くA→B→サビというかたちではあるんですが、それを繰り返す必要はまったくないと思ってて。当然サビが終わってからAメロに入るのはきれいなんですけど、“ここでまたB→サビが来てしまったら面白くないな”とすぐ思っちゃうんです。だから、毎回ルールを決めてないというか、“まだサビにいきたくねぇな”というのがよくあって。“この流れで次はサビってことはないな”みたいな(笑)。頭から終わりまでの流れを考えていくと、“ここでちょっと下がったからサビではなくてCメロみたいなものを4コーラス目から突っ込んでみよう”とか、そういう感じでパートで作るというよりも曲の流れで作ってるんですよ。

Kasaiさん自身、音楽において予定調和を好まないところもあるんですか?

Kasai

…嫌いですね(笑)。限られた尺だと予定調和になりがちなんですけども、尺の制限がないと、例えばフルコーラスを作る場合は“えっ、こう来るんだ!?”という…奇を衒うところまではいってないんですけど、“こう来なきゃいけない”みたいなことは一度も考えたことはないですね。

いずれの楽曲も途中から“これはどこに辿り着くんだろう?”という感じがあって。

Kasai

そうですね(笑)。

ただ、どの曲もサビのメロディーに開放感があるので、辿り着くと随分と開けた印象があるんですよね。

Kasai

それは嬉しいです。

サビに辿り着くと独特のカタルシスがある。この気持ち良さがMiliの曲の構造上の特徴だと思いました。

Kasai

あぁ、それは僕がもともとクラシックの人間だからだと思うんですよ。クラシックって誰もが知ってるメロディーに辿り着くまでがめちゃくちゃ長い曲が多くて、サビがサビとして存在するための何かをそれまでに積み上げていくことが重要だと思うんですよね。もしくは、その逆で、サビをサビとして聴かせないというパターンもあったり。“Aメロが好き”か“Bメロが好き”という曲ってそれぞれにいっぱいあると思うんですけど、Miliの曲って…別にそれを僕らが意識しているわけではないんですけど、“Aが好き”とか“Bが好き”とか、あるいは“Dが好き”“Fが好き”というファンの人がすごく多いんです(笑)。なので、全パートを別の色で見せていくという感覚です。

Cassie

そこはたぶん人間性が出てきてるんじゃないかな? Miliはメンバー全員が自由主義というか、我が儘というか、好きなことをやりたい人が集まっているので。曲もそうで、ひとつのルールでやるんじゃなくて、毎回そういう気分の時にそういうものを作るという(笑)。

Cassieさんは出来上がったサウンドに歌を乗せるわけですが、そうした作り方だと難しくないですか?

Kasai

ははは。

Cassie

いや、楽しいですよ(笑)。基本的にKasaiさんが先にオケを作るんですね。英語曲の場合は私が歌のメロディーを書いて、そこに乗せるんです。A、B、サビじゃない曲にメロディーを書くのは自由度が高いですね。

Kasai

英語の曲は基本的にCassieが書いて、日本語の曲は僕が書くんです。

Cassie

なので、トラックが先で、それから歌メロを乗せるんですよ。

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