【RAMMELLS インタビュー】
私たちが時代を、世の中を作っていく

L→R 真田 徹(Gu)、村山 努(Ba)、黒田秋子(Vo)、彦坂 玄(Dr)

メジャー2枚目となるミニアルバム『Beat generation』には、《そうだ 僕らがいつでも時代を作ってる》と歌う表題曲をはじめ、世の中により目を向けたメッセージが印象的に響く全7曲が収録されている。2020年の幕開けを飾る充実の新作について、黒田秋子(Vo)、真田 徹(Gu)、村山 努(Ba)の3人に語ってもらった。

“私たちが作っていく時代”を
より意識し始めたというか。

今回の新作は出来上がってみてどんな手応えがありますか?

黒田

CDを出すようになって3年ですけど、その間に得た新しいアプローチもしつつ、インディーズの頃にやっていた感覚にも戻りつつ、いいバランスで作れたと思いますね。『natural high』(2016年10月発表)みたいなアルバムをもう1回作りたいという話を制作前にちょっとしてて、リード曲の「Beat generation」はチリポン(村山の愛称)が「Blue」(『natural high』収録曲)の広がりをイメージしてトラックを作ってくれたんです。

全体的にサウンドのスケールが大きくて伸び伸びしてる印象を受けました。

黒田

前作の『Mirrors』(2019年4月発表)だったら“ダンスミュージック”というコンセプトのもと、踊れることを踏まえてテンポを作っていったり、それ以前もどういう曲がみんなに聴いてもらいやすいのかを考えたりしてたんですけど、一旦全部取っ払ってみました。『natural high』の時のように感覚的にいいと感じたままに音楽を作る、その感覚に1回戻ってみるのもいいんじゃないかって。

真田

ギターもまっさらな気持ちで弾けましたね。僕の中では今作はシンプルなフレーズやストロークが多くて、“自分はこういうギターが昔から好きだったよな”って再確認できたというか。変に背伸びもしてなくて、客観的にいい音楽だなと思えるアルバムです。

村山

わりと自分は理屈っぽい考え方があったり、分かりやすく覚えやすいメロディーを念頭に置いて曲作りを始めることが、確かに増えてたんですよね。今回は単純に“こんな曲を作りたい”という衝動を大切にして、最初のモチーフに身を任せていけたと思います。「千年後」ならレディオヘッドの『Kid A』の頃のシンセ/エレクトロサウンドをイメージしたり。あとは、宇多田ヒカルさんのような洋楽的なのに多くの人に馴染む感じを自分たちも出してみたいとか。

言葉がより前に出てきた感じもしました。“Beat generation”というタイトルにもメッセージ性の強さがあったり。

黒田

きっと私たちが発することはずっと変わってなくて、いろんな言い方で歌ってる感じなんですよ。「Beat generation」のサビも「Blue」を自分なりに和訳したものですからね。“Beat generation”はジャック・ケルアックの小説『オン・ザ・ロード』に出てくる言葉で、複数の解釈が存在しててちゃんと定義されてないんですけど、その中に“くたびれた世代”という意味があって。最近の報道とかを観てて受け取ってたムードとすごくリンクしたので、引用させてもらいました。ただ、世の中のくたびれちゃってる感は『natural high』の時から思ってて、それが「Blue」の歌詞になったりしてたんです。

なるほど。

黒田

世の中全体はもちろん、身近で感じることも含めて、改めてその想いが強くなったのはありますね。なので、「Blue」の歌詞をあえてもう1度「Beat generation」に持って来たっていう。やっぱり、私はその時に思ってることしか書けないから。徹も今見たものをダイレクトに歌詞にするほうだよね?

真田

そうだね。僕が歌詞を書いた「think other」ではよくニュースになってるあおり運転のことをシニカルに含めてたり、「I'm a runner」も自分が最近ジョギングをしてることがきっかけだったりするんですよ。

黒田

私が歌詞を書いた「Overdrive」にも、『ラグビーワールドカップ』の試合を観て感じた気持ちが入ってたりね。歌詞は自然に思ったことが反映されてるんです。“私たちが作っていく時代”をより意識し始めたというか。

確かに。そこが意識的になってきてますよね。

黒田

そう。『natural high』の時も選挙権はもちろんあったけど、世の中で起きてることに対してちょっと違和感を抱いたりしてたくらいで、自分たちが時代を作ってる感覚ってあまりなかった気がするんです。でも、最近はどんなニュースを観てても当事者であると考えるようになってきて。だから、1曲目「Beat generation」の頭は《そうだ 僕らがいつでも時代を作ってる》という歌詞にしたかったんですよね。

2曲目の「Overdrive」でも《どんな時代にするのかは 君と私次第なんだろうね》という歌詞があって、きっぱりそう歌ってるのがとても清々しかったです。

黒田

分かりやすくなってるのかもしれないですね(笑)。私の歌詞の場合、今回は誰かひとりに向けて歌う意識で書いたのも大きいかな。「The sugar」みたいなラブソング以外でも1対1の関係性というか、対象を狭めてみたんです。混沌とした時代だからこそ、ひとりひとりの声に耳を傾けたい気持ちがあって。ギター1本と歌だけで表現できるような曲も多くなりました。

「千年後」の《僕はここにいるよ》《君はどこにいるの??》とかも1対1の画が浮かぶ歌詞でした。SFをイメージした曲であっても現代っぽい味わいがあるのが面白いなと。

黒田

そもそも千年後なんてどうなってるか分からないですけど、ノアの方舟みたいに全てが洗い流されたあとの荒地をイメージして。何もなくなって、そこからまたいろんなものが生まれる…世界ってその繰り返しなのかなと想像しながら歌ってみました。Aメロの歌詞はチリポンが書いてくれたんです。

村山

自分で書いたらどんな言葉が出てくるのかと思って、初めて作詞をしてみたんですけど、なかなか難しかったですね(笑)。語彙力のなさを感じました。

黒田

そんなこと感じてたの!? 独特な世界観で面白いと思ったけどね。

真田

この曲だけはギターもちょっと難しいんだよね。ソロ以外はチリポンが作ったデモの通りにわりと弾いてて、コード進行もコロコロ変わったりするんです。最初はあまり好きじゃなかったんですけど、じわじわ惹かれていったかな。

黒田

選曲の会議で徹は“アルバムに入れなくてもいいかも”って言ってたけど、チリポンが珍しく“絶対に入れたい!”って推してたんだよね。

村山

アルバムの中でスパイスになるような曲が欲しかったんだよ。「千年後」がその役目を果たしてくれると思ったんで。

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