陰陽座が掲げる
“妖怪ヘヴィメタル”とは?
その真髄はアルバム
『魑魅魍魎』にあり
1999年結成。即ち、今年結成20周年を迎えたバンド、陰陽座が12月4日にふたつのボックスセット『廿魂大全(にゅうこんたいぜん)』と『単盤大全(たんばんたいぜん)』を同時リリースした。前者は全オリジナルスタジオアルバム15作品に、初期の代表曲10曲を新録した特典ディスクが付いた全16枚組の豪華セット。後者は全シングル16作品にボーナストラックとして「甲賀忍法帖」(20周年記念新録版)を収録(シングル「甲賀忍法帖」に併録)した、こちらも全16枚組と、いずれもファン垂涎のアイテムと言える。当コラムでは、『廿魂大全』にも収められている、彼らが初めてチャートベスト10入りを果たした作品、9thアルバム『魑魅魍魎』をピックアップ。
“妖怪ヘヴィメタル”なる
独自のジャンル
久しぶりに陰陽座の『魑魅魍魎』を聴いて何とも不思議な気持ちになった。本作のテーマが“妖怪”だから摩訶不思議な雰囲気に包まれた…というのも幾分あるが、聴く前と聴いたあとの印象が大分異なるというか、こういう言い方が適切かどうか分からないけれども、聴いているこちらが懐柔されるような感覚があった。これは10数年前に彼らの音源を聴いてライヴを観た時にも薄々感じていたような気もするので、今回その気持ちを新たにした…というのが正解かもしれない。パッと見て『魑魅魍魎』はとても分かりやすい作品だとは思えない。そもそもタイトルからして読みづらいし、“ちみもうりょう”と読めるにしても、この四字熟語をさらさらと書ける人はそうそういないだろう。
さらに“そもそも”の話をすれば、陰陽座は“妖怪ヘヴィメタル”を自らのキャッチフレーズとしている。この惹句もまた決してストレートに分かりやすいものではない。ヘヴィメタル…特に日本での“ジャパメタ”と言われるジャンルは、好きな人は限りなく好きだが、それ故にか一般層にはなかなか浸透しないという冬の時代があったこともあり、どこか特異な、孤高な音楽ジャンルと見る向きもある。それだけでも人によってはハードルの高さを感じるだろうに、陰陽座の場合はそこに“妖怪”が乗っている。妖怪とは[日本で伝承される民間信仰において、人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす、不可思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在のこと]である([]はWikipediaから引用)。人間の理解を超える存在であるから元来分からない…という屁理屈はともかくとしても、そのキャッチフレーズだけで明確な音楽スタイルを受け取るのは困難であるのは言うを待たないであろう。
さらに言えば、陰陽座の歌詞も難解であると言わざるを得ない。いや、その意味うんぬん以前に、読みづらい。ていうか、読めない。アルバムタイトル同様、ルビがなかったら読めないと断言できる言葉がふんだんに使われている。参考までにM1「酒呑童子」の歌詞の一部を、振り仮名を抜いて以下に記す。
《赤るも 倫護り 私慝を 咎められど/等閑午睡の余花/解け合う 故抔亡く/刻を 遺す 鬼の名 彩み 孳尾の儘に》(M1「酒呑童子」)。
この全歌詞を何のガイドもないまま、すらすらと読めるとしたら、その人は国文学の学者かクイズ王だろう。振り仮名を頼りに読めたとしても、たぶんその意味がはっきりと分かる人もこれまた多くはないはずだ。
何もそれが悪いと言いたいのではないので、その辺は誤解のないようにお願いしたい。意味も読みも分からない楽曲を聴くことがおかしいわけでも何でもないし(そんなことを言ったら、所謂洋楽は聴けないことになるし)、日常的に親しんでいる言語以外を楽曲に使ってはいけない法もない。陰陽座の『魑魅魍魎』は外見的にそう捉えられるということであることをお示ししたいだけである。また、そのことについて“別に何とも思いません”という人もいるだろうし、それを否定したいわけでもないので、その辺もご理解いただきたい。
ただ、これは個人的な見解として正直に言わせてもらう。本作を聴くにあたって、未知なるものへの興味があったことは否めないけれども、事前に“何だか面倒臭いな”と思ったことは確かだ。正確に言うと10年前に同作を聴いてそう思ったことを今回思い出した。予断に満ち満ちたものであったことを反省もするし、関係者各位に謝罪もしたいくらいだが、結論から言ってしまえば、『魑魅魍魎』を聴き進めていくに従って、その事前の感想が覆されていったというか、雲散霧消していくようなところがあったのである。それはこんな感じだ。
さらに“そもそも”の話をすれば、陰陽座は“妖怪ヘヴィメタル”を自らのキャッチフレーズとしている。この惹句もまた決してストレートに分かりやすいものではない。ヘヴィメタル…特に日本での“ジャパメタ”と言われるジャンルは、好きな人は限りなく好きだが、それ故にか一般層にはなかなか浸透しないという冬の時代があったこともあり、どこか特異な、孤高な音楽ジャンルと見る向きもある。それだけでも人によってはハードルの高さを感じるだろうに、陰陽座の場合はそこに“妖怪”が乗っている。妖怪とは[日本で伝承される民間信仰において、人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす、不可思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在のこと]である([]はWikipediaから引用)。人間の理解を超える存在であるから元来分からない…という屁理屈はともかくとしても、そのキャッチフレーズだけで明確な音楽スタイルを受け取るのは困難であるのは言うを待たないであろう。
さらに言えば、陰陽座の歌詞も難解であると言わざるを得ない。いや、その意味うんぬん以前に、読みづらい。ていうか、読めない。アルバムタイトル同様、ルビがなかったら読めないと断言できる言葉がふんだんに使われている。参考までにM1「酒呑童子」の歌詞の一部を、振り仮名を抜いて以下に記す。
《赤るも 倫護り 私慝を 咎められど/等閑午睡の余花/解け合う 故抔亡く/刻を 遺す 鬼の名 彩み 孳尾の儘に》(M1「酒呑童子」)。
この全歌詞を何のガイドもないまま、すらすらと読めるとしたら、その人は国文学の学者かクイズ王だろう。振り仮名を頼りに読めたとしても、たぶんその意味がはっきりと分かる人もこれまた多くはないはずだ。
何もそれが悪いと言いたいのではないので、その辺は誤解のないようにお願いしたい。意味も読みも分からない楽曲を聴くことがおかしいわけでも何でもないし(そんなことを言ったら、所謂洋楽は聴けないことになるし)、日常的に親しんでいる言語以外を楽曲に使ってはいけない法もない。陰陽座の『魑魅魍魎』は外見的にそう捉えられるということであることをお示ししたいだけである。また、そのことについて“別に何とも思いません”という人もいるだろうし、それを否定したいわけでもないので、その辺もご理解いただきたい。
ただ、これは個人的な見解として正直に言わせてもらう。本作を聴くにあたって、未知なるものへの興味があったことは否めないけれども、事前に“何だか面倒臭いな”と思ったことは確かだ。正確に言うと10年前に同作を聴いてそう思ったことを今回思い出した。予断に満ち満ちたものであったことを反省もするし、関係者各位に謝罪もしたいくらいだが、結論から言ってしまえば、『魑魅魍魎』を聴き進めていくに従って、その事前の感想が覆されていったというか、雲散霧消していくようなところがあったのである。それはこんな感じだ。
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