【数土直志の「月刊アニメビジネス」
】2019年の中国アニメは何がすごい?
何が変わったのか?
「羅小黒戦記」日本版ポスター
なかでも制作に総合力が求められる劇場作品にこれが表れた。19年には中国産アニメーションの大ヒットがいくつも生まれた。
まずは1月に公開された「ナタ~魔童降世~」である。中国での興行収入は約50億元、日本円で約780億円という凄まじい数字になっている。人口と市場規模が大きな中国でもこれは特別で、実写映画「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」に続く中国映画史上歴代第2位の大記録である。アニメーション映画でも自国作品で客が集まることを示した。
メガヒットに目を奪われがちだが、19年には「ナタ~魔童降世~」の以外にもいくつものヒットが生まれている。11月20日段階での中国アニメーションの現地の興行ランキングは次のようになっている。
「熊出没:原始時代」 7億1000万元
「白蛇:縁起」 4億5000万元
「羅小黒戦記」 3億1000万元
「ナタ~魔童降世~」の数字があまりにも大きく分かりにくいが、「羅小黒戦記」でも興行収入は50億円規模だ。これまでにも15年に「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」(9億5000万元)、16年に「紅き大魚の伝説」(5億6000万元)といった大ヒットはあったが、これほどヒット作が重なったのは初めてだ。
「トイ・ストーリー4」 2億元
「ペット2」 1億5000万元
「アングリーバード 2」 1億4000万元
中国作品に観客が向かう理由は、作品のレベル向上、さらに自国文化に根差した表現の発達にもありそうだ。「白蛇:縁起」に登場する狐の妖精が艶めかしい美少女であったり、ヒロインの百合を想起させるシーンはハリウッドではありえないだろう。
これまでも日本ですごいと話題になった中国アニメーションはあるが、なかには実制作の大半が日本や韓国への外注だったものも少なくない。しかし「羅小黒戦記」は本来の意味での中国製である。さらに優れた作品であると同時に、多くの観客に共感を呼び、ヒットさせることができる点でエポックメイキングなのである。
今年のヒット作を見ても、「ナタ~魔童降世~」と「白蛇:縁起」は中国の説話が原作、「熊出没:原始時代」や「羅小黒戦記」は家族で安心して観られる作品だ。ある意味で無難だ。そうした作品が国内だけでなく、やがて海外に輸出される日も来るかもしれない。しかし特にヒット作を生み出すという点では、制作ジャンルの偏りは避けられない。多様な作品が登場するかとなると、覚束ない。
どんなジャンル、タイプの作品でも許容される、居場所がある。これからの日本アニメは、そんな点が強みになるのでないだろうか。
「天気の子」 2億8000万元
「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」 2億3000万元
「ONE PIECE STAMPEDE」 2億元
「映画ドラえもん のび太の月面探査記」 1億3000万元
「劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~」 1億1000万元
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