アメリカの日常を骨太に表現する
ナンシー・グリフィスの
グラミー賞受賞作『遠い声』
ヒューマンソングス
70年の中頃からワーナー・パイオニアが『ロック名盤復活シリーズ』と銘打って、復刻させたいアルバムがあればファンのアンケートをもとにリリースするようになり、幻の名盤ブームは落ち着きをみせるのだが、松平氏の信念は“ヒューマンソングス”を愛好するリスナーに引き継がれることになる。“売れる・売れないにかかわらず良い音楽は存在する”という概念を、音楽ファンに再認識させた彼の功績は大きいと言えるだろう。
ケイト・ウルフの音楽
ケイト・ウルフの『バック・ローズ』(’76)はそんな中の一枚だ。慌てて購入したこの自主制作アルバムを聴いた時、そのシンプルで飾りのないアマチュアっぽいウルフの歌声に思わず引き込まれたのだが、同時に松平氏の言う“ヒューマンソングス”の概念がアメリカでも理解されるのかどうかが、とても気になった。ここでの理解とは、資本主義の権化であるアメリカのポピュラー音楽界において(売れることが良い)、売れない良い歌をリスナーが認知しうるのかという意味である。
70年代半ば、ケイト・ウルフは30歳を過ぎてから自主制作盤でデビューし、売れないまま86年に白血病で亡くなっている。しかし、多くの人気アーティストが彼女の歌をカバーし、87年にはアメリカのある財団がマイナーシンガーを支えるためのケイト・ウルフ賞を制定、96年には多くのアーティストと観客を迎えて『ケイト・ウルフ・メモリアルコンサート』が開催され、今でも毎年行われているのだから、アメリカでも“ヒューマンソングス”の概念は日本と同じように存在するようだ。
昨年、彼女の未発表ライヴ録音(79〜82年)『Live in Medocino』がリリースされた。このアルバム、これまでにリリースされたライブ盤より出来が良いので興味のある人はぜひ聴いてみてほしい。
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ナンシー・グリフィスのデビューアーティスト
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