城田優が演出&主演の難関に挑む ミ
ュージカル『ファントム』もうひとつ
のゲネプロレポート
上演時間は1幕1時間25分、休憩20分、2幕1時間15分の計3時間。だが、『ファントム』の世界は劇場へ足を踏み入れた瞬間から始まっている。メインエントランスをくぐり抜けると、劇場スタッフが作品仕様の特別コスチュームに身を包み、ロビーではオルゴールが鳴り響き、1階ホワイエに繋がる階段には劇場の舞台セットを模した7色の街灯が立ち並ぶ。開演時間が近づけば、客席やロビーのそこかしこでキャストによるパフォーマンスが繰り広げられる。
生まれたときからオペラ座の地下に潜むファントムことエリックは、芸術、特に音楽を愛していた。闇が広がる閉ざされた地下の世界において、彼にとって唯一の希望であり心の拠り所が音楽だったのだ。そんな彼に、もう一つの希望が現れる。クリスティーヌだ。エリックの追い求める理想通りの美しい声を持つクリスティーヌに、彼は出会った瞬間から心を奪われる。
2014年公演では、初のミュージカル単独主演としてタイトルロールを演じきった城田。今回2度目の出演で、演出と主演を兼ねるというさらなる難関に挑んだ彼だが、舞台の上に立つのは間違いなくファントム(エリック)そのものだった。音楽に陶酔し、残酷なほど純粋で、仮面の下にはあどけなさと狂気を同時にはらんだ瞳が覗く。公演はまだまだ続くが、演出と主演としてここまで完成度の高い作品を作り上げた城田に、心からの拍手を送りたい。
エリックとシャンドン伯爵の二人の間で揺れるクリスティーヌを演じるのは、オーディションを勝ち抜き見事ヒロインの座を射止めた木下。クリスティーヌというと儚げで夢見がちな少女のイメージを持つ人もいるかもしれないが、彼女が演じるクリスティーヌは凛とした美しさを放っている。夢に向かってひたむきで、芯を感じさせる歌と演技で魅せる木下だが、弱冠20歳というから驚きだ。今後の活躍への期待が益々高まる。
とにかくパワフルな歌声で作品を大いに盛り上げてくれたのは、オペラ座のプリマドンナ・カルロッタ役のエリアンナ。持ち味のソウルフルな歌声に加え、オペラ的な歌唱方法も巧みに取り入れていた。皮肉たっぷりな表情や言い回しからも、自己中心的なカルロッタらしさが溢れている。
取材・文・写真 = 松村蘭(らんねえ)
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