【連載】山岸賢介(ウラニーノ)[vo
l.15]連載ドキュメント~フリーラン
スへの道~第2話「再起」
連載ドキュメント~フリーランスへの道~第2話「再起」
さて、事務所とバイトの2足のわらじを脱ぎ捨て文字通り裸一貫になった私に(
よし、フリーランス。自主でバンドで食っていくぞ。そう思いながらまず私が起こした行動は、情けないことに過去に働いていたバイト先に電話をすることだった。その職場のマネージャーはもう15年近いつき合いであり、渋谷公会堂でワンマンライブをした時に終演後の物販で満身創痍の私に「お疲れさま」の一言もなくシフトの相談をしてきた鉄の女である。久しぶりに聞くその声に懐かしさを覚えつつ、職場に戻れないだろうかと相談したところ、「ちょうど一人鬱病でやめちゃったんです~♪ぜひ帰ってきてください!」と内容のヘヴィーさとかけ離れた明るい声で歓迎してくれた。こうして私は実にあっさりと過去の職場に舞い戻り、ひとまずの「食いぶち」を確保した。
さて、ここからが問題である。事務所所属から野に放たれたウラニーノというバンドを、自分たちの意志と力で動かしていかなくてはならない。途方もないが、妙な解放感がある。我々は自由なのだ。正直、冷静に考えもせず、まずは勢いだけで動いた。ツアーをやろう。これまでフットワーク軽く全国行脚してきたツアーバンドの我々が、近年はリリースがないこともあって地方を回らせてもらえなくなっていた。まずは、独立のご報告に各地へ行こう。お世話になっていた地方のイベンターさん、ライブハウス店長に連絡をする。久しぶりにも関わらず、皆さんが口を揃えて「これからも変わらず応援するよ」と言ってくれる。この頃の私はこの言葉にしょっちゅう泣いていた。人のやさしさが身にしみる。今思えば実はけっこうメンタルやられていたのかもしれない。痛いおっさんである。
こうして独立後すぐにワンマンツアーを発表。大きすぎず、身の丈にあったキャパのハコでとりあえず新たな一歩を踏み出そう。そんな思いであった。
しかし、ツアーにはお金がかかる。経費を出してくれる事務所はもういない。いつか訪れるであろうこんな将来のために2人で少しずつ積み立ててきたバンド貯金。そんなもの、あるはずもない。CDも作っていないので、リリースツアーにもならない。さぁ、どうする。ここで我々の活路を照らしてくれた光こそ、「農家Tシャツ」である。
そして大きな山が動く。FM高知「農家Tシャツプロジェクト」が発動し、この農家Tシャツは我々の想像を超える広がりを見せ、後ろ盾を失った我々の大きな支柱となっていくのである。
フリーランス1年生のバンドマンの切実でリアルな格言。
「グッズはバンドの生命線」
最後までお読みいただきありがとうございました。次回は第3回「音源」をお送りします。
6年ぶりフルアルバム『あるよ』、11月6日発売決定!!
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