JUJUが確かな歌唱力で示した
邦楽カバーアルバムの
大傑作『Request』
カバーは傍目ほどには簡単ではない
外部の意向で行なわれるカバー、つまり当人の意思ではないカバーもおそらく確実にあって、歌ったり演奏したりしている人たちが本心ではやりたくなかったカバーというのも過去にはあったと思われる。乗り気ではないままでやるカバーはちょっと考えてもかなり切ない。素人のカラオケやコピーバンドであれば自己満足で十分だろうが、それが表に出るプロの演者の場合、カバーには必ず原曲が存在しているので、良くも悪くもそのオリジナルとの差異がはっきりと示される。それがそれほど乗り気でなく世の中に出ることになったら……考えるだけでもちょっと怖い。
というか、そんなふうに考えると、プロの世界ではカバーなど軽々にできるものでない──そんな気もしてきた。カバーは自作自演以上にそのアーティストのセンスと力量が問われる。原曲が名曲で誰もが知る楽曲であればなおさらである。そのカバーを聴いた人が“元も聴いてみたくなった”ならまだしも、“これは原曲の方がいい”という意見が大半を占めたら、その企画は台なしであろう。どんな臨み方にせよ、実はカバーとは、プロのアーティストにとっては、結構ハードルが高い代物と考えられる。少なくとも単に“やりたかったから”という乗りだけで簡単にできるものではないのではない。
邦楽シーンに欠かせないカバー作品
2000年以降に限って言うならば、德永がカバー作品でも知られる男性アーティストの雄とすると、女性アーティストの代表格と言えばJUJUであろう。彼女はここまでオリジナル作品としてフル7枚、ミニ2枚のアルバムをリリースしているが、それとは別に4枚のカバーアルバムと3枚のジャズアルバムを発表している。また、デビューシングルからそのカップリングで洋邦問わず多くのカバー曲を収録している上、2000年の「Hello, Again 〜昔からある場所〜」以降は、しばしば表題作でもカバー曲を披露。さらに、2008年からはカバー曲中心…というよりも、ほとんどカバー曲で構成されたコンサート『JUJU苑』を開催しており、今もレコ発ツアーとは別路線の彼女の名物ライブとなってる。音源に話を戻せば、彼女のオリジナルアルバムは4th『YOU』(2011年)と7th『I』(2018年)とでチャート1位を記録しているのだが、JUJU最初のアルバム1位はカバーアルバムの第1弾である『Request』で、オリジナルに先駆けてカバーで初の栄冠を獲得。しかも、『Request』は女性アーティスト史上初の2週連続1位となった。事ここに至っては、JUJUのことを“カバーの女王”と呼んでも異論は少なかろう。
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