“令和”に聴くからこそ感じ取れる「
M」に見るayuの決意。
“令和”に聴くからこそ感じ取れる「M」に見るayuの決意。
新時代の今に聴く『M』から読み取れる“令和を駆け抜けるayuからのメッセージ”を考察したい。
浜崎あゆみ。平成の歌姫と呼ばれる所以は、間違いなく平成という時代に爆発的な人気を席捲した事にある。
https://utaten.com/lyric/ja00009276
様々な愛の理由から、悲しい想いをした人の心の傷に届くように、手紙の宛名の様な歌詞が『M』の冒頭にはある。
当然ながら、人を愛する事・愛し続ける事は素晴らしい事だ。しかしそれは、苦しい時に深い傷すら負う事だってある。
この『M』で歌われる「MARIA」という存在。当時ayuは“聖母と呼ばれ、強く気高いMARIAだって、きっと愛に泣いたりしたはず”と語っていた。
その意味は、どんな人だって愛の前では泣いて傷ついて苦しんだりしている。という事であり、“ayu自身も例外ではない”という事を表している。
彼女は“自分の経験した事しか歌にしない”と公言している事から、その意味が汲み取れる。
『M』がリリースされた当時は、歌詞から伝わる意味合いから“運命の恋”“悲恋”“愛に対する切ない願い”…壊れてしまったボロボロの恋を、独り大事に抱えている人が、まるでその孤独に寄り添うayuという同士を見つけ安堵した様に。
ayuというアーティストは、“1つ”に囚われている様に見えて。実はそうではないのだ。彼女が本当に表現したい事、伝えたい事は、その時の1つを見ているだけでは完成しない。
彼女が表現するすべてを拾い集めて、やっと真実が見えてくる。彼女が言いたい事は、いつだって単純ではないのだ。
ayuが表現する2つの象徴。
もっと言えば「愛すべきあの人に、結局何もかも満たされ、癒されている」ayuと、『M』が歌い語る「別れの道を選ぶふたり、静かに幕を下ろした」後に、“運命”を懸命に生き抜くayu、だ。
MARIAに扮したayuが、語る(歌う)事はない。ただ気高くそこに立って、微笑みを讃えている。
その真逆に存在するのが、強い意志を瞳に讃え、力強く愛と悲しみを語る(歌う)ayuだ。こちらのayuは、MARIAのayuとは対照的で“強さ”だけで立っている。
MARIAのayuが慈悲の愛で立っているのなら、歌うayuはあらゆる痛みを強い意志だけで跳ね除け、「キズを負った全ての者達」を自分の身をていして庇おうと必死に立っている。
2人の共通点は「愛すべき人」がいる事であり、違いは「愛すべき人」の“愛し方”だ。
どんな事があっても消えなかったayu。
M 歌詞 「浜崎あゆみ」
https://utaten.com/lyric/ja00009276
『M』の最後の一節だ。歌詞だけで解釈するならば、どんな運命を感じた恋でも別れてしまう時には、何かしらの理由がある。
しかし、MVの最後を見ると受け取り方がまるで変わる。
それは、MARIAが消えてayuは消えないからだ。残ったayuは真っ直ぐ前を見つめている。その目は、哀しみを秘めながら未来を見ている様に見えるのだ。
MARIAは、何も語らず(歌わず)消えていった。
それは、終わりを迎え、その終わりをただ何もせず受け入れたから、何も始まらなかったとも取れる。求められるイメージに応えるだけで、変わらない存在では“続かなかった”のだ。
残ったayuが表現しているのは、“歌い(表現する)続ける事”。
ayuが『M』を通して、新時代に示した強い意志…
ayuが産んだ名曲たちは、ayuがどんな事があっても“歌う事を辞めなかった”から、私たちの人生の中の様々な感情に寄り添ってくれた。
平成の歌姫と呼ばれるayu。
ayuは、令和という新時代に平成という過去を捨て“歌い続ける”と強い意志を示したのだ。
TEXT 後藤かなこ
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