OBLIVION DUST、
アルバム4作をたどる
コンセプトツアーが
浜松窓枠公演より開幕!
7月6日@静岡・浜松窓枠
前回のツアー『Us Against Them Tour 2018-19』ではK.A.Z(Gu)の左手首骨折というアクシデントによりラスト5公演を不在の状態で行なうことを余儀なくされ、しかし見事に乗り切ったOBLIVION DUST。その後、順調に回復に向かってはいるものの完治にはまだ少し時間を要するため、今回もK.A.Zの参加は見送られることとなったが、サウンドプロデューサーとして公演準備に携わった彼の意志をも具現すべく、今ツアーはKEN LLOYD(Vo)、RIKIJI(Ba)、サポートメンバーのARIMATSU(Dr)、YUJI(Gu)、RYO(Gu、7/27より参加)の特別編成で敢行される。
また、事前にアナウンスされている通り、今回のツアーはコンセプトツアーとなる。すなわち全15公演を4ブロックに区切り、デビュー時からのアルバム4作をリリース順に各ブロック1作ずつ、追っていくというスタイルだ。これまでとは趣を異にしたこの2つの要因がはたしてライヴにいかなる作用をもたらすのか。詰めかけたオーディエンスから立ちのぼる熱にも微かな緊張が混じっているように感じられる。
だが暗転したフロアーに大音量のオープニングSEが投下された途端、張りつめていたものは瞬く間に溶解した。このSEを手掛けたK.A.Zの想いが音となって迸り、オーディエンスを沸き立たせる。ARIMATSU、RIKIJI、と、ひとりずつ姿を現わすメンバー。K.A.Zのポジション、ステージ上手側にはYUJIが立った。最後にKENが登場すると興奮は早くも頂点に。一斉に溢れ出す重くて太いバンドアンサンブル、ツアー一発目を飾る1曲は「Sucker」だ。浜松から仙台までの1stブロックは“Gods of Elvis”と冠され、そのタイトルが表わすように彼らのデビューアルバム『LOOKING FOR ELVIS』をコンセプトにセットリストが組まれている。
「Sucker」は本作の1曲目であり、それに先駆けてリリースされた1stシングルでもあって、つまりはOBLIVION DUSTの始まりと呼ぶべき1曲だろう。ずっしりとしたテンポ感、分厚いグルーヴにじわじわと絡めとられていく快感。マイクスタンドを床につけたままぐるんぐるんと大きくスウィングさせるKENのパフォーマンスが昂揚をいっそう煽る。畳み掛けるのではなく内側から浸食して圧倒するような、そんな幕開けが新鮮だ。
“浜松、元気そうですね。さすが浜松、初日に選ばれました。ちなみに今日は“Gods of Elvis”ということで、1stアルバムの曲をかなり振りかけていきますので、よろしくお願いします。ちなみに1stの頃を再現しますので間違えたり声が裏返っていても全部わざとです”
これまた『LOOKING FOR ELVIS』の楽曲である「24 Hour Buzz '99」で熱狂を本格化させ、ライヴの人気曲「Never Ending」で煽りに煽り上げたあと、しれっとそう告げるKEN。いかにも彼らしい、人を喰ったような物言いにフロアーがドッと沸く。そのまま「Going Nowhere」になだれ込むと一気に8曲が披露された。
90年代UKロックのニュアンスを纏った『LOOKING FOR ELVIS』の曲たちを縫うようにして、「Lolita」「Microchipped」といったここ最近のモードが色濃く反映された楽曲も差し挟まれ、それぞれの曲間をEDM全開のSEが繋ぐ。新旧の鮮やかなコントラストに揺さぶられ、20年以上前に生み落とされながら現在に鳴り渡ってもなお古びない楽曲の生命力と当時のアティテュードをあえて活かしつつ今の彼らのスキルをも存分に発揮して『LOOKING FOR ELVIS』の魂を現代に甦らせたバンドのアレンジ力に目をみはり、さらに折々でダンスビートに衝き上げられるのだから、まるで息つく隙がない。この日唯一のバラード「Easier Then」のどこまでも切なく美しい余韻を、4つ打ちを効かせたSEでばっさりと断ち落とし、「Sail Away」で浜松窓枠を怒涛のダンス空間へと変貌させた一連の流れは中でも特筆すべきだろう。
オーディエンスを容赦なく揺さぶる一方、バンドもまた遮二無二だった。リハーサルを重ね、完璧に練り上げた手応えはあっても、やはり初日。しかも久々のアルバムを軸に据えて披露するとなれば気負いも少なからずあっただろう。K.A.Zの不在をマイナスとせず、むしろ何倍、何十倍というプラスの進化を遂げようと一丸となってベストを尽くすその姿勢からも尋常ではない気迫が感じられた。
シャウトからファルセットまで声のバリエーションを激しく行き来してひときわエモーショナルに響くKENのヴォーカル、好戦的かつ扇情的に観る者を狂騒に誘うRIKIJIのプレイスタイル。ARIMATSUのダイナミックなビート、エッジの効いたYUJIのギターソロも随所に光ってアンサンブルを支える。この日は4人編成だったこともあり、その視覚的新しさも手伝って、そうしたバンドらしい一体感がより際立って感じられたのかもしれない。それでもOBLIVION DUSTがまたひとつ新たな扉を開けたことは間違いなさそうだ。
“浜松! 今日は初日を共に過ごしてくれてありがとうございます! “1stのときにこんなお客さんがライヴに来てたらな”とライヴをしながら考えてました。最高のお客さんです”
終盤に差しかかっても右肩上がりに昇りつめる熱狂。それを噛み締めるようにKENが素直な感謝を口にした。何があろうと彼らがステージに立ち続けるのは、OBLIVION DUSTの音楽を一緒になって愛してくれるオーディエンスが待っているからに他ならない。だからこそ今ツアーで自身の足跡をたどり、現在に照らし合わせて対峙することを選んだのだろう。初期の4作をすべて振り返ったときに彼らは何を見つけるのか。ツアーファイナルの9月1日、神奈川・横浜BAY HALLまで目が離せそうにない。
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