【まなおのアニメ感想戦!】第7回
「海獣の子供」を見て、語彙が滅んだ
人の感想
女流棋士45周年パーティーで室田伊緒女流二段(左)と
海を舞台に健康的な少女が輝く話が見たいなら「きみと、波にのれたら」を選ぶのがいい(きらきらとまぶしい青春。エネルギッシュな作品だし、川栄李奈さんの熱演はただただすばらしい)。「海獣の子供」の少女は、他の作品と比べればドラマを生きることはしないし、何かを語ることもしない。ある意味至高のアニメーションと音楽とを目のあたりにした私たちと同じように、海という壮絶な未知に戸惑いながらも飛び込んでいく、無色の少女の漂流記である。
彼女に色が染まるのか、そもそも染めようとするものがあるのかは、どうか劇場で見届けられたし。
私がこれまで潜り続けてきた盤上の81マスの海は、言うなれば果てしない暗闇である。10年以上考えに考えてきたけれど、一体何パーセントが理解できたんだろうか。どれほど経ってもわからないことだらけの自分に嫌気がさすことはあるけど、同時にそれは、もっと理解のできる可能性の側面でもあると思えば、期待に胸が膨らむ。その恐怖は、自分が広がるチャンスなのだ。将棋でもこの映画でも、わからないという一言で放りなげる中には、その先の未来も含まれている。だからこそ、妙にもったいない……と感じてしまう。
将棋の場合でも、不満を盤から離れて持ち帰って、向き合ってみて、ようやく勝負が腑に落ちることがある。そうした意味では、納得のいかなかった勝負と同じように、わたしの中での「海獣の子供」の評価は揺れている。会う人会う人に勧めていいものかすら、悩ましい。信頼できる仲間との感想、考察、議論などを重ねる中で、「どうだったんだろうか」といった感想がくるのかもしれない。そうだとしても、令和元年、ないし2019年上半期において、この作品について膝をつき合わせて語らう時間は、今はなにより大切にしている。
普段は超インドア派、光を浴びるのが苦手な私でも、真夏の海に溶けながら、息を止めてこの作品に思いを馳せてみたい。そんな風に焦がれすらいる。
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