【インタビュー】HER NAME IN BLOOD
、初のベスト盤発売「オレたちを知っ
てもらう新しい名刺」
◆ ◆ ◆
■ ズルいバンドになりたいんです(MAKOTO)
── 今回、ベストアルバム『Bloodline』が完成しましたが、こういった形態の作品をリリースすることについて勘ぐる人もいると思うんですよ。
MAKOTO(Ba):自分たちも、好きな海外のバンドがレーベルや事務所マターで出さざるを得ないベストアルバムを結構見てきましたからね(笑)。既存の曲しか入ってなくて、「これなら別に買わなくていいじゃん」みたいな。だからこういったリリースのアイデアが出てきたとき、普通のものにはしたくないという気持ちがまずありましたね。
── どういったイメージを考えましたか?
MAKOTO:まず、ベストアルバムというよりも、コンピレーション的な立ち位置にしたいと。ウチはメンバーチェンジもあったので、(現メンバーの)MAKI(Dr)が叩いてないインディーズ3作品から1曲ずつ選んで、改めて録音して、今のハーネームの音を出したかった。あと、僕が好きなバンドNo Use For A Nameのベストアルバム(『All the Best Songs』)には超カッコいい未発表曲が入ってるんですよ。これからのハーネームも知ってもらいたいし、新曲が入ってたらさらに面白いものにできると思いました。
▲MAKOTO(Ba)
IKEPY(Vo):だから、最終地点というか解散するバンドが出すようなベストアルバムではなくて。今のオレたちを知ってもらう、新しい名刺みたいな存在なんですよ。
── ベストアルバムにはネガティブな話もつきまといますし、最初にまずこの点を窺いたかったんです。
MAKOTO:そうですよね。このインタビューを皮切りに、そうじゃないんだということは伝えておきたいですね。
── また、自分たちの今までを切り取った作品を出す場合、最新作の曲を省く場合も多いかなと。
MAKOTO:あ〜、たしかに。
── 『Bloodline』には最新作アルバム『POWER』からも収録してますね。
IKEPY:オレらも12年とかやってきてるからいろんな作品があるし、物販でも「どの作品がいいですか?」って聞かれることもあったりして。まあ、そんなときはノリで「最新作かな」と言ってるんですけど(笑)。
▲IKEPY(Vo)
MAKOTO:気持ち的には「全部いい!」って言いたいけどね(笑)。
IKEPY:やっぱりどれもいい作品だから、『Bloodline』にも全作品から集約して、この1枚を手にとってもらえればオレらを知ってもらえるというのがいいじゃないかと。
MAKOTO:先ほど、ベストアルバムについてネガティブな気持ちになったことがあるという話をしましたけど、好きな側面も当然あるんです。IKEPYもそうだけど、僕もQUEENが好きで。その入り口になったのがベストアルバム『Greatest Hits』。「Bohemian Rhapsody」から始まって「We Are The Champions」で締まる内容なんですけど、そこから各時代の作品を掘っていったし。『Bloodline』も、ファンになった人にとって、いちばんわかりやすい道しるべになってくれたらいいなと思っています。
── ハーネームは、自分たちとルーツが似通ってないアーティスト、それこそアイドルともライブで共演する機会がありますよね。そういったところで、こういったヘヴィなバンドサウンドを初めて好きになった人もいるでしょうし、いい入り口になると思います。
IKEPY:最近、またいろんな人とやる機会も増えて幅が広がってるんで、凄く面白いんですよ。
── そこは、あえて幅を広げているんですか? それとも、何か縁があったり?
MAKOTO:実は縁もあるんですよ。今、ラウドな感じの音でやってるアイドルさんって、バックバンドがゴリゴリのバンドをやってる人たちだったりもする。例えば、LADYBABYさんだと、ドラムは元BAT CAVEのYOUTH-K!!!さんやKen Yokoyamaのえっくん(Eiji)だったり。だから、共演は自分たちとしては不自然なことでもないし、現場のお客さんも受け入れ体制ができてるのもあって、普段やってることをそのままやるだけみたいな感覚です。だからアイドル仕様のライヴはしないし(笑)、特に気負いもないんですよね。
── 普通に新しいバンドとのライヴをしに行くような。
IKEPY:セットリストを少し考えたり、微々たる調整はあるけど、媚びを売るようなことはなく。何かあるとすれば、(物販で)チェキを売ってるぐらいですかね(笑)。
MAKOTO:まぁ、悪ふざけです(笑)。
── ちなみに、そこそこ売れたりするんですか?
IKEPY:結構売れます(笑)。
── キャリアを重ねるとストイックになりがちなバンドも多い中、ハーネームは以前から楽しむことを忘れないんですよね。
IKEPY:そうですね。しかも、そういった楽しむ気持ちはより一層強くなってる気がします。
▲ベスト盤『Bloodline』
◆インタビュー(2)へ
■ Strung Outとハーネームには共通点がある(IKEPY)
── 『Bloodline』の内容についても窺っていきますが、ピックアップする曲はすんなりと決まりましたか?
IKEPY:割とまとまってて、微調整があったぐらいですかね。
MAKOTO:シングルスという考えよりも、自分たちもファンも気に入ってて、ライヴでやってる曲を収録しました。プレイリストじゃないけど、これを聴いたらライヴで楽しめるようなものを。
MAKOTO:長く続けてきたバンドは、いわゆる問題作がある場合も多いですけど(笑)、ウチは幸いそういうのもないですし。こういった形の作品で、ピックアップされない作品があるのもかわいそうですからね。
── 時代の差がある曲が並んでますけど、まとまって聴いても違和感はないですね。
IKEPY:今回は録音の環境が同じになってるのも大きいかな。
MAKOTO:あと、「Decadence」、「We Refuse」と「Unshaken Fire」は改めてレコーディングしたんですけど、特に(初期作の)「Decadence」は、MAKIが叩いてTJ(G)が弾いたことで全然違う曲に変わりましたし。「We Refuse」と「Unshaken Fire」はライヴでやってるうちにアレンジが変わってたり、IKEPYの声もどんどんアップデートされていったから、今の音として聴けるのもあるかなと思います。
MAKOTO:それは狙ってたところなので、そう感じてもらえてよかったです。
── そして、Strung Outのカバーである「Her Name In Blood」も収録されていますね。
IKEPY:ベストアルバムだからというより、「カバーをやりたいよね」っていう話はバンド内でずっとしてて。
MAKOTO:最近、ちょっとご無沙汰だったんですけど、結構カバーをやってるんですよね。Lady Gagaの「Poker Face」、Maroon 5の「This Love」、The Offspringの「Pretty Fly (For A White Guy)」、黒夢の「CAN'T SEE YARD」とか。ベストアルバムのタイトルは“血統”という意味だし、「バンド名につけたのはこの曲だったな」と。あと、大幅なアレンジ変更はしたくなかったけど、IKEPYが歌って、MAKIがもっと2バスを踏んで、ギターの手数も増やしたら、間違いなくウチの音になるなと思ったんです。
MAKOTO:僕が布教しました(笑)。
IKEPY:(Strung Outは)いろんな要素が入ってるから、ハーネームと共通点があるんじゃないかなと思います。メタルもパンクも好きっていう。
MAKOTO:「Savior」とか、Strung Outを意識して作った曲ですからね。Strung OutのInstagramにメッセージを送ったら、「一緒にツアーをまわりたいね!」と返事がきて、凄く嬉しかったですね。
◆インタビュー(3)へ
■ ウチらは挑まれたら拒まない(MAKOTO)
── 新曲「Darkside」ですが、『BAKEMONO』や『POWER』でキャッチーな部分が出てきたから、その流れが継続してるのかと思いきや、かなりエグい仕上がりですよね。
MAKOTO:そうなんですよ。天の邪鬼なんで(笑)、ヘヴィなヤツもやりてぇと上がってきたのがこの曲なんです。『POWER』は陽な部分を押し出しましたけど、これは曲名通りに陰が強く出ましたね。
── あえて「Darkside」と名付けたからには、その反面の曲も生まれてたり?
MAKOTO:今あるのは……
IKEPY:「Darkside」寄りな曲ばかりですね(笑)。
── そうなると、またプログレッシブにガツガツと攻めるような曲も?
IKEPY:あります、あります。
── これまでも海外へは積極的に足を運んでいますが、今年3月にはフィリピン・マニラで開催されたアジア最大級のメタルフェス<PULP SUMMER SLAM XIX>にも出演し、Slayerとも共演。いろいろな現場を経験して、視野も広がっているでしょうしね。
IKEPY:Slayerには、みんな刺激を受けましたよ。
MAKOTO:半端なかったですからね。
IKEPY:そこから、メンバー各々の血みどろな部分が出てきたのかもしれない説あるかも。
MAKOTO:たしかに、Slayerが引き出してくれたかもね、ウチらの陰を(笑)。一昨年はMEGADETHとANTHRAXとやらせてもらったので、気がついたら、THE BIG4のうち、3バンドとやってるんですよ。幸運なことだし、「これを他にできるヤツはいないだろ」っていう自負もありますね。
MAKOTO:やっぱり、新しい作品を出したいですね。
IKEPY:どういう形にするかも決まってないんですけど、それは考えてます。
MAKOTO:より自分たちの音を追求して、納得の行くものを作りたいです。
── 「Darkside」や今の雰囲気を踏まえると、かなりエグい内容になりそうな?
MAKOTO:そうですね。いろんな音楽を作ってきたのもあって、ハーネームを様々な角度から見てくれる人もいるんですけど、ライヴ後に、汗かいて興奮気味に「今日、エグかったです!」って話しかけてくれるような、ハードな部分にフォーカスしてくれる人もたくさんいて。そういう人たちにそういった陰の部分をもうちょっと聴かせてあげたいな、というのがバンドのムードとしてあるんですよ。
MAKOTO:もちろんです。それはハーネームが絶対に持ってる部分ですし。今は、陽を結構やってきたというのがあるから、陰を突き詰めてみたくなってるんでしょうね。
── また、ライヴのフィールドはどんどん広がっていきそうですか? 発表されてる予定だけ見ても、幅がとんでもないことになってますよね。
IKEPY:最終的にはEテレまでいこうかと(笑)。
── それはそれで観たいですけど(笑)。
MAKOTO:ウチらは挑まれたら拒まないんですよ。
IKEPY:たしかに。猪木イズムだね。
── 昔、「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」とアントニオ猪木さんが言ってましたけど、その表現はハーネームのスタンスとしてわかりやすいかもしれないです。
MAKOTO:どんな場所でも、戦いは戦いですからね。あと、いろんなところでウチらを知ってくれた人が、ひとつのフィールドに全員来てくれたら面白いなと思ってたりもして。来年にはなると思うんですけど、主催イベントとかもできたらなと。とにかく、バンドとしてはライヴをしながらデモもガンガン作って、動いていきたいですね。
取材・文◎ヤコウリュウジ
◆ ◆ ◆
■作品情報
HER NAME IN BLOOD『Bloodline』
2019年6月26日(水)発売
WPCL-13059 | ¥2,500+Tax
01. We Refuse (New Recording Version)
02. LET IT DIE
03. Darkside (新曲)
04. POWER
05. LAST DAY
06. GASOLINES
07. KATANA
08. Redemption
09. Decadence (New Recording Version)
10. REVOLVER
11. Savior
12. BAKEMONO
13. Her Name In Blood (Strung Out カヴァー)
14. HALO
15. From The Ashes
16. Unshaken Fire (New Recording Version)
■ライブ情報
2019年7月05日(金) 渋谷 RUBY ROOM
OPEN 20:00 / START 20:30
ACT:HER NAME IN BLOOD
※SOLD OUT
<HER NAME IN BLOOD presents DERA BLOOD.>
2019年7月15日(月) 車道LINK
OPEN 17:30 / START 18:00
ACT:SABLE HILLS / VICTIM OF DECEPTION
TICKET:前売¥3,000 / 当日¥3,500 / DRINK¥500
アーティスト
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