『南から来た十字軍』はルーラルで
骨太のフュージョンを提示した
クルセイダーズの傑作
一般的にフュージョン黎明期とされる70年代中期は、傑作が多くリリースされた年だ。ジョージ・ベンソンの『ブリージン』(‘76)をはじめ、リー・リトナー『キャプテン・フィンガーズ』(’77)と『ジェントル・ソウツ』(‘77)、マイケル・フランクス『スリーピング・ジプシー』(’77)、アル・ジャロウ『グロウ』(‘76)、アール・クルー『リビング・インサイド・ユア・ラブ』(‘76)、ウェザー・リポート『ヘヴィ・ウェザー』(’76)、ジャコ・パストリアス『ジャコ・パストリアス』(‘76)など、どれもお洒落で都会の夜が似合う名盤たちである。これらのアルバムと同時期にリリースされたのが、スタッフの『スタッフ』とクルセイダーズの『南から来た十字軍(原題:Those Southern Knights)』で、どちらも76年のリリースだ。同じフュージョンでもスタッフとクルセイダーズはあまり都会的ではない。どちらかと言えば、南部的ないなたさが感じられる汗臭いサウンドが売りであったが、特に今回紹介する『南から来た十字軍』は、泥臭いヘヴィ級のリズムセクションに対して、繊細で洒脱なギターとエレクトリックピアノのインタープレイが素晴らしく、ポピュラー音楽史に残る名演が繰り広げられている。
イージーリスニングジャズから
スタートしたフュージョン
そもそもフュージョンという音楽は、ジャズを一般大衆に分かりやすく伝えるために生まれた音楽である。難解なジャズのアドリブを、よく知られたポピュラー音楽に置き換えて提示しようとしたものだ。1966年にリリースされたジャズギターの巨匠ウェス・モンゴメリーによる『夢のカリフォルニア(原題:California Dreaming)』はフュージョン作品の先駆であり、ママス&パパスの大ヒット曲やその他のポップス曲をジャズ的な解釈で演奏した作品である。おそらく、リリース当初は売れるかどうか明確には分からなかったと思うが、蓋を開けてみればビルボードのジャズチャートで1位となっただけでなく、R&Bチャートでも4位という大成功を収める。翌年にリリースした『デイ・イン・ザ・ライフ』ではビートルズナンバーを2曲取り上げ、『夢のカリフォルニア』を超えてジャズチャート1位、R&Bチャート2位という好結果となった。今聴くと、これらのアルバムはほぼ“歌のない歌謡曲”であって、当初はイージーリスニングジャズと呼ばれていた。
クリード・テイラーの戦略
これらのアルバムをプロデュースしたのがCTIレコードの創設者、クリード・テイラーだ。ウェスのこれらのアルバムの成功によって、67年にA&Mレコードに迎え入れられ、翌年にはCTI(クリード・テイラー・イシューの略)レコードを設立しているのだから、イージーリスニングジャズがいかに売れたかを物語っている。当時のジャズミュージシャンはどんなに良い演奏をしても、ポピュラーのアーティストのようには稼げなかった。もちろん、クリード・テイラーも、そのあたりを不憫に思ってイージーリスニングジャズを作ったのだろうが、多くのジャズミュージシャンたちが彼のプロデュースでアルバムを作ろうと、彼のもとに集まってきた。
残念なことに、ウェス・モンゴメリーは売れ出していた矢先の1968年に、まだ45歳の若さで心不全で亡くなっている。売れる路線であっただけに、ウェスの後釜が必要となり、その代わりとしてウェスの弟子的な存在のジョージ・ベンソンが継承することになった。70年、クリードのプロデュースで『アビー・ロード(原題:The Other Side of Abbey Road)』をリリースすると、ヒットはするもののジャズのテイストが強すぎて、ジャズチャートでは1位を獲得したものの、他のチャートではあまり良い結果にはならなかった。
クリード・テイラーはこの後、ブラジルの有能なエウミール・デオダートをアメリカに呼び寄せて、CTIのアレンジャーとして雇い入れる。そして73年、クラシックとブラジル音楽、ジャズをクロスオーバーさせた『ツァラトゥストラはかく語りき(原題:Prelude)』をデオダート名義でリリース、これが世界的に大ヒットし、翌年のグラミーでベストポップ・インストゥルメンタル賞を受賞する。このアルバムはヒットしただけでなく、以降のフュージョンのスタイルを確立した画期的な作品となった。ベースにスタンリー・クラーク、ロン・カーター、ドラムにビリー・コブハム、ギターにジョン・トロペイなどの強者を揃え、何より当時新しかったデオダートのエレクトリックピアノは、フュージョンサウンドの特徴をリスナーに印象付けた。この後、ボブ・ジェームスがデオダートと同傾向の『はげ山の一夜(原題:One)』をCTIからリリースし、こちらもフュージョンらしいエレクトリックピアノが聴ける作品であった。
残念なことに、ウェス・モンゴメリーは売れ出していた矢先の1968年に、まだ45歳の若さで心不全で亡くなっている。売れる路線であっただけに、ウェスの後釜が必要となり、その代わりとしてウェスの弟子的な存在のジョージ・ベンソンが継承することになった。70年、クリードのプロデュースで『アビー・ロード(原題:The Other Side of Abbey Road)』をリリースすると、ヒットはするもののジャズのテイストが強すぎて、ジャズチャートでは1位を獲得したものの、他のチャートではあまり良い結果にはならなかった。
クリード・テイラーはこの後、ブラジルの有能なエウミール・デオダートをアメリカに呼び寄せて、CTIのアレンジャーとして雇い入れる。そして73年、クラシックとブラジル音楽、ジャズをクロスオーバーさせた『ツァラトゥストラはかく語りき(原題:Prelude)』をデオダート名義でリリース、これが世界的に大ヒットし、翌年のグラミーでベストポップ・インストゥルメンタル賞を受賞する。このアルバムはヒットしただけでなく、以降のフュージョンのスタイルを確立した画期的な作品となった。ベースにスタンリー・クラーク、ロン・カーター、ドラムにビリー・コブハム、ギターにジョン・トロペイなどの強者を揃え、何より当時新しかったデオダートのエレクトリックピアノは、フュージョンサウンドの特徴をリスナーに印象付けた。この後、ボブ・ジェームスがデオダートと同傾向の『はげ山の一夜(原題:One)』をCTIからリリースし、こちらもフュージョンらしいエレクトリックピアノが聴ける作品であった。
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