シド、
8年前の思いも乗せた
初の横浜アリーナ公演の
ライブレポートが到着
3月10日@横浜アリーナ
およそ1年間にわたって様々な企画が繰り広げられたシドの結成15周年のアニバーサリーイヤー。そのグランドファイナルが3月10日に横浜アリーナで開催された。このライブが発表された時にマオ(Vo)が“絶対ここでやりたかった”と語ったように、2011年3月に予定されていた横浜アリーナ公演が東日本大震災を受けて中止になった、その深い感情と記憶を乗せて挑む晴れ舞台だ。ファンの気持ちも同じだろう。広いアリーナは満員の観客でしっかりと埋め尽くされた。
ステージ後方の超ワイドスクリーンに映る、時空を超えて飛ぶ飛空艇の幻想的なアニメーション。2003、2011、2018と、意味深な数字を刻みながら飛空艇は飛び、着陸と同時にメンバーがステージに姿を現すドラマチックな演出から、勢いよく始まった1曲目は「NO LDK」。力強いミドルテンポとマオの優しい歌声で会場内の空気を柔らかくほぐすと、2曲目「ANNIVERSARY」からは一気にスピードアップ。派手なレーザービームが飛び交う中、「V.I.P」ではいきなりマオが客席へ飛び込んだ。高ぶる気持ちを抑えきれない、熱い気持ちが伝わるオープニングだ。
“今日はシドの15年間をぎゅっと詰め込んだセットリストにしてるんで、最後まで楽しんでくれ!”(マオ)
4人お揃いの、ミリタリー風のデザインによるシックなブラウンの衣装がかっこいい。曲はまさにベスト・オブ・シドで、「cosmetic」「KILL TIME」「罠」と続くアダルトでファンキーなロックチューンでは、Shinjiの鋭いカッティングと明希の強烈なスラップがグルーヴをリードする。気持ちの入った演奏に、こちらの体も自然に揺れる。
“今日は15周年の大打ち上げ。シドのこれからを感じる最高のライブにしよう”(明希)
“ラーメンにたとえると、最近は太くて長い麺も増えてます。シドも太くて長いバンド活動をしていきたいと思ってます”(Shinji)
“この場所に、シドは似合ってますか? いろんな思いを今日のステージにぶつけたいと思います”(ゆうや)
“メンバーも、いつもよりいい顔してる。お前らも、もっといい顔してるぞ”(マオ)
四者四様の表現は、つまりファンに伝える15年分の感謝の思い。2008年のメジャーデビューシングル「モノクロのキス」と、3枚目にあたる「嘘」は、シドの原点とも言えるソリッドなバンドサウンド、ダンサブルなビート、憂いのメロディー、ロマンチックな歌詞を兼ね備えた代表曲だ。そのキャッチーな魅力は昔も今もまったく変わらない。過去のどの時代の曲も大切に歌い続ける、それこそがファンへの最大の感謝の証だ。
中盤には「ホソイコエ」「2℃目の彼女」「スノウ」と、冬の情景を描く3曲が揃った。降り注ぐ雪を映す雄大なスクリーンをバックに、白いスモークに包まれるステージは幻想的なほどに美しい。そして季節は冬から春へ、「ハナビラ」ではスクリーンいっぱいに桜の花びらが舞い落ちる中、淡々とループするビートが別れを歌う歌詞の悲しみを倍加させる。マオが全身全霊をかけて歌い上げる、ラストの超ロングトーンがくるおしいほどに切ない。演出と歌がぴたりと寄り添う、素晴らしい名シーンだ。
強烈なノイズとバグった画像の中に浮かび上がる、“ARE YOU READY?”の文字。穏やかな曲調が続いた中盤から急転直下、終盤はヘヴィでハードなロックンロール爆弾の連続投下だ。「dummy」ではShinjiと明希がステージを全力で駆け抜け、マオがセンター席へ突入して観客にマイクを向ける。さらにスピードを上げて「隣人」から「プロポーズ」へ、スタンドのてっぺんまでを巻き込んだヘドバンパフォーマンスが壮観だ。強力なヘヴィメタルダンスチューン「眩暈」ではステージで炎の柱がぶち上がり、全員参加のタテノリジャンプで床がぐらぐら揺れる。真っ赤に染まるスクリーンと燃え盛る炎の中で幕を下ろした本編16曲は、15年間の歴史を80分に凝縮した、とことんソリッドでストイックなものだった。
そしてアンコール。イントロで悲鳴のようなどよめきが起こった「空の便箋、空への手紙」の、せつなさと呼ぶにはあまりに悲しすぎる永遠の別れを綴る歌詞と、もの悲しいワルツの調べが胸に痛い。Shinjiの奏でるアコースティックギターのソロも、万感の思いを乗せた繊細でエモーショナルなものだ。
明希はTシャツ、ゆうやはノースリーブのロングコート、マオは白いボルサリーノに黒いファーコート、Shinjiはスーツに眼鏡。あまりにバラバラな衣装をネタに笑いを取る、4人の屈託ない笑顔が眩しい。続けて“みんなに未来を見せたくて新曲持ってきました”と言って初披露した「君色の朝」は、美しいコーラスの入ったメロディアスなミドルチューン。包容力いっぱいの、15年目のシドを象徴する親しみやすい1曲だ。
そしてラストスパートは定番曲を惜しみなく、「循環」ではお馴染みの回転パフォーマンスで盛り上がり、「Dear Tokyo」「one way」と得意の高速ビートロックで全力疾走。マオが“ここをライブハウスだと思ってぐちゃぐちゃにしてくれますか!”と叫ぶ。言われる前にすでにそうしている、シド愛溢れる観客の一体感が凄まじい。
4月からメンバーズクラブツアー、6月には対バン形式のコラボレーションツアー、約2年振りのニューアルバム制作開始、そして秋から全国ホールツアー開催。スクリーンに映し出される重大発表の連発に観客が沸いた。16年目のシドはもちろん止まらない。その未来へ、光へ、目を向けよう――。アンコールラスト曲「その未来へ」のリフレインを一緒に歌い続ける、この素晴らしいファンと共に築く未来は、きっと素晴らしい旅路になるはずだ。
“飛空艇のように不安定で、浮いたり沈んだりするのがシドです。それも込みで応援してください。その代わりみんなが沈んでる時には俺たちが音楽で励ますから。任しといてよ!”(マオ)
最後に挨拶に立ったマオの、涙と笑顔でくしゃくしゃになった顔が、この日のライブの充実感を物語る。15年間の、そして8年前の思いも乗せて臨んだシド初の横浜アリーナ公演は、シドにとって、シドを愛するファンにとって決して忘れられない1日になった。全員の思いを乗せてその先の未来へ、シドという名の飛空艇の視界は良好だ。
ステージ後方の超ワイドスクリーンに映る、時空を超えて飛ぶ飛空艇の幻想的なアニメーション。2003、2011、2018と、意味深な数字を刻みながら飛空艇は飛び、着陸と同時にメンバーがステージに姿を現すドラマチックな演出から、勢いよく始まった1曲目は「NO LDK」。力強いミドルテンポとマオの優しい歌声で会場内の空気を柔らかくほぐすと、2曲目「ANNIVERSARY」からは一気にスピードアップ。派手なレーザービームが飛び交う中、「V.I.P」ではいきなりマオが客席へ飛び込んだ。高ぶる気持ちを抑えきれない、熱い気持ちが伝わるオープニングだ。
“今日はシドの15年間をぎゅっと詰め込んだセットリストにしてるんで、最後まで楽しんでくれ!”(マオ)
4人お揃いの、ミリタリー風のデザインによるシックなブラウンの衣装がかっこいい。曲はまさにベスト・オブ・シドで、「cosmetic」「KILL TIME」「罠」と続くアダルトでファンキーなロックチューンでは、Shinjiの鋭いカッティングと明希の強烈なスラップがグルーヴをリードする。気持ちの入った演奏に、こちらの体も自然に揺れる。
“今日は15周年の大打ち上げ。シドのこれからを感じる最高のライブにしよう”(明希)
“ラーメンにたとえると、最近は太くて長い麺も増えてます。シドも太くて長いバンド活動をしていきたいと思ってます”(Shinji)
“この場所に、シドは似合ってますか? いろんな思いを今日のステージにぶつけたいと思います”(ゆうや)
“メンバーも、いつもよりいい顔してる。お前らも、もっといい顔してるぞ”(マオ)
四者四様の表現は、つまりファンに伝える15年分の感謝の思い。2008年のメジャーデビューシングル「モノクロのキス」と、3枚目にあたる「嘘」は、シドの原点とも言えるソリッドなバンドサウンド、ダンサブルなビート、憂いのメロディー、ロマンチックな歌詞を兼ね備えた代表曲だ。そのキャッチーな魅力は昔も今もまったく変わらない。過去のどの時代の曲も大切に歌い続ける、それこそがファンへの最大の感謝の証だ。
中盤には「ホソイコエ」「2℃目の彼女」「スノウ」と、冬の情景を描く3曲が揃った。降り注ぐ雪を映す雄大なスクリーンをバックに、白いスモークに包まれるステージは幻想的なほどに美しい。そして季節は冬から春へ、「ハナビラ」ではスクリーンいっぱいに桜の花びらが舞い落ちる中、淡々とループするビートが別れを歌う歌詞の悲しみを倍加させる。マオが全身全霊をかけて歌い上げる、ラストの超ロングトーンがくるおしいほどに切ない。演出と歌がぴたりと寄り添う、素晴らしい名シーンだ。
強烈なノイズとバグった画像の中に浮かび上がる、“ARE YOU READY?”の文字。穏やかな曲調が続いた中盤から急転直下、終盤はヘヴィでハードなロックンロール爆弾の連続投下だ。「dummy」ではShinjiと明希がステージを全力で駆け抜け、マオがセンター席へ突入して観客にマイクを向ける。さらにスピードを上げて「隣人」から「プロポーズ」へ、スタンドのてっぺんまでを巻き込んだヘドバンパフォーマンスが壮観だ。強力なヘヴィメタルダンスチューン「眩暈」ではステージで炎の柱がぶち上がり、全員参加のタテノリジャンプで床がぐらぐら揺れる。真っ赤に染まるスクリーンと燃え盛る炎の中で幕を下ろした本編16曲は、15年間の歴史を80分に凝縮した、とことんソリッドでストイックなものだった。
そしてアンコール。イントロで悲鳴のようなどよめきが起こった「空の便箋、空への手紙」の、せつなさと呼ぶにはあまりに悲しすぎる永遠の別れを綴る歌詞と、もの悲しいワルツの調べが胸に痛い。Shinjiの奏でるアコースティックギターのソロも、万感の思いを乗せた繊細でエモーショナルなものだ。
明希はTシャツ、ゆうやはノースリーブのロングコート、マオは白いボルサリーノに黒いファーコート、Shinjiはスーツに眼鏡。あまりにバラバラな衣装をネタに笑いを取る、4人の屈託ない笑顔が眩しい。続けて“みんなに未来を見せたくて新曲持ってきました”と言って初披露した「君色の朝」は、美しいコーラスの入ったメロディアスなミドルチューン。包容力いっぱいの、15年目のシドを象徴する親しみやすい1曲だ。
そしてラストスパートは定番曲を惜しみなく、「循環」ではお馴染みの回転パフォーマンスで盛り上がり、「Dear Tokyo」「one way」と得意の高速ビートロックで全力疾走。マオが“ここをライブハウスだと思ってぐちゃぐちゃにしてくれますか!”と叫ぶ。言われる前にすでにそうしている、シド愛溢れる観客の一体感が凄まじい。
4月からメンバーズクラブツアー、6月には対バン形式のコラボレーションツアー、約2年振りのニューアルバム制作開始、そして秋から全国ホールツアー開催。スクリーンに映し出される重大発表の連発に観客が沸いた。16年目のシドはもちろん止まらない。その未来へ、光へ、目を向けよう――。アンコールラスト曲「その未来へ」のリフレインを一緒に歌い続ける、この素晴らしいファンと共に築く未来は、きっと素晴らしい旅路になるはずだ。
“飛空艇のように不安定で、浮いたり沈んだりするのがシドです。それも込みで応援してください。その代わりみんなが沈んでる時には俺たちが音楽で励ますから。任しといてよ!”(マオ)
最後に挨拶に立ったマオの、涙と笑顔でくしゃくしゃになった顔が、この日のライブの充実感を物語る。15年間の、そして8年前の思いも乗せて臨んだシド初の横浜アリーナ公演は、シドにとって、シドを愛するファンにとって決して忘れられない1日になった。全員の思いを乗せてその先の未来へ、シドという名の飛空艇の視界は良好だ。
photo by 今元秀明、緒車寿一
text by 宮本英夫
【セットリスト】
01.NO LDK
02.ANNIVERSARY
03.V.I.P
04.cosmetic
05.KILL TIME
06.罠
07.モノクロのキス
08.嘘
09.ホソイコエ
10.2℃目の彼女
11.スノウ
12.ハナビラ
13.dummy
14.隣人
15.プロポーズ
16.眩暈
<ENCORE>
01.空の便箋、空への手紙
02.君色の朝
03.循環
04.Dear Tokyo
05.one way
06.その未来へ
text by 宮本英夫
【セットリスト】
01.NO LDK
02.ANNIVERSARY
03.V.I.P
04.cosmetic
05.KILL TIME
06.罠
07.モノクロのキス
08.嘘
09.ホソイコエ
10.2℃目の彼女
11.スノウ
12.ハナビラ
13.dummy
14.隣人
15.プロポーズ
16.眩暈
<ENCORE>
01.空の便箋、空への手紙
02.君色の朝
03.循環
04.Dear Tokyo
05.one way
06.その未来へ
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