【鈴木実貴子ズ インタビュー】
結論はずっと見つからない
そういうことも
ひっくるめて肯定したい
L→R 鈴木実貴子(Vo&Gu)、高橋イサミ(Dr)
アコースティックギター&ヴォーカル+ドラムという独特な編成の“鈴木実貴子ズ”。魅了されるリスナーが着々と増え続けている中、ついに1stアルバム『現実見てうたえよばか』が3月20日にリリースされる。このバンドの音楽が描いている世界とは?
テーマが矛盾っていう曲は
多い気がします
今回のアルバムを作るにあたって、何か考えていたことはありました?
高橋
毎回そうなんですけど、その時に歌いたいものを集めるように作っているので、“こういう意味を込めました”というようなのはないんです。
前から歌っている曲もたくさん収録されていますよね。
鈴木
はい。新しい曲は2曲?
高橋
うん。「あきらめていこうぜ」と「見たことない花」ですね。
昔からある曲を選ぶにあたっての基準はあったんですか?
鈴木
私は自分でやりながらすぐに飽きちゃうんですけど、今回入れた曲はずっと新鮮でいられる本当のお気に入りです。
明確な意図はなかったにせよ、結果的に鈴木実貴子ズの核にあるものが濃厚に反映されたアルバムっていうことかもしれないですね。
高橋
まさしくそうですね。
鈴木
アルバムっていうか総集編?
高橋
うん。フルアルバム自体、作るのは初めてなんですけど。
初の全国流通盤は2017年9月に出したミニアルバム『名前が悪い』?
鈴木
そうです。
すごいタイトルですが…
鈴木
“鈴木実貴子ズなんていうバンド名、絶対に悪いじゃん”って思っていて(笑)。
(笑)。もともと鈴木さんは弾き語りで活動していたんですよね?
鈴木
そうです。最初は鈴木実貴子としてやっていたんですけど、ドラムの“ズ”(高橋)を入れまして(笑)。
高橋
僕はもともと別のバンドをやっていたんです。昔の彼女は売れなそう…と言ったらなんですけど(笑)、すごくいいなと思って“一緒にやりましょう”って声を掛けたのが鈴木実貴子ズを始めたきっかけです。
感情を真っ直ぐ投げ込んでくるみたいな鈴木さんの歌声って素晴らしいですよね。なんと言うんでしょう? 生肉を投げ付けられたような感覚というか。
高橋
それ、褒められているんですか?(笑)
鈴木
まぁ、調理はされていないですね(笑)。ライヴでもそういうものを感じていただけると嬉しいです。CDだけでは終わってほしくなくて、ライヴにも来てほしい気持ちがすごくあるんですよ。
おふたりの曲に関しては、ネガティブなことをとことん見つめた上でポジティブな方向へ進むみたいな姿がすごく表現されているのを感じました。
鈴木
無理に光を見るのが苦手なんです。芯は多分ネガティブなんですけど、“それはまぁ受け入れよう”っていう気持ちがすごく強くて。無理に変わろうとせず、その感情を受け入れようというスタンスの曲が多いです。
「音楽やめたい」もそういう曲じゃないですか。タイトルだけ見ると超ネガティブですけど、音楽を辞めたい理由がたくさん挙げられた末に、音楽に対する強い気持ちが伝わってくる曲ですから。
鈴木
やっぱり音楽は楽しいばっかりじゃないですし。向き合わなきゃいけないことをどんどん突き付けられていくんです。
高橋
本当にそうだね。やっているうちに、びっくりするほどのスピードで年月が経っていくし。
鈴木
やっていても全然成熟しない。
高橋
分かる。
苦しみとたくさん向き合うことになるけど、それでも音楽は自分にとって大事なものであるというのは、ある種の矛盾だと思いますけど、ミュージシャンのリアルな気持ちなんでしょうね。
鈴木
はい。テーマが矛盾っていう曲は多い気がします。面倒臭い歌なんですよ(笑)。
高橋
表面的に聴いて“楽しい”というのも音楽ですけど、そうじゃないものを求めている人ももちろんいると思うんです。自分たち自身がそうだから、そっちのほうに自分たちもなれたらいいよね?
鈴木
うん。
高橋
好きって言ってくれる人の深さは深いものをやれていると思っています。
鈴木
現実でしかない感じの曲ばかりですが(笑)。でも、こういうことしか歌いたくないんですよね。聴くのだったら、いろんな音楽が好きなんですけど、自分が歌うんだったら、こういう曲じゃないと気持ちが入らないんです。
「アホはくりかえす」もそういう曲ですね。いろいろぼやきたくなることはあるけど、結局は自分ときちんと付き合って、自分がいるべきだと思う場所でやるべきことをするしかないという気持ちが伝わってきます。
鈴木
自分が一番信用できないし、ややこしいし、分からないんです。自分のことって全然分からないです。私は他人より自分に対する不信感が強いです。
認めざるを得ない事実を見つめた先にあるものを描いているという点で、「アホはくりかえす」もポジティブソングだと僕は思っています。
鈴木
かなり遠回りですけどね(笑)。高望みせずに受け入れることが前に進むための大事な材料だと思うんだけどなぁっていう曲です。
高橋
僕はこの人と付き合いは長いですけど、人としては分からないんです。昨日言ってたことと今日言ってることが違うし(笑)。でも、そういう人が書いている曲だと思うと、腑に落ちるんですよね。“人ってそういうものなんだよなぁ”って思える曲ばかりです。
アーティスト
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