『ル・コルビュジエ 絵画から建築へ
―ピュリスムの時代』レポート ル・
コルビュジエ建築で、創造の源を体感
スイスで生まれ、建築の仕事をしていたシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(後のル・コルビュジエ)は、20代後半にパリへ上京し、画家のアメデ・オザンファンと出会い、油絵制作に取り組んだ。《暖炉》は、ジャンヌレが自分のキャリアの「最初のタブロー」と定めた作品だ。暖炉の上に白い物体と板らしきものが置かれたこの絵は、ジャンヌレの創作の象徴である「幾何学的」な形態が際立つ。
シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)《暖炉》1918 パリ、ル・コルビュジエ財団
第一次大戦が終結した1918年末、ジャンヌレはオザンファンと共に「構築と総合」を提唱するピュリスムを掲げ、雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』(新しい精神)で「ル・コルビュジエ」というペンネームを名乗った。彼はしばらくの間、建築論を展開する際のペンネームや建築家としての活動はル・コルビュジエ、画家としての活動はジャンヌレを名乗って活動していくことになる。
シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)《アンデパンダン展の大きな静物》1922年 ストックホルム近代美術館
ピュリスムの提唱とキュビスムからの影響
左より:ル・コルビュジエ《《レア》の主題による習作》1932年/《《レア》の習作》1930年/《《灯台のそばの昼食》の習作》1928年 大成建設株式会社/《《(朱色の)グラスと瓶》の習作》1928年※記載なきものはル・コルビュジエ財団
ル・コルビュジエがシャルロット・ペリアンやピエール・ジャンヌレと共に家具製作に取り組むようになったのはこの頃で、ロングセラーとなった椅子はシンプルで無駄がなく、人間の身体の曲線を考慮した形状になっている。
紙谷譲《「サヴォワ邸」1/100模型》2010年 大成建設株式会社
ル・コルビュジエ建物の中で、ル・コルビュジエの発想の源に触れる
~建築と作品が響きあう空間~
2階の展示室はホールを取り巻く螺旋状の回廊になっており、作品が増えた時に建物の拡張を可能にする「無限成長美術館」というル・コルビュジエの発想に則っている。本展はル・コルビュジエの思想を時系列順に示す内容になっており、会場をぐるりと巡りながらル・コルビュジエの人生の軌跡を追うことができる。
ル・コルビュジエは建築家としては高名だが、画家としての活動はあまり知られていない。しかし、ピュリスムとそれに基づく絵画はル・コルビュジエの思想の核であり、彼の建築や活動を知るための大きな手掛かりとなる。ル・コルビュジエが打ち立てた理念や建築に込められたコンセプトを単純に理解するのではなく、体感もできる本展は、国立西洋美術館でなければ不可能な展示だ。通常の美術展とは一味違う体験ができる『ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代』を、どうかお見逃しなく。
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