ブリング・ミー・ザ・ホライズン、最
新作『アモ』を携えての快進撃が止ま
らない
そうした実績面での数字以上に注目を集めているのが、この作品におけるバンドの音楽的な進化・成熟ぶりの顕著さだ。デビュー当初は、まさしく若々しいエネルギーのほとばしりのような振り切った激烈さ、破壊力というよりも破滅的な匂いを伴った向こう見ずな攻撃性を特徴としていたこのバンドだが、第4作の『センピターナル』(2012年)あたりから明らかに音楽的領域を拡げ始め、前作の『ザッツ・ザ・スピリット』においてそれは、2010年代なりのハード・ロックとしてひとつの完成形に至ったようにも思われた。が、彼らの進化はそこで留まることなく、この『アモ』でのさらなる開花をみせている。
その音楽的な変化について、それこそかつてのデス・コアのような新しい言葉を掲げて形容することは無意味だろう。この『アモ』での彼らは、新しいジャンルを発明することに躍起になっているわけでは決してなく、むしろ元来の多様性に磨きをかけながら、同時にすべてを自分たちの色に染め上げている。楽曲の多様さについては、グライムスをフィーチュアしての「ニヒリスト・ブルース」に対して、「ワンダフル・ライフ」ではクレイドル・オブ・フィルスのフロントマンであるダニ・フィルスとの合体がみられるという、他のバンドでは考えられないコラボレーションのギャップの大きさにも象徴されている。そのダニがいい味を出している同楽曲のビデオ・クリップも必見だ。
そして重要なのは、メタルからエレクトロに至るまでの多様性を持ち合わせた彼らの音楽が、どこを切ってもマニアックであるばかりでなく、同時にポジティヴな意味でのコマーシャルな効力を持ち合わせている、ということ。典型的なメタルの要素、いわゆるバンド・サウンド的な色調は明らかに薄まっているが、それが“刺激度が低い”ということとはまったくイコールではないところに、このアルバムの凄みがある。加えて、雑多なようでいて、1枚のアルバムとしてのまとまりを感じさせるところもまた見事だし、ある意味、バンドの中枢であるオリヴァー・サイクス(Vo)によるDJを楽しめるような感触でもある。
とことん実験的で冒険心に溢れていながら、誤解を恐れずにいえば、とてつもなくポップでどこか普遍性すらも感じられる『アモ』。本作での彼らのそうしたたたずまいには、オリヴァー自身が敬愛するリンキン・パークにも重なるものがあるし、実際、彼自身も彼らからの影響の大きさを認めている。手前味噌ながら、現在発売中のロッキング・オン3月号には筆者によるオリヴァーの最新インタビューが掲載されているが、そうした部分についても彼は赤裸々に語っているので、是非お読みいただければ幸いだ。
そして、もうひとつ気になるのは、現地時間の2月10日(日本時間では翌11日)に発表される本年度のグラミー賞の結果だ。彼らの「マントラ」は、グレタ・ヴァン・フリートやセイント・ヴィンセントなどの楽曲とともに、最優秀ロック・ソング部門にノミネートされている。『アモ』が世に出るずっと前から、この先行リリース曲が米音楽業界の権威とされる人たちから注目と評価を集めていたという事実にも改めて気付かされる。彼ら自身の今後の動向に加え、こちらの行方にも注目したいところだ。
文◎増田勇一
▲『アモ』国内盤ジャケット
▲『アモ』配信ジャケット
2019年1月30日リリース
SICP-5940 ¥2,200+税
01. アイ・アポロジャイズ・イフ・ユー・フィール・サムシング
02. マントラ
03. ニヒリスト・ブルース feat. グライムス
04. イン・ザ・ダーク
05. ワンダフル・ライフ feat. ダニ・フィルス
06. アウチ
07. メディスン
08. シュガー・ハニー・アイス & ティー
09. ホワイ・ユー・ガッタ・キック・ミー・ホエン・アイム・ダウン?
10. フレッシュ・ブルーゼズ
11. マザー・タング
12. ヘヴィー・メタル feat. ラゼール
13. アイ・ドント・ノウ・ホワット・トゥ・セイ
■<サマーソニック2019>
東京:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
▼東京
8月16日(金) B’z / The 1975 / トゥー・ドア・シネマ・クラブ / ザ・ストラッツ...and more
8月17日(土) レッド・ホット・チリ・ペッパーズ / BABYMETAL / ランシド / ブリング・ミー・ザ・ホライズン...and more
8月18日(日) ザ・チェインスモーカーズ / Very Special Guest / アラン・ウォーカー / ブロックハンプトン...and more
▼大阪
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