【杏沙子 インタビュー】
自分らしくいるための決意表明
杏沙子
デビューしてから、誰かに媚びるのではなく、自分らしく、自分が楽しむ曲を作ることが大事ということに気付いたという杏沙子。彼女の“現在”の素直な気持ちが込められた、リアルで共感度の高い1stフルアルバム『フェルマータ』が完成した。
今作はどのように作られたのですか?
『花火の魔法』(2018年7月発表のミニアルバム)でメジャーデビューしてからは、関わってくれるスタッフさんや聴いてくれる人も増えて。さらに、他のミュージシャンの方たちとイベントでご一緒したり、ライヴを観て刺激を受けたりするうちに、“もっと自分も頑張らなくちゃ”“もっといい曲を作らなくちゃ”と思い、無意識に自分のことを追いつめていたんです。でも、そういう時期ってまったくいい曲が作れないんですよね。
意識しすぎてしまいますからね。
そうなんです。思えば、インディーズで活動していた頃は誰かのために意識して作っていたわけではなく、自分がいいなと思う曲をとにかく突き詰めていたなと。それを思い出した瞬間、やっぱり自分が一番楽しまないと聴いてくれる人も楽しくないだろうし、魅力的な曲ってできないと思ったんです。そういう意味でも、自由に、楽しく、自分らしくやっていきたいと思い、演奏家が自らの意思で自由に音を伸ばすことができる記号“フェルマータ”というタイトルを付けました。
大きな気付きがあったからこそ書けた曲はどれですか?
最後の「とっとりのうた」です。アルバム収録曲の10曲全てを作り終えた時、何かピースがひとつ足りないと思ったんですね。自分の中にあるモヤモヤした気持ちを全て取っ払って、自分のためだけに曲を書いていくという決意の曲を入れないと、このアルバムは完成しないと思ったんです。そこで鳥取県に帰省した際に、自分が“いいな”と思うがままに歌詞と曲を書きました。
“自分のため”とは言いつつも故郷を歌っているからこそ、すごく共感度の高い曲になっていますよね。とはいえ、得意なファンタジーな曲もたくさん収録されていて。
はい。「恋の予防接種」は情景を描かずに、面白おかしく言葉遊びを主軸に作ったので、自分なりに新たなアプローチができたんじゃないかと思います。その他にも、等身大の曲がありつつも自分の好きな世界観で作るということに集中しました。
ここまでファンタジーなことを描けるのって普段からのインプットが大事になってくると思うのですが。
そうですね。メジャーデビューしてから、より人との会話に敏感になりました。例えば、理由もなく引っ掛かった“半透明”という言葉をメモしたり、“いい言葉だな”と思う言葉を記録するようになりました。
デビューを経ていろんなことが変化したんですね。
一番変化したのは強くなったことですかね。今までは周りの反応や顔色をうかがって、自分が本当に言いたいことを引っ込めちゃうことが多かったんです。でも、自分の書きたい曲を書くという決意が生まれてからは、人の幸せを願って動くことはすごく素晴らしいことだけど、それで自分の言いたいことが言えないのは自分の幸せにはつながらないと再認識したんです。自分の幸せを掴むためには正直であるべきだし、少し我がままになることでちゃんとやりたいことが見える気がしたんですよね。ちょっと大人になって、さらに逞しくなった気がします(笑)。
すごくいいと思いますよ。そんな中で生まれた挑戦曲を教えてください。
「ダンスダンスダンス」です。歌い方も構成も私のこれまでの引き出しからは出てこなかったようなもので、すごく挑戦的な曲になりました。
『花火の魔法』から引き続き、幕須介人さん提供の新曲も2曲収録されていますね。
はい。幕須さんとは同じ歳なんですが、まだ2回くらいしか直接お会いしたことがないにもかかわらず、本当に自分が今思っていることをリアルに描いてくるのでちょっと怖いんですよ(笑)。
あはは。中でもどの曲に驚きましたか?
「着ぐるみ」には驚きました。本当にお任せでお願いしたんですが、ちょうどこの曲をいただいた時、曲の作り方や人間関係とかで悩んでいた時期だったので、“外見はハッピーだけど、中は熱くて苦しくて蒸し上がりそう”という内容の歌詞が、まさにその時の自分を代弁してくれているって思ったんです。めちゃくちゃポップなサウンドなんですが、意味深な曲になっているのでいろんな角度から聴いてもらえるんじゃないかと思っています。
このアルバムの曲たちがライヴで聴けるのが楽しみです。
ライヴでは再現というよりも、その時に合ったかたちでアレンジできたらいいなと思っています。だからこそ、ライヴに遊びに来てもらって、聴き比べてもらいたいですね。
ジャケットもすごくかわいいですね。
ありがとうございます! ジャケットは“音符になりたい”というアイデアから始まったんです(笑)。頭の上の部分はウィッグなんですが、美容室にこのウィッグを持って行って、“これと同じ色にしてください”とオーダーしたんです。美容師さんはかなり驚いていましたが、逆に燃えてくれたらしく、すごく頑張ってくれました(笑)。おかげさまでとてもいい音符になりきれました。
では、最後に2019年の目標を教えてください。
2019年は攻めようと思っています! 自分で自分をしっかりと追いかけて、書きたいものをちゃんと発掘し、“私はこれがいい”というものを見せていけたらいいなと思っています。個人的には遠くに行きたいですね。海外でも国内でもいいんですが、いろんな場所に行ってさまざまな刺激を受けて、それを歌にしていけたらいいなと思っています。
取材:吉田可奈
「アップルティ―」MV
アーティスト
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