瀧川ありさ クリスマスイブに作りあ
げた愛しき人たちとの『わがまま』な
熱いライブ
9月より12月初旬まで、全国各地を舞台に計22本行ったソロアコースティックツアー『2nd recital live tour 2018"breath of mine"』。その成果を糧に、12月に大阪と東京を舞台にバンドを従えて行ったワンマンツアーが『瀧川ありさ 2nd recital live tour 2018 "breath of mine”-BAND FINAL-』。同ツアーの中から、12月24日(月・祝)のクリスマスイブに代官山LOOPで行われた公演の模様をお届けしよう。
共に想いを交わしあうライブの始まり。
場内を埋め尽くしたファンたちの放つ熱気がゆっくりと沸き立つ場内。優しいピアノの音色に導かれ響きだした、伸びのある歌声。ライブは、アニメ「終物語」のEDテーマとして流れた『さよならのゆくえ』から幕を開けた。瀧川ありさの呼びかけへ応えるように熱い手拍子を舞台上へ返す満員の観客たち。いや、返すのではない。ステージ上の彼女と同じように、誰もが沸き上がる想いを舞台の上へぶつけていた。歌に温かさを覚えながらも、沸きだす熱が身体中を疼かせる。共に想いを交わしあうライブの始まりだ。
駆けだしたギターの旋律へ飛び乗るように、瀧川ありさが歌いだしたのが『ONE FOR YOU』。軽やかにギターをストロークしながら、笑みを浮かべ、歌を響かせる。なんて眩しい表情だ。輝く笑顔へ導かれるように、場内からは手拍子や掲げた右手が空に向かって揺れ続けていた。跳ねるビートとシンクロしながら歌うその姿が、とても凛々しい。『FRIENDS』を相棒に、彼女は場内の空気へさらに熱を加えてゆく。序盤から気持ちを高ぶらせるこのドキドキが、にやつくほどに心地好い。
瀧川ありさ
MCでは、「クリスマスは楽しい思い出がなくて」と話しだした瀧川ありさ。とはいえ、今宵は満員のお客さんたちと一緒に過ごすクリスマスイブ。「わたしの人生の中、一番心に残るクリスマスイブになると思います」とも語っていた。
火照った気持ちを優しく癒すように瀧川ありさが歌いだしたのが、『日々モノクローム』。哀愁やノスタルジーな香りを覚えながら、震える気持ちのままに歌う彼女。その声に、誰もがキュンと胸を潤す愛しき恋の思い出を重ね合わせていた。アコギに持ち替えた瀧川ありさが歌ったのが、『anything』。ほのかな温かさも香る演奏の上で、込み上げる想いを零すように歌唱。その歌声は、悲しい気持ちさえ優しく包み込むように響いていた。「君が不安なときには そばにいられるように」。優しい彼女の愛情を求めたくて、誰もがその姿や歌声を心で受け止めていた。
冬の季節を悲しく、でもドラマチックに彩るように、瀧川ありさは想い(物語)を語るよう『snow train』を歌いだした。サビ歌へ触れるたびに、胸がキュッと締めつけられる。その痛苦しい想いに、今は浸っていたい。空から降る雪のような白い温もりに、今は凍えるように触れていたい。
その歌が指し示す先の世界を見たい。
「デビューしてからの3年間、大殺界だったんですよ。しかも9月からの3カ月間は大殺界中の大殺界でした。でも、来年からは開けていくと思う」と想いも語りつつ、ライブは中盤戦へ。
今回のツアーではカバー曲も演奏。選んだのが、徳永英明の『レイニーブルー』。クリスマスベルの音色に導かれ始まった演奏の上で、彼女は言葉のひと言ひと言へ浸るように歌いだした。哀愁と切なさを塗り重ねるように響く低音域の歌声が、触れた人たちの心にも悲しい雨を降らせてゆく。
切なさを引きずるように歌ったのが『ハナウタ』。優しく吹く歌声の風が、悲しみを抱いた気持ちさえ、そっと吹き消してゆくようだ。次第に光を集めるように、そよ吹く歌声は悲しみを少しずつ飛ばしてくれた。
その音色が流れたとたん、眠っていた蕾が花開きだした。光を抱いた優しい音色や歌声に乗せて届けた『花束』が、悲しみに浸った心に未来へ進む力を少しずつ授けてゆく。本当は、とても悲しい歌だ。でも、輝きや未来を求めるように歌う声に触れていたら、その歌が指し示す先の世界を見たい気持ちにもなっていた。
瀧川ありさ
この日の物語を光灯る未来へ繋げるように。
後半を飾ったのが、デビュー曲であり、アニメ「七つの大罪」のED曲に起用された『Season』。勢い良く駆ける演奏は、緩急多彩な表情を描きながら、触れた人たちの気持ちへ沸き上がる熱を注いでゆく。揺れる感情のままに熱唱する彼女の歌声に触発されフロアー中から右手が突き上がれば、熱い手拍子も飛び出していた。深く揺れる心模様を持って歌うその声に、ドラマを覚えずにいれなかった。続いて届けたのが、アニメ「七つの大罪 聖戦の予兆」のEDテーマ『色褪せない瞳』。ジワジワと沸き上がる想いを歌に乗せ響かせる楽曲とはいえ、この流れが嬉しいくらいに胸をはしゃがせた。何より、胸の内側に温かい勇気の明かりを灯す歌へ、ずっと触れていたい気分だった。
瀧川ありさ
歌始まりの『Journey』が授けてくれた、沸き立つ感情という翼。哀しみの中から僅かな希望をつかむように次第に熱を帯びる歌声と演奏は、会場中を少しずつ暖色な景色へ塗り変えてゆく。濡れた心が次第に晴れてゆくように『Gentle rain』が蒼な世界をどんどん鮮やかに彩りだす。痛く疼く気持ちへ、もっともっと震える刺激を与えてくれ。観客たちの熱い手拍子が合図だ。緩急揺れる感情を抱いた『銀河鉄道の降り方』を瀧川ありさは歌いだした。楽曲が進むにつれ、その歌声には、沸きだす力と情熱がまとわりだしていた。切ない歌とはいえ、そこには光を求める確かな光が宿っていた。
「いろんな人の人生を実感した3カ月のツアーでした。こうしてライブをやっていると、みなさんと心が通じているようで嬉しく思います」。本編最後を優しく彩ったのが、『night light』。これまでに会場に描き出したさまざまな想いや熱をすべて抱きしめるように、瀧川ありさは透き通る真っ直ぐな歌声を響かせ、この日の物語を光灯る未来へ繋げるように閉じていった。
瀧川ありさ
伸ばした熱狂の手は、確かに瀧川ありさと握手を交わしていた。
アンコールでは、1月11日より放送、アニメ「ドメスティックな彼女」のEDテーマに決定した新曲の『わがまま』を初披露。瀧川ありさ曰く「いろんな人の視点や感情が交錯する」『わがまま』は、ジワジワと溜め込んだ感情を、サビで真っ直ぐに解き放つナンバー。全体的に明るい表情を持ちながらも、その中に憂いを持った心模様なども見えてくるように、この歌が、アニメ作品とどのようにシンクロしているのかも楽しみだ。この楽曲は、3月6日にシングル発売が決定したことも、この日報告してくれた。
「みなさんと触れ合えていると心が動かされて嬉しいです。今年のマイナスなことを全部忘れて、いい気持ちだけを来年に持ち越しましょう」。サンタ帽をかぶり、ふたたび舞台に姿を現した瀧川ありさは、最後の最後に『Goodbye,I love you』をプレゼント。力強く駆ける演奏に乗せ飛び出した、熱い手拍子と掛け声。晴れた気持ちへ連れ出すように、彼女は開放的な歌声を響かせる。その歌声を、熱した気持ちと声に変え投げ返す満員の観客たち。互いに熱を求めあい、一緒に無邪気に青春模様を描き出す。瀧川ありさの無防備な笑顔がキラキラ輝いていて、とても眩しかった。それ以上に、野太い声を上げ、空高く右手を伸ばし続けるファンたちの興奮っぷりが最高だ。みんなが伸ばした熱狂の手は、確かに瀧川ありさと握手を交わしていた。
来年から瀧川ありさがどんな動きを描き出すか。まずは、『わがまま』と一緒に進もうか。
文=長澤智典 撮影=
瀧川ありさ
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