【連載】中島卓偉の勝手に城マニア
第76回「岩槻城(埼玉県)卓偉が行っ
たことある回数 4回」
埼玉県にはたくさんの城が残っているが、城の大きさ、そして江戸時代の埼玉周辺で(武蔵国)一番の面積を誇る城、それはズバリ岩槻城である。埼玉なら川越城かと思いきやずば抜けて岩槻城がでかい。いや、でかかった、そういう言い方になるだろう。現在の日本の城は明治時代に廃城になり、ほとんどが道路拡張や街の発展の為に埋め立てられて縮小してしまった。中には面影すらない城もある。この岩槻城も武蔵国で一番の城であったにも関わらず、主に新曲輪と鍛治曲輪を残すだけというイレギュラーな埋め立て、そして街開発を余儀なくされてしまった。通常は本丸を残し、外堀を埋め立てるというケースが多いが、岩槻城は城の端にあるこの二つの曲輪が残り、本丸や二の丸、大手などは現在住宅地になっている。住所を見ればわかるが、本丸1丁目から3丁目と書かれた地名になっているのでこの住所になってる場所が当時の岩槻城の中心である本丸だったということである。しかし住所が本丸ってすげえな。
とにかく広大な面積を誇る城だったのである。荒川に縁取られた湿地に浮かぶ島を上手く利用し、土を組んで本丸、二の丸、三の丸とし、全方向に堀の役目を果たす水堀という名の沼、この水堀の面積は日本最大との声もある。福岡城の大濠公園の堀もその名残があるが、確かに城全体にこのレベルの堀が巡らされていたと考えたらまさに日本最大の水城だったと言えるだろう。現在の岩槻城址公園に設置されている地図を見るとどれだけ形を変えて埋め立てられてしまったかがわかる。いや、もしかするとイマジンが出来ないほどの変わり様と言えるかもしれない。注目すべき点はやはり新曲輪と鍛治曲輪、そして現存している黒門と裏門だろう。
もっとマニアックな見学をお伝えすると、新曲輪には球場とさいたま市民会館いわつきが立っているが、この周りにも実は保存状態が素晴らしい土塁が残っている。ロケ中に勢い余って土塁の上を蜘蛛の巣にやられながら歩いた。その下にはこれまた物凄い面積の平地の曲輪の跡があり、見学した日は物凄い人数の爺様婆様がゲートボールをされていた。この高さのある土塁を下からも見たいと思い、土塁を下るとドクターマーチンのソールがどんぐりで滑って転び婆様集団に笑われた。この土塁の麓の木陰に爺様婆様はゴザを敷き、折りたたみ椅子と荷物を置いてゲートボールを楽しまれていたわけだが、ここをかき分けて踏み込まないとリアルに土塁が見えなかったもので、悪いなとは思いつつゴザを踏まずに土塁を見上げて一人で唸っていたら爺様に痰の絡んだ声で言われてしまった
「何だ!?つみは!?そこで何してんだ!?」
何だつみはってか?と思ったが、大きな声で「城の土塁を見てるんです、僕城マニアなんです」と返したら怪しまれずに済んだ。この爺様は良い人で元の本丸があった場所、大手門があった場所、市民会館の中にある豆腐ラーメンのことなどを詳しく教えてくれた。
「大手門があった場所でもねえのにあのラーメン屋さ、大手門って言うんだよ~ガハハ~!」
と言って入れ歯が外れていた。「とにかくこの辺は沼!とにかく沼だったんだよ!」と連呼。この沼の発音は「ヌメイッ!」であった。
この爺様が言うには当時の荒川はよく氾濫していたらしく、でもそれを見越して防波堤は敢えて作らず、土塁を高く設定していたこともあり、城内に水が入水してきても持ちこたえれたそうな。むしろ水城だけに水の幅が城内に広がって守りが頑丈になったとも言えた。雨が降った翌日などは城内に薄く霧がかかり、城が見えなくなるという幻想的なことがよく起きていたらしい。超COOLだ。確かに当時の平面図をよく見ると新曲輪と鍛治曲輪の城内側は水堀を土塁で遮ってないことがわかる。搦手に広がる湿地帯も水で埋まってしまえばよっぽど水堀が広くなるということまで計算されていたということ。素晴らしく粋な作りだ。現在アスレチックになっている公園も全部水堀の跡であり、まさに水に浮かぶ最強な城であったことがわかる。
当時の姿形を変えてしまっている岩槻城だが黒門と裏門が現存。これはでかい。どちらの門も明治時代に一度城下町に移築されて、昭和になってこの場所に戻ってきた。あまりに城が大きかったことと払い下げられた時のデータが乏しくどこに設置されていたのかがわかっていないがマニアの中ではおそらく黒門は本丸の門として、裏門は本丸の搦手門として使われていたのではないかと推測。黒門が大手門だったという説はマニアからするとデザイン的に違うと思う。まず大手門だったとしたら入口のタッパが低すぎることが言える。馬に乗ってでも潜れることが大手門条件だったりするのだ。どこに設置されていたにせよ、当時を物語る建造物が現存してることは嬉しい。
岩槻ご当地グルメとして、先ほど触れたさいたま市民会館いわつきの中にある大手門というラーメン屋さんの豆腐ラーメンをご紹介。このラーメンは埼玉県B級グルメでNo.1になっている。団長に教えてもらい早速混むことを予想して午前中の11時半に行ってみた。もう行列が出来ていた。シンプルな醤油ラーメンに大きめの豆腐一丁くらいがランダムに切ってド~ンと乗っかっており、それが辛くないあんかけになっている。そこにネギとわかめという組み合わせ。麺は縮れ麺で団長のビブラートと同じくらいの周波数で波打っている。これめちゃくちゃ美味い。全然B級グルメじゃない。是非食べていただきたい。店内には同じく岩槻出身のTRFのSAMさんのサインがあったが、出来ればNoGoDのファンの方々、彼らからもらったサインを無理やりこのラーメン屋に置いてもらうように頼み込んでくれ。
NoGoDは、そして団長は今後もやってくれると思う。演奏力も歌唱力はもちろんのことメンバーの人間性が素晴らしい。何よりライヴにおけるファンの方との信頼関係、コール&レスポンスも素晴らしい。ジャンルの滲む場所に立ち活動するバンドは長い目で見ると絶対に強い。悪魔をテーマにしたKISSがそうだったように、正義の味方を装うバンドやアーティストよりもカルチャー的な存在の方が長く愛してもらえるはず。それが人間の深さでありジャンルの奥行きなのだ。タモリさん、みうらじゅんさん、大槻ケンヂさん、その先はきっと団長が来る。そもそもNoGoDっていうバンド名が振り切っててとても良い。最高にアナーキーだ。
最後に、団長と対談させてもらった時に、2ショット撮影をするにあたり、彼はその場ですぐメイクをするという。じゃあ1時間くらい休憩にしましょうかと言ったら「3分で出来ます」と団長。いやいやそんな急いでやることないからゆっくりやってよと伝えたが「3分で出来ます!お待たせしません!すぐ仕上げますから!3分もらえれば大丈夫ですから!」と言う。するとすぐさまメイクを仕上げた団長。手際の良さも素晴らしかった。が!私は測っていた。団長の3分で出来ると言うメイクはその時、
4分8秒かかっていた。
あぁ 岩槻城 また訪れたい…。
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