【ポップしなないで インタビュー】
尖っていながらも
王道のポップが詰まっている
L→R かわむら(Dr)、かめがい(Vo&Key)
前作EP『Faster, POP! Kill! Kill!』より1年10カ月振りとなる新作ミニアルバム『CDはもう売れない』が完成。全5曲が詰め込まれた今作はかめがいの表情豊かな歌声はもちろん、作詞作曲を手掛けるかわむら(Dr)による耳に残りやすいフレーズ、詞世界に一層磨きが掛かった作品だ。
初登場のため、結成のいきさつを教えてください。
かわむら
かめがいが狭いコミュニティーで弾き語りをしているのを観て、一緒にやったら面白いのでは?と思って誘ったのがきっかけです。もともと付き合いも長く、気兼ねなく活動できそうだったのも大きいです。
活動を続ける中で何か変化はありましたか?
かわむら
かめがいの歌を特に重要視するようになりました。歌詞は自分が書いているのですが、よりかめがいのパーソナリティーを意識するようになったというか。表現として、かめがいと自分でしかできないものを作りたくなっていますね。
かめがい
自分では書くことのない歌詞や世界観なので表現の幅も広がって、どう歌いたいかというのがどんどん明確になってきました。“歌で表現する”ということへのこだわりが、すごく強くなりました。
逆に変わらないことは?
かわむら
ポップに、キャッチーにという部分は変わりません。しっかりとその時その時の思い出を彩り、忘れられない音楽でありたいと思っています。
かめがい
そうですね。あとは、言葉を大事にして伝えるというところは変わらないので、これからもぶれずにやっていきたいです。
ポップしなないでの楽曲はかめがいさんの表情豊かな歌声はもちろん、耳に残りやすいメロディーラインが特徴的ですよね。
かめがい
かっちりメロディーやリズムに沿わせるというより、伸び伸びとなるべくはみ出して歌うことを意識してます。もともとのメロディーは自分の中で鳴っているのですが、はみ出た結果、違う音が出ていることも多くあります。
かわむら
それに関連しますが、“かめがいが歌う”ということだけを考えています。コードもメロディーも言葉選びも、基本的にかめがいが振り回せる武器になるようなものを想定しています。あとは、曲ごとに情景が浮かぶようにしていますね。現実逃避ができる音楽を理想としているので。
楽曲はポップさが主軸にありながら、タメやリズムによる独特の空気感が面白いです。
かめがい
言葉が明確に聴こえるようにピアノやドラムと意識的にずらしたりすることもあるので、それがタメたりすることにつながっているんだと思います。
かわむら
かめがいはテクニックではなくて空気や柔らかさでピアノを弾いたり歌い上げたりする人だと思っているので、彼女の演奏によって自然とそうなっている部分はあると思いますね。
かめがいさんはかわむらさんが作ってくる楽曲についてはどのような感想をお持ちですか?
かめがい
私はかわむらの作る曲、書く歌詞のファンなので、送られてきたデモを聴く時には自分が歌うと思ってわくわくします。その後は弾き語りを録って送って、実際にスタジオで合わせながらアレンジを一緒に考えていますね。
かわむらさんは並行してTHIS IS JAPANとしても活動していますが、ポップしなないででやりたかったことはどんなことでしたか?
かわむら
THIS IS JAPANでは自分が思う一番カッコ良いバンドになれるよう一丸となってやっています。バンドというある意味古いフォーマットのロマンを追っている感じですね。ポップしなないでではもっとフレキシブルな存在を目指していて、チームでありながら個人個人の人間でやれることを何でもやっていきたいと思っています。その一番軸になるのが音楽であり、言葉であるのかなと。自分は完全に頭脳労働で、かめがいが身体を張ってくれています。上流と下流です。
2016年12月にリリースしたEP『Faster, POP! Kill! Kill!』は、今改めて振り返ってどのような作品になりましたか?
かわむら
今聴くとめちゃくちゃ荒削りですよね。このバンドで1曲目として作った曲の「エレ樫」も入っていますから。ただ、ポップしなないでの原点となるものが楽しめるので、その辺の事情も知りながら聴いてもらえるとより楽しいと思います。「ロケットダンサー」とか、今でも人気のある曲もありますね。
かめがい
もちろん当時は当時でこだわって作っていたのですが、詰めが甘いと思うところが多々ありますね。でも、『Faster, POP! Kill! Kill!』をきっかけに知ってもらい、今のライヴを楽しんでくれる人も多くいるので、根っこで表現したいものはちゃんと届いているなと思います。
今回10月24日にリリースするミニアルバム『CDはもう売れない』は前作から1年10カ月振りの作品ですが、いつ頃からCDをリリースしようという構想がありましたか?
かわむら
今年の3月か4月くらいですかね。音源も録り始めてました。もともと前回よりもスタイリッシュで完成したものを作りたかったので、自分たちの音楽と言葉をより印象的に聴かせたいとは思っていました。
“CDはもう売れない”というタイトルは現代ならではですが、それをあえてタイトルにしたのは?
かわむら
意識しなければいけないところでもあり、どうしようもない部分でもある。悲しい気もするし、どうでもいい気がする…そんな言葉だと思うんですよね。そういう言葉やフレーズの感覚を大事にしているので、この言葉を口に出した時、我々が今出すアルバムのタイトルとして一番しっくりすると思いました。なので、実は何かに警鐘を鳴らしているわけではなくて。もちろん売れてほしいですし。
かめがい
ほんと売れてほしいです。
ポエトリーリーディングから始まる「言うとおり、神さま」は《ステージの上なら全部出来るんだ》というこというフレーズもあり、音楽のことを書いた歌でもあるのかと思いました。
かわむら
もととなる出来事や情景があって、それをかめがいに演じてもらいたいと思ったのがきっかけで作った曲です。音楽を続けるとか辞めるとか、本当に身近で突然なので、より意識していきたいことが盛り込んである曲ですね。
EPの1曲目が《はじめましてこんにちは》と挨拶的に始まるのもインパクトがありますね。
かわむら
一番初めに人と出会うシーンを表現してもらいたくて、この始まりにしました。台詞を台詞らしく言うのって難しいと思いますが、かめがいのここの部分は気に入っています。
かめがい
印象的な始まりなので、なるべく聴く人にスッと入るようにナチュラルに言うことを意識しています。
「魔法使いのマキちゃん」はMVの再生回数が38万回を突破と、多くの人に届いているということに対してはどのような実感がありますか?
かわむら
映像が付くまではここまで多くの人に届く曲とは思っていなかったです。内向的で言い聞かすような歌なので。ただ、この曲が思ったより多くの人に共感してもらえたというのはとても嬉しいことでした。ポップしなないでは“超セカイ系”と銘打ってますが、この曲はまさにそうだと思います。サウンド的にはかなり攻めてる曲だと思ってたんですが、ちょっと安心しました。
かめがい
インターネットでの再生数という必ずしも信用はできないかたちではありますが、みなさまの目に触れて共感してもらえる部分が分かったのが大きかったです。あとは、盤が広まれば…
「bedroom sound system」はサイケデリックな印象を受ける一曲でした。
かめがい
冒頭から始まるリフのメロディーにどうやったら面白いコードを乗せられるのかを意識しました。
かわむら
自分としては、サビで転調したいという一心でできた曲なのかなと思っています。歌詞は偏った編成の中、サビの転調によってある意味無理矢理大衆的ポップに近付いたいびつさを言葉にしたようなイメージです。現実の生きにくさ、やりにくさ…そういった部分から救われるには?という。
ポップさや馴染みやすさなどの面で何か考えているところは?
かわむら
オマージュが多いので探してみてほしいですね。自分も面白がりながら曲を作っているので。あと、リフとメロディー、コードでどこまで独立した雰囲気を作りながらポップな曲を作れるかという部分をよく考えています。それに心に残る言葉を乗せていきたいですね。
そんなポップしなないでを自分たちの言葉で説明するとしたら?
かめがい
上手くいったりいかなかったりする人たちに無理せず聴いてもらえる音楽だと思います。
かわむら
とにかく現実って難しいし、面倒臭いし、納得できない部分が多いと思います。“もしかして自分は上手くいってないんじゃないか?”という時に聴いてもらいたいですね。サウンド的に言えば、必要最低限のピアノとドラム編成で言葉と寂しげなポップスを楽しめる音楽なので、ぜひ無駄のない音響の中で世界観を楽しんでください。
それぞれプレイヤーとして挑戦した部分はどのようなところでしたか?
かめがい
歌にどのくらい感情を乗せるのかというのが難しいところだったので、レコーディング中もかなり迷いました。でも、その結果、今の自分の歌がしっかり歌えたと思っています。
かわむら
速い曲が多いので、うるさくなりすぎないようにしました。あくまでリズムなので、キレは保ったまま、タイトに。
では、今作は出来上がってみていかがですか?
かわむら
自分で言いますが、尖っていながらも王道のポップが詰まっていると思います。でも、聴くのは恥ずかしくない。ポップス好き、サブカル好き、オルタナ好き、アニソン好き…全ての人が根底に持っている“キャッチーさ”への没入ができる一枚になってくれたらいいなと思っています。今作を出すことを発表した時、楽しみにしてくれる人がすごく多くて嬉しかったですね。前作から約1年半ですが、その時に比べて自分たちの音楽が多くの人に届いているんだという実感がありました。
かめがい
“ポップしなないでってこういうことを歌っているバンドなんだ”というのが伝わる一枚になったと思います。出来上がった音には自信がありますし、騙してでも聴いてもらいたいですね(笑)。
最後にリリース後の展望を教えてください。
かめがい
まずは今作をなるべく多くの人たちに届けて、ポップしなないでを知ってもらえるきっかけにしたいですね。
かわむら
制作とライヴ、手を緩めずにやっていきたいです。あくまで音楽の本質はライヴだと思っているので。曲はあるので、早めにみなさまの手元に届くものを作りたいですね。
取材:高良美咲
「言うとおり、神さま」MV
「魔法使いのマキちゃん」MV
「bedroom sound system」MV
アーティスト
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