【レポート】<MAJOR FORCE BE WITH
YOU - 30TH ANNIVERSARY ->「早く
帰りたいよね?」
■「台風で帰りが大変だもんね、みんな。
■早く帰りたいよね?」
余談だが。自分が趣味でDJを始めたとき、MAJOR FORCEの洗礼を受けている年上の知人に「DJやるならファッションもなんとかしなきゃねえ。クラブカルチャーとファッションは繋がってるから」と言われ、ファッションセンスを持ちあわせていない自分は“ぐぬぬぬ”と唇を噛み締めた。海外の大物DJなんて、ヨレヨレのTシャツ一枚なのに……日本のクラブシーンにおいて音楽とファッションを繋げたのは、紛れもなくMAJOR FORCEだと思う。
ライブ開始の1時間半前には既に、会場の入口階段には長蛇の列ができていた。イベント時には珍しくない光景だが、この日に限っては、一般客の目には異様な光景に映っただろう。というのも、当日は大型台風が関東を直撃。公共交通機関も早々と運転見合せを発表し、街じゅうに「店じまいムード」が漂っていたのだ。「日曜の夜、台風が来て、20時以降は電車がほぼ無い」という状況下で、好きなアーティストのために原宿に集まるというのは、やはり“変態”にしかできないことだ。
会場のラフォーレミュージアム原宿に繋がる階段の先には、10代〜20代がメインターゲットの可愛いブランド・オリーブ デ オリーブや、ナチュラル要素の強い普通女子の味方・ローリーズファームなどが並んでいる。キュートなファッションに身を包んだ戦闘体制の店員や客がうろうろする一方、洒落たキャップをかぶるイカついストリート系のメンズや、大ぶりなアクセサリーを身につけたデザイナー風の女性が行列に並んでおり、あまりのギャップにその空間にはたくさんの「?」が浮かんでいた。
「早く始めちゃおうか。だって、台風で帰りが大変だもんね、みんな。早く帰りたいよね?」
高木の言葉に、笑いが起こる。クラブミュージック界隈というのは、クールに気取ってナンボの世界だと思っていたのだが、高木は明らかに肩の力が抜けていて、「まあ何でもいいじゃん」という余裕を感じさせた。場数を踏んだからこそ、その境地に立てるのだ。
■「トシがいたずらでもしてんのかな。
■台風も来てるし。タイクーン・トッシュだけに」
2曲目「ACTION」でリズム隊にMELONを迎え、場がよりホットになった。演奏が終わって高木がトークを始めると、先ほどまで普通に使えていたマイクが、エフェクターをかけたような音になった。
「トシがいたずらでもしてんのかな。台風も来てるし。タイクーン・トッシュだけに」
高木が言うと、ファンから笑いが起こった。トシとは、元MAJOR FORCEのメンバーで、昨年その生涯を遂げた故・中西俊夫のことだ。彼はTYCOON TO$H(タイクーン・トッシュ)名義で活動していた。タイクーンとは英語で「実力者」や「大物」を意味するが、その響きはタイフーンとよく似ており、この晩に直撃した台風は本当に中西のいたずらだったのではないかと、つい繋がりを感じたくなってしまう。いや、中西のせいにすることで、台風が愛おしくも感じられるのだ。
「I WILL CALL U」は、前曲のポップさとは対照的な、しっとりして艶やかな曲調。ORCHIDSのハイトーンボイスやベース音、青色や緑色の自然的な照明。森の奥深くに連れて行かれたようなぼうっとした空気に、空間が満たされていく。縦揺れだったオーディエンスはゆったりした横揺れになり、妖艶なメロディを身体いっぱいに受けていた。
ライブ中盤、Group of Godsが登場。「KOKOKU」ではオレンジ色の光にステージが照らされ、うっとりする曲調で、静かな海のサンセットのような雰囲気に。自然と目に涙がにじむ、癒しのメロディだ。観客の横揺れも、波のようにゆったりと大きくなる。
「MOON HOTEL」で雰囲気が変わり、印象的な電子音が流れる。今度は照明が少し暗くなり、真夜中の海辺のような空気が漂う。スマートフォンの小さな光さえ申し訳なくなるような、壊してはいけないインストルメンタルでドープな空間が完成した。
終演時間になり、照明が明るくなる。「嵐だから早くお帰りください。続きを観たい方はどうぞここで」と高木が呼びかけるが、多くの人がその場を離れようとしなかった。再び暗転した空間の中で、アンコールを期待する手拍子が止む気配はない。
取材・文:MORISAMA
撮影: So Hasegawa / Red Bull Music Festival Tokyo 2018
日時:2018年9月30日(日)開場16:30/トークショー17:00/開演18:00
場所:東京・ラフォーレミュージアム原宿(原宿)
出演:Major Force(K.U.D.O+高木完+屋敷豪太)、藤原ヒロシ、SDP、森俊二、クニ杉本、田村玄一、momo、大西ツル、TOMOHIKO HEAVYLOOPER、EGO-WRAPPIN’、立花ハジメ、島武実、ORCHIDS
料金:前売 1,000 円
※未就学児は入場不可。小学生以下の方は保護者同伴のみご入場いただけます。
※小学生以下のお子様は耳を守るために必ず耳栓かイヤーマフを着用ください。
詳細/チケット購入:https://www.redbull.com/jp-ja/music/events/major-force
<RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2018>
日程:2018年9月22日(土)〜10月12日(金)
会場:都内各所(渋谷・新宿・上野など)
オフィシャルサイト: www.redbullmusic.com/tokyo #REDBULLMUSIC
※会場内での出演者及びライブの撮影・録音・録画等は禁止となります。
※客席を含む、会場内のオフィシャル映像及び写真は公開される場合がございます。
※実施内容は予告なく変更となる場合がございます。
※前売券は各イベントのウェブサイトからご購入いただけます。
※前売券が規定枚数に達した場合、当日券の販売はございません。
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