はあちゅうとしみけんの結婚:ロマン
優光連載114
おすすめ書籍:AV男優しみけん光り輝くクズでありたい/しみけん(扶桑社)
まず、はっきりさせておかなければならないのが、しみけんさんがAV男優だからという理由で職業差別的に二人を中傷することは許されないということ。はあちゅうさんに対して脅迫めいたことや、はあちゅうさんの家族や友人に対して誹謗中傷を送りつけることは許されないということです。これは当たり前の大前提ですよね。こういう目にあっていることに関しては、はあちゅうさんは本当に気の毒だし、許されないことだと思います。もし、二人に関するデマが飛ばされているなら、当然訴えてもいいと思います。
しかし、爆笑問題がラジオで語ったことは、こういったこととは全然違います。まず、太田さんははあちゅうさんについて語ったのではありません。太田さんは彼女について知識を持っていないために、特に言及することができず、しみけんさんについて語っているだけなのです。しみけんさんについて考えてみると、トップAV男優であり、その得意な個性と芸人的な面白さで知られる人物であり、その活動から考えるならば、あの扱いは不当なものでは全然なく、逆に「おいしい」と考えてもいいはずだったものです。また、ろくでなし子さん、ぱいぱいでか美さんの名前が出てきたのは、特にはあちゅうさんと一緒にしたわけではなく、単に連想ゲーム的にひらがな多めの変わった名前を連ねただけでしかないでしょう。
わかりますよ。結婚という一大イベントを外野から面白おかしくいじられるのはイヤなことです。だから、素直に「旦那の活動を考えると仕方がないことだけど、やっぱりイヤだなあ。冗談でも他の女の人と結婚したほうがよかったなんて言われたらこたえるな…。なんか悲しい」ぐらいに心情を吐露すれば、同情もあつまったことと思います。あくまで、そういう割りきれない気持ちの問題だったはずです。
それを、「太田さんはよく知らないものは全部まとめてキワモノ扱いする」と言って、ピントがずれた批判をするから、世間に反感をかってしまったわけです。そのトークで名前があがった、ろくでなし子さんやぱいぱいでか美さんに対しても、失礼であったわけだし、二人を下に見たわけではないと釈明しても、「どこからキワモノという言葉が出てきたのか? 二人の名前の印象で勝手に思ったのではないか?」という突っ込みを入れられるのは仕方がないことだと思います。
本人の釈明にある通り、嫌がらせがあってまいってるために、感情的に反応してしまって雑な文章を書いてしまった、単に誰であっても一緒にされていじられるのが嫌だったというのは、本当のことだと思います。ただ、あの二人ではなくて、浜崎あゆみさんでも嫌だったと言ってるけれど、浜崎さんだったらキワモノという言葉は出てこなかったと思うのです。そこには、無意識に二人に対する偏見が生じていた可能性を感じてしまいます。なんであれ、よく知らないと自分から言ってる人たちに対して、キワモノという言葉を出てくるのは変な話ではあるのです。
私は批判的な原稿を書いたので、彼女に嫌われても当たり前なので別にいいんですが、私と一緒にロマンポルシェ。というバンドをやっているだけで、彼女に関して何ら言及をしたことがない掟ポルシェさんが、悪口を言ってるから嫌いというふうに扱われるのはさすがにひどいと思うのです。
以前、この連載でオフィス北野問題について触れた回があるのですが、その内容に対する批判ツイートを水道橋博士がRTしたところ、それを引用RTしながら掟さんを中傷して「アングラ宴会芸」と評するツイートする人が出てきて、博士がさらにRT。それをさらに、はあちゅうさんがRTしたり、「悪口書いてPV取るアングラ宴会芸にみんな飽きてほしい。」と呼びかけたりしてたんですよね。しかし、アングラ宴会芸というのは掟さんのライブやDJでの芸風を中傷してるだけなので、はあちゅうさんが言ってることはトンチンカンでしかないのです。単に無実の掟さんを攻撃しただけになってしまいました。
このツイートの印象だけで調べることをせずに、掟さんが自分の悪口を言っていると思い込んだんだと思いますけど、アングラ宴会芸とか言ってたのは他人の誹謗中傷する際にのみ使用されている典型的なアカウントで、匿名アカウントによる誹謗中傷を批判している彼女が、匿名アカウントによる誹謗中傷を元に他人を攻撃していたらどうしようもないと思うのです。自分の言葉で批判的な人間に対して反論すればいいだけなのに、そんないい加減なものに乗っかって印象だけで攻撃するから、無関係な人間を叩いてしまうような事態に。
私ははあちゅうさんに対して批判的な意見を書いてますが、それはあくまで批評的なものであり悪口ではありません。物書きであるならば、漠然とした印象による悪口ではなく、ちゃんとした文章で内容に関して反論すべきなのだと思います。悪口は読みたくないというスタンスでやっているのだと思いますが、読まずに印象だけで反撃しようとしても、ただの悪口です。
ニコ生を見て、改めて思ったのは、はあちゅうさんは、自分の思ったような反応ではないものは全て自分に対する悪口だと解釈するということです。吉田豪さんと揉めた時だって、吉田さんの言ってるのは意見であって、はあちゅうさんを攻撃してるわけでもないし、あの時は世間を煽っていたわけではないと思います。あれが炎上っぽくなったのは、単にはあちゅうさんの意見が変だと思った人が単純に多かっただけで、吉田さんが炎上を煽ったわけではないですよ。まあ、そこに乗っかって叩きたいだけの人が、はあちゅうさんに嫌がらせめいたことをするので、はあちゅうさんが余計に頑なになってしまったんだと思うんですけど、批判と悪口や嫌がらせを一緒にしては駄目だと思うんですよ。自分も、理不尽な悪口を言われたり、延々と嫌がらせをされたりしたこともあるので気持ちはわかるのですが、やっぱり一緒にしては駄目なのです。
ニコ生で、個人を攻撃したりしない、会ったことのある人を悪く言わないと言ってましたが、それも考え方がおかしいと思います。仕事に関する批評は悪口ではないし、面識があろうがなかろうが意見を表明するのは攻撃ではないのです。物書きとしての基本的な考え方の訓練がなされてないんだと思います。
感情的に反応しやすく、基本的に対象に対して雑であり、批評というものの存在を理解できない、物書きとしては不向きな資質の人なのかもしれません。童貞いじりも、「なぜ早稲田だと童貞くさいのか?」「なぜ午後の紅茶を飲んでると童貞くさいのか?」といった疑問が浮かんでくるだけで、特にあるあるネタになってるわけでもなく、反応に困ります。ちなみに、私は早稲田中退で家でよく午後の紅茶を飲んでます。それはともかく、単に雑にいじってるだけだから、面白ければ味方になってくれるような中間層にも、そっぽを向かれてしまったというのはあると思います。童貞いじりで声高に叩いてる人は、はあちゅうさんが嫌いで、何でもいいから叩きたくてしようがなくて持ち出してきている人が大半だと思うのです。しかし、そういう層とは別に、雑にいじられたり、雑にいじってる様子を見てイラっとしてる人が沢山いるのも確かなのです。
はあちゅうさんはアイドルに向いている、アイドル性が高いという意見もあります。確かに、物書きとしては不向きな資質としてあげた部分も、アイドルであれば全てが「可愛い」という風に受け入れられる可能性が高いと私も思います。みんなに私を好きになってほしいという我儘も、アイドルなら可愛く思われるし、対象に対する雑さも愛すべきポンコツ性だと可愛く思われる。そういう節はアイドルの世界にあります。しゃべり方とか声もアイドル的な可愛さはありますよね。今の活動も書いているものより、本人の個人の魅力に支えられたサロン的なものが目立ってますし、そういう方向性に特化した方が支持が増えるのかもしれません。しかし、本人はプライドの高い人ですし、権威的な評価が欲しい人ですから、可愛いだけみたいに思われたくはないでしょうし、それはないんでしょうね。
https://books.rakuten.co.jp/rb/13241664/
https://books.rakuten.co.jp/rb/15176097/
『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』/ロマン優光(コア新書/コアマガジン)
http://books.rakuten.co.jp/rb/14537396/
『日本人の99.9%はバカ』(コア新書/コアマガジン刊)は紙では手に入りづらいかもしれませんが、電子書籍ですぐに買えます!
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
http://books.rakuten.co.jp/rb/13292302/
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