【連載】中島卓偉の勝手に城マニア
第72回「深大寺城(東京都)卓偉が行
ったことある回数 4回」
築城時期は不明。歴史では扇谷上杉氏の居城で、後に難波田氏が増築したとされる。しかしこの武将達の苗字、読み方は、おおがやつうえすぎ、そしてなんばた、である。格好良すぎだろ。関東の歴史には度々登場する扇谷上杉氏だが、築城時も北条氏にやられっぱなしだったようで、現在の形にしたのはやはり難波田氏なので、昭和の発掘調査で色々とわかった部分は難波田氏の時代の建築、そして縄張りと言えるだろう。ただ廃城になった時期も早い。1537年と言われているので戦国時代が濃くなってくるよりも前にすでに廃城となっていた。青春時代を過ごす前に、多感な時期を過ごす前に、身体中の毛が生え揃う前に、猥談で盛り上がる前に廃城、まさにこれからという時期に歴史から消えた城だったのだ。時期的には中世の平山城の典型的な作りと言える。
本丸の奥には搦手虎口が残る。そこを降りると中央道が走ってるのが見えるがその手前は深い空堀が発見出来る。ここには木の階段は設置されていないが下まで降りれるように道が残っている。堀も深い。日本の城は本丸が薄暗い城が割と多い。金沢城の本丸もまさにそれだ。二の丸の開け具合に対して、最後の砦という意味もあるのかひっそりとした雰囲気を持つ本丸が多い気がする。活動してんだかしてねえんだかわからないくらいひっそりと活動してる中島卓偉のようだ。いや、まさに。
本丸と二の丸の通路には土橋が架けられているが当時は私のウエストくらいもっと細い土橋だったそうだ。両サイドは空堀で、植物公園側の空堀はそのまま竪堀になって丘を切ってそのまま下に落ちている。大きな排水溝の意味もあったかもしれないし、当時は水を塞き止めて雨水で水堀にしていたかもしれない。
二の丸から見た本丸の土塁、そして空堀も圧巻である。木の枝が伸び過ぎてクネクネと折れ曲がるデザインになった土塁や空堀の魅力が若干半減してるのが悔しい。この空堀を左に見て二の丸の奥まで行くと、土塁が切れている部分がある。ここが二の丸から先にあるもう一つの腰曲輪へ行く動線だ。現在はここから先が金網になっており、80年代の青春映画のような俺たちはあの夏、あの金網を超えることが出来なかった的な金網になっており、その金網の先は民家が立っている。腰曲輪だった場所の土地を買い、腰曲輪だった場所に家を建てて住む、その気持ちを住民にインタビューしたかったがピンポンダッシュくらいにしてやめておこうと決める。いやいやそんなことはしないが城マニアとして城内に土地を持つって羨ましいのだ。
発掘でわかったことだが二の丸の先も実は三の丸が存在したことがわかっており、三の丸の先にも大きな堀が城を縁取っていたことが判明している。大手はこの三の丸側にあったと言える。城の外を全部WOO~WOO~WOO~歩いていこう~して周ったが中央道のガード下をよく見ると土塁らしき物の上に建てらていることがわかる。こういうとこは見逃したくない。私のファンは私が伝えたかったことを19年間ほぼ完全に見逃しているというのに。
城の隣に、いわゆる二の丸の外にテニスコートがあるのだがこの入り口からテニスコートに向かう道こそ実は空堀の跡である。両サイドに高い土が盛ってあり、虎口のようにL字に曲がっている。虎口のようにではなくまさに虎口の跡である、ここも見逃せない。二の丸の外からびっしりと民家が建てられているので三の丸はイマジンするしかないのだが三の丸の先にある発掘された大手空堀の場所を考えると、二の丸のほぼ倍の広さがあったことがわかる。これは凄い。こんなに広かったの?と脱帽。卓偉って誰も知らないレコードそんなに出してたの?という驚きと近いニュアンスだ。深大寺城の搦手は長く大きなスペースと堀の意味を持つ湿地帯、そこに突き出ていた丘に城を築き、崖から崖までを掘りで繋ぎ、両サイドは竪堀を施す。なんとも粋な城だ。中世の城ほどセンスがあり考えられた城はないと思う。
「二ついきますか…」と言われたので
「ええ、二ついかせていただきます」と小さく返答してすぐ
「ダメですか…?」と聞き返したら、
「ありがたいです…」とのお言葉。
先に十割蕎麦が来て、
「もう一つは時間差でお持ちいたしましょうか?」と聞かれたが
「いや、同時でお願いします、いや、まだ茹でてないならすぐ持ってきていただけますか?」と返答。
「かしこまりました」と店員さん。そのまま厨房に向かって鼻にかかったミッドハイが効いた声で「大丈夫だって~」と大声。それ、聞こえないように言わにゃいかんやつやろ。
このコラムを執筆する為4度目の城の見学の日、朝から土砂降りの雨が降っていた。当然ながら城には誰もいない。これは深大寺城を独り占めだなと思いきや、植物公園の道をチャリで滑って転びそうになっているおじさんがいた。警備員なのか単なる近所の親父なのかわからなかったが、このおじさんはチャリで転びそうになるとすぐさまチャリをほっぽり、自分だけ「お~とっと~!」と言って歌舞伎の五右衛門みたいなアクションをとって、またチャリを起こすということをやっていた。最初に私と通り過ぎた時も、
「今日のところは滑りますから!今日のところはね!気をつけてくださいね!」
とおじさん。今日のところはってなんじゃい?と思った。腰曲輪から下を覗くとまた「お~とっと~!」とやっている。誰もいなくてフォローしようがない状態だった。帰りに植物園の正門から抜けようとしたところ、二の丸の坂からチャリで滑りながら降りてきて、見事にチャリをほっぽり、「お~とっと~!」とやっていた。公衆トイレの前で雨宿りしていたお婆さん二人に対して、
「今日のところは滑りますから!今日のところはね!気をつけてくださいね!」
とおじさん。
その時、お婆さん二人は言った。
お婆さん1.「気をつけるってのはあなたの方でしょ?」
お婆さん2.「そーよ!そーよ!」
お婆さん1.「だいたいこんな雨の中自転車乗って坂から降りてくるなんてどういう神経してんのよ、危なっかしいわね」
お婆さん2.「そーよ!そーよ!」
おじさん.「ハハハ~!」
お婆さん1.「何笑ってんのよ?そもそも、その、今日のところはって言いかた、今日のところはっていう使い方?その意味がわけわからないんだけど」
お婆さん2.「そーよ!そーよ!」
おじさん.「まあそうですね、今日のところはね!今日のところは自転車にはまたがらずってことにしましょうかね!今日のところはね!」
お婆さん1.「そう!それ!その使い方だったらまだわかるのよ」
お婆さん2.「そーよ!そーよ!」
おじさん.「まあでも今日はこの雨で相当滑りますから、気をつけてくださいね!今日のところはね!」
お婆さん1.お婆さん2.「だ~か~ら~!!!!!!!!???????」
死ぬかと思った。
あぁ 深大寺城、また訪れたい…。
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