ストレイテナー
- the Homeground 第31回 -
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“こうなりたい!”っていう意欲だけで20年経っていた
ストレイテナーをナカヤマさんとふたりで結成した時にホームにしていたライヴハウスが八王子のビートランドとうかがったのですが、ホリエさんにとっての八王子ビートランドはどういう場所ですか?
原点ですね。高校時代にバンドを始めたんですけど、地元の長崎のライヴハウスはなんと言うか、小屋を貸してるだけみたいな感じで。ライヴハウス側からのブッキングとかはあまりやってない、バンドが企画を持ち込んで借りているようなライヴハウスだったんです。上京して八王子ビートランドのブッキングの人と仲良くなって、“ビートランドでやりたい”って自分たちからアピールしたら“まだ早ぇよ”って言われましたけどね(笑)。それから先輩のバンドを紹介してもらって一緒にやれるようになったんです。
初めて出演した時のライヴは覚えていますか?
最初はお客さんもライヴに出てるバンドの人か、その友達みたいな。自分たちはお客さんはおろか、友達も呼んでなかったから…なんか友達を呼ぶのが恥ずかしくて。そういうひねくれたところがありましたね。
ビートランドの方はストレイテナーのどういったところを気にかけてくれていたのですか?
十数年経ってから聞いたんですけど、そのブッキングの人が一発で僕の歌声に惚れたらしくて。同い年だったんですけど。僕らがまだ全然下手くそだったのに、当時のビートランドをホームにしてたバンドの中で一番人気があったEAST WOMANっていう先輩に僕らを紹介してくれて、デモテープを聴かせてくれたのかな? ビートランドはリハーサルスタジオも兼ねてたんで、ある日リハスタに入ってた時にEAST WOMANのメンバーが挨拶に来てくれたんです。今度対バンしましょうって。その頃は街のライヴハウスの先輩ってだけでスターみたいに思ってたから、“うわぁ!”ってなって(笑)。一旦解散しちゃったんですけど、最近再結成してライヴをやってて、交流は未だに続いてますね。
当時のライヴについてよく覚えていることがあれば教えてください。
音楽性はそんなに変わってないんですけど、いろいろ分からないことだらけでしたね。マイクってたまに漏電してて感電するんですよ。スタッフの人に言えばアースをとってくれるんですけど、何も知らないからずっと感電しながら歌ってたんです(笑)。マイクに口が付いたらバチン!ってなるからビクビクしてて。今だったらローディーに“ちょっと痛てぇんだけど。ちゃんとやっとけよ”みたいに不機嫌そうな感じで言えるんですけど(笑)。
(笑)。当時の八王子のシーンはどのような感じでした?
バンドそれぞれのやってることはバラバラだったんですけど、同じ歳くらいのバンドだとメロコアとかスカパンクとかが多くて。あと、ミクスチャー系でマキシマム ザ ホルモンがいたりとか。先輩だと長髪のハードロックもいたし、ガチガチのリーゼントでコントみたいなことをやってるロカビリーバンドもいましたね。さっき話したEAST WOMANは飾らず等身大な人たちで、古着のTシャツにジーパンでWEEZERとかに通じるパワーポップ的な音楽をやってました。そういういろんなバンドが集まったイベントに一番後輩で呼ばれたりしてましたね。
渋谷、新宿、下北沢などにも出ていたと思うのですが、八王子ではバンドとの交流も多かったということですか?
下北のライヴハウスのブッキングの日とかは殺伐としてましたね(笑)。自分たちより大人が多かったし、バンド同士仲良くしよう!っていう感じもあんまりなかったかな。八王子は八王子の中で、狭いから名前だけでも見て知ってるバンドがいたし、実際にライヴハウスで会うと“あ、君たちがストレイテナーか”みたいな出会いとかもあったり。
その中で特にお世話になった人は?
やっぱりビートランドのブッキングの人とPAさん。PAさんはバンドマンだったんですけど、“どうやったら他のバンドに負けない音を出せるか?”ってギターアンプとベースアンプをつないで2台から出してくれたりとか、僕らがやってくださいって言わなくてもやってくれた。
では、ライヴハウスで得たことって?
バンドのつながりはそこで生まれたと思いますね。特に僕とナカヤマくんは社交的ではなかったから(笑)。向こうから声をかけてくれる人たちがいたので、ライヴハウスでやってて良かったっていうか。最初はビートランドのリハスタの受付にデモテープを置いたりもしてたんで、リハーサルに来るバンドは持って帰って聴いたりしてくれてたのかな? もしかしたらそれを持って帰って上から録音…とかあるかもしれないですけど(笑)。でも、マキシマムザ亮君が、当時はまだホルモンに加入する前ですけど、そのテープを持って帰って未だに持ってるって言ってましたね。
ふたりでやってた頃があって、バンドでやり始めたらだいぶ印象も変わったのではないですか?
曲の良さを殺してた時代もありましたからね(笑)。ハイテンションだけが売りみたいな。スタジオで一発録りしたカセットとかはガレージロックみたいな感じだったし、全然ブルースとか通ってないのにブルースっぽい曲を作ったりとか(笑)。
インディーズの時から自主でリリースをしたりしていましたよね。
カセットテープをHIGH LINE RECORDSで販売したのが最初で。そのカセットテープも、デビューには至らなかったんですけど、育成扱いでお世話になってたレコード会社でレコーディングした音源を使わせてもらって。でも、途中から新しい曲はもうリハーサルスタジオの吊ってあるマイクで録って、ミキサーの下にあるカセットデッキで一発録りしたやつを200円とかで売ってましたね。
今思えば若かったなぁと思うエピソードはありますか?
若い頃はお金もなかったし、お酒もあんまり飲んでなかったんですけど…EAST WOMANが渋谷でやったイベントに呼んでもらって、その打ち上げで出演バンドがいっぱいいる中でウーロンハイをピッチャーで飲んで号泣した話を未だに会うと言われますね。それまであんま出さなかったんですけど、その時に急に先輩への感謝の気持ちがダーッて溢れ出して。先輩だからあれなんですけど、見た目が冴えないというか…(笑)。ギターの人の髪型がその当時はあまりいなかった、90年代の吉田栄作みたいな刈り上げのセンター分けだったんですね。号泣しながら“なんでセンター分けなんだよ~!”って(笑)。
(笑)。そんないろいろなこともありつつ、ナカヤマさんとふたりで結成してから20周年を迎えたわけですけど、当時は20年も続くと思ってました?
いや、全然。20年先とかもう考えてなかった…“こうなりたい!”っていう意欲だけでしたよね。気付いたら“人生の半分が経ってたな”っていう(笑)。
人生の半分、バンドをやってるというのは大きな出来事ですよね。
そこに驚きはありますけどね。“こんな人生もあるんだ”っていう。とはいえ、中学生くらいの頃から“絶対にプロのミュージシャンになるぞ!”って思ってたから、その道をずっと真っ直ぐに来てるなと実感してますけど。
現在はその夢が叶っているという感じですか?
そうですね。18歳で東京に出てきて最初に観たライヴが、渋谷CLUB QUATTROでのイギリスのMansunっていうバンドだったんですけど、圧倒的すぎちゃって。それで“こうなりたい!”っていうのが自分の夢になって。Mansunは何年かで解散しちゃったんですけど…。例えばMansunと『FUJI ROCK FESTIVAL』で一緒になるとかそういうことがあったら、またそこで夢が叶うみたいなことがあったかもしれないですけど、ひとつはやっぱ渋谷CLUB QUATTROで、ストレイテナーでライヴをやるっていうのが夢だったんです。それが叶ってからの夢っていうのがあまりないんだけど…でも、あれから15年くらい経つのかな。
今ではストレイテナーに影響を受けたバンドもいると思うのですが。
ありますね。純粋に嬉しいし、まったく違うテイストのバンドもいて面白いです。ミクスチャーをやってる人が“ストレイテナーのあのアルバムめちゃくちゃ聴いてて、それ以外は洋楽しか聴いてません”って言ってくれたりとか。僕らっぽいバンドって少なくて、まったく違う音楽性だったり観せ方をするバンドが意外に“聴いてました”って言ってくれることが多い。
では、最後に当時の自分に声を掛けるとしたら何と言ってあげたいですか?
一番言われて嬉しいのは“曲がいいね”だったと思います。たぶん曲は良かったし(笑)。でも、それを伝えるほどの演奏力がなかったんですけど…ブッキングの人は歌声がいいって言ってくれてたから、僕は曲がいいってことを言ってあげられたらいいかなって。
アーティスト
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