【そこに鳴る インタビュー】
誰かの人生を変えてしまえるような
衝撃を与えられる作品になればいい
L→R 藤原美咲(Ba&Vo)、鈴木重厚(Gu&Vo)
過去作ではさまざまなスタイルに挑戦してきた彼らだが、4thミニアルバム『ゼロ』は自らの原点に立ち返り、初期衝動に忠実なサウンドを躊躇なく露呈。バンドのポテンシャルをダメ押しするかのような意欲作に仕上がっている。
ミニアルバム『ゼロ』を聴かせてもらって、そこに鳴るの楽曲制作、とりわけアレンジに関して興味を持ちました。M1「掌で踊る」からしてA→B→サビの構成でサビはキャッチーでJ-ROCKらしいのですが、バンドサウンドは歌メロのバッキングではなく、メロディーと拮抗、場合によってはメロディーを超越しているような印象がありますよね?
鈴木
楽曲は基本的にはオケから作るのですが、コード進行やメロディーではなく、サウンドの全体像みたいなものが頭で流れるまで待つみたいな感じですね。「掌で踊る」なんかは車内でNUMBER GIRLを聴いていたらイントロからサビくらいまでを思い付きまして。そこからヴォイスメモに口で♪ダーッダッダカダドンドンドカドカ〜みたいな擬音で録音しておいて、あとから楽器に興すみたいな感じで。だから、作曲して編曲するというよりは、音のイメージをそのままバンドにするというか。少なくともあとからサウンドを肉付けするというイメージで作ったことはないですね。
例えば、ギターの演奏が目まぐるしく変化していくのはまだ分かるというか、サウンドの彩りとして理解できるんですが、そこに鳴るの場合はリズム隊も単にリズムをキープするだけでなく、さまざまに変化していきますよね? 変な話、こうしたアプローチに対して躊躇はないんでしょうか?
鈴木
躊躇はないです。躊躇する必要性も感じませんし、“通常は躊躇するだろうな”という前提に共感できません。僕はもともとかなりの音痴だったりして音感があんまりないんですけど、アレンジを決める際に響きとかもそれほど意識したことがなくて。意識したこともあるんですが、肌に合わなくて。ギターとベースとドラムのフレーズを考える際、それぞれの兼ね合いよりも、“カッコ良いフレーズを同時に鳴らしたらめっちゃカッコ良いフレーズになるかな? じゃあ、めっちゃカッコ良いフレーズとカッコ良いフレーズを同時に鳴らしたらめちゃくちゃカッコ良いすごいフレーズになる!”というシンプルな思考です(笑)。
なるほど(笑)。M2「Less Than Zero」は4つ打ちですが、これもまた単純にディスコビートが続くわけではなく、そこに鳴る流と言えるダンスチューンですよね。
鈴木
結果的に4つ打ちにはなりましたが、もともとそんなつもりはなくて。BPM140なんですが、僕のテンション的には280のつもりなんで、それに合わせてドラムを打ち込んでたら大変なことになったんで悲しくも140になりまして…。そこから合うドラムを考えてたら、結果4つ打ちになりました。何も考えずに楽器屋で適当に試奏する時に弾くような気持ちで、サッとギターを弾いて出てきたのが冒頭のフレーズなんですが、それが凛として時雨みたいで。いつもだったらすぐボツにしてたんですけど、今回のテーマのこともあるんで“ここから広げてみようかな”と思いまして。
今回のテーマというのは?
鈴木
自分のセンスのもっともピュアな部分を作為なしに出力しようと。5年くらい前はそれを当たり前にやってたんですが、いつの間にか“こんな曲を作ろう”みたいな意志のもとで制作してたんで。それは悪いことではないと思うんですけど、求められているのはそういう部分じゃないなと思いまして、“どれだけ自然に無作為にできるか?”をポイントにしました。
アルバムタイトルの“ゼロ”もそうしたテーマから出てきたものでしょうか?
藤原
“飾らない”や“ありのまま”という意味と、“原点回帰”という言葉がぴったり当てはまるアルバムだと思うので、“原点=ゼロ”というタイトルにしました。あと、もうひとつ、“始まり”という意味で“0=ゼロ”の一枚になればいいなとも思いました。私たちが凛として時雨に出会って人生を変えられたように、誰かの人生を変えてしまえるような衝撃を与えられる作品になればいいなと思っています。
その観点で言うとM5「physical destrudo」辺りは凛として時雨と言うよりも、その凛として時雨がリスペクトするLUNA SEA的な匂いを感じますよね。
鈴木
これはデモ音源時代の曲で、それこそ何も考えてなかったんだと思います。わりとストレートなギターロックを作りたいなと思って作った覚えがあるんですが、今聴くと全然ストレートじゃないんですよね。当時はド直球ストレートなつもりでした。LUNA SEAっぽいと言われて“あ、確かにそうかも”となる感じです。
一方、M3「表裏一体」はエレクトロなループミュージックといった印象で、エレピ、弦楽的な音、スクラッチノイズ的な音と外音が多く、情報量の多いサウンドですね。
鈴木
初めてこういう3ピースの範疇を超えて作ったので、はしゃいでしまいました(苦笑)。“わぁ! こんな音出るんや! すごーい!”みたいなことを積み重ねたらそうなっていましたね。
その意味での“ゼロ”でもあるのかもしれませんね。さて、レコ発ツアーも決まっていますが、個人的には本作のサウンドが生演奏で聴けるのはとても楽しみですよ。
鈴木
頑張ります!
藤原
滾ってます!(笑) 実は今回、初めて自分たちでツアーを組みました。前回までは対バンのオファー以外はほとんど全てレーベルにお願いしていたのですが、ツアーのコンセプトだったり、行きたい場所だったり、組みたい対バンだったり、どんどん自分たちでやりたいことが増えてきまして。ライヴハウスに電話をして、ツアーの相談をして、スケジュールを組んで、バンドにオファーをして…と、実際にやってみるとツアーを組むのはこんなにも大変なのだなと、恥ずかしながら初めて身をもって感じて。なので、どの日程も今まで以上に幾千の想いがこもった愛しいツアーが組めました。過去最高を更新できるよう、しっかりと準備していきたいと思います。このツアーが終わった頃、そこに鳴るがどんなバンドになっているか、今からとても楽しみです。
取材:帆苅智之
ミニアルバム『ゼロ』トレーラー
アーティスト
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