【家入レオ インタビュー】
発信者と受信者、
両方の目線が持てるようになった
家入レオ
どの曲にも“時間”が関係していること、そして“時間の交換は最上級の愛情表現”という想いから“TIME”と名付けられたニューアルバム。彼女が注いだ時間、あなたがそこに浸る時間――つながりを深めるひと時がここに。
メジャーデビュー5周年を経て、1年7カ月振りのオリジナルアルバムですが、今作はどのような姿勢で制作に臨んだのでしょうか?
今回はこれまでと違って最初にスケッチを色濃く描くという、初めてに近いかたちで作っていきました。例えば“ライヴでお客さんにこんな顔になってほしい”とか“こういう驚きを届けたい”とか。で、そのイメージをもとに曲作りをしたり、手持ちのものから選んだり。“いろんな家入レオを届けたい。家入レオで新しい何かがやりたい”という気持ちが大きかったんです。あと、ドラマ(『新宿セブン』)に出演させてもらったことが自分の中ではすごく大きくて。今までは発信者としての目線が強かったんですけど、台本を読んで演技をすると客観的にいろんなことが見えてきて。そうやって発信者と受信者の両方の目線が持てるようになったことで、ふたつの目線でアルバムが作れたんです。だから、自分ひとりというよりはいろんな人のパワーを借りて、その今までの出会いをより音楽にするという感じでした。
客観性を持ったことでの面白さや発見はありましたか?
客観性かどうかは分からないですけど、面白いと思ったことはあります。「TOKYO」とか自分で作詞作曲しているものは自分の中から絞り出しているものだから、歌う時は感覚的に歌うんです。でも、提供してもらった楽曲だと自分のDNAがまったくないから歌唱でどう爪跡を残そうかっていうので、レコーディングの日までかなり自分で練るんですね。それで実際に録ったものを比較して聴いてみると、自分が書いた楽曲よりも提供された楽曲のほうが、むしろ自分らしさが出ているんです。そこが面白かったですね、すごく。
今、お話に出た「TOKYO」はすごく斬新な楽曲でした。
ありがとうございます。この楽曲は一番最後に作ったもので、今の自分のマインドを全て表しています。私の最近の曲作りは日常のアクションからボイスメモにガーッと歌ったものに、あとからコードを付けてアレンジャーさんに渡すので、本当に心の、身体の、魂の奥から出てきた歌なんですよね。でも、みんなの想いも重ねてほしいので、踊れる要素も入れて。サウンド面ではサザンオールスターズの影響とかもありますね。
スカっぽいリズムと歌謡曲的なメロディーの融合、楽しいです! あと、言葉を遊びをすごくしてますよね。“賭博場”とか“江戸の男”とか、今までだったら使わない言葉でしょうし。
ある意味、変化というか。この1年7カ月でひとりのアーティストとしても、ひとりの人間としても、ひとりの女性としてもいろんなことがあって。で、生きている環境が変わってくると、使う言葉も変わってくるんですよね。それをちゃんと残せるというのは大事だなって、今回のアルバムを作ってすごく思いました。そう、“TOKYO”ってタイトルも、なぜ英文字表記にしたかと言うと、東京という街ってアトラクションに近いと思ったからなんです。日々いろんなドラマが起きるし、何か起きたらそこからの加速感が半端ないんで、そういうことも含めて。あと、これも新しい感覚だと思ったんですけど、最近は苦しいことがあるとワクワクするようになっちゃって(笑)。苦しすぎて俯瞰しちゃってるんですよね、“どうこの苦しみを味わい尽くそうか?”じゃないけど。でも、そうすることによって立ち上がれる。前は幸せであることがすごく怖かった…“次、どんな悲しみが来るのかな?”と思ってたんですけど、良いことと悪いことの繰り返しなんだったら目の前のことを味わい尽くせばいいじゃん!って思えるようになって。だからこそ、ちょっとディープなアクションが自分の日常に起こった時も、こういう言葉遊び的な感じで書けるようになったんだと思います。「微熱」の制作過程も面白かったですね。まずプロットを作曲してくださった本間昭光さんに送ったら、それが歌詞だと思ってメロディーを付けて返してくれたんです。いつもはプロットからメロディーに合わせて歌詞にしていく作業だから、削られてしまう想いがあるんですけど、詞先のかたちになったのでそういうのがひとつもこぼれずに入っていて。これは制作の初期のものなんですけど、タイトルを付ける時にちょっと自分の心情の変化もあって…“恋は麻疹”と言うけど、“微熱”って付けました。
今作は尾崎雄貴くんとの出会いも大きかったのでは? 今までにない新しいものを家入レオの世界に持ってきたというか。
そう思います。同世代なんですけど、歌詞と曲が届くたびに悔しくて(笑)。絶妙ですよね。「パパの時計」なんて映画を観ているようだし。尾崎さんはすごく少女的なところがあって、私の歌声には少年性があるから、そこがいい感じにマッチングしたんだろうなと思います。
尾崎くんの楽曲に顕著に表れている気がするのですが、レオさん、声を楽器としても使えるようになっていますよね。
そうなんです。“私”を主張しなくなったというのはすごくあって。「ありきたりですが」も正確さよりも雰囲気重視になっていますし。
言ってしまえば、この曲はフォークソングですよね。歌詞もですます調だったりしますし。
はい。家入レオに《君とのごはんが恋しくて》って書く人なんて、杉山勝彦さん以外にいないと思います(笑)。アレンジに関しては坂本昌之さんに“四畳半をイメージしてください”とお願いしました。
「恋のはじまり」のソロバージョンもポイントですね。
私が純粋に友達として、大原櫻子と藤原さくらのことが大好きで作った楽曲なので、ひとりで歌うのは結構恥かしかったんです。“ここは絶対に櫻子”“ここはさくらに”って歌振りを考えるのが楽しかった作品ですし。でも、“レオちゃんのソロバージョンも聴いてみたい!”という声をいただいたので。
ラストに収められている「大事なものすべて」は、ライヴに集う人たちが一番いい顔をしている画も浮かびます。
そうなんですよ! ほんと、レコーディングのマイクの向こう側にみんなが観えていて。早く会いたい!!
ツアーも決まりましたしね。今までと違うレオさん、それぞれが好きだった今までのレオさん、いろいろなレオさんに会えそう。
あ、その言葉いいですね。そう、それぞれ好きな私があってほしい。「TOKYO」を歌う私、“もう恋なんて、愛なんて”って言ってる私もいれば、「微熱」で“片思いで切ない”って言ってる私もいる…どれも私なので。そして、ちゃんと歌を、この『TIME』を届けたいので…いろんな人の力を借りて、いいライヴにしたいです。
取材:竹内美保
アルバム『TIME』トレイラー
「春風」Short Film
アーティスト
編集部おすすめ インタビュー
編集部おすすめ ライブレポート
-
【家入レオ ライヴレポート】 『家入レオ 7th Live Tour 2019 ~DUO~』 2019年7月27日 at 幕張メッセ国際展示場9~10ホール
2019.07.30
-
【家入レオ ライヴレポート】 『家入レオ 6th Live Tour 2018 ~TIME~』 2018年7月1日 at 東京国際フォーラム ホールA
2018.07.06
-
【家入レオ】 『5th Anniversary Live at Zepp』 2017年9月6日 at Zepp DiverCity Tokyo
2017.09.08
-
【家入レオ】『5th Anniversary Live at 日本武道館』2017年4月30日 at 日本武道館
2017.05.06
-
【家入レオ】『5th LIVE Tour~WE|ME~』2016年12月10日 at 国際フォーラムA
2016.12.14
おすすめ記事
-
『OKMusic』サービス終了のお知らせ
2024.02.20 11:30
-
音楽ファンの声、エールを募集! music UP's/OKMusic特別企画 『Power To The Music』 【vol.89】公開
2024.02.20 10:00
-
今年でデビュー50周年の THE ALFEEが開催する、 春の全国ツアー神奈川公演の チケット販売がいよいよ開始!
2024.02.13 18:00
-
音楽ファンの声、エールを募集! music UP's/OKMusic特別企画 『Power To The Music』 【vol.88】公開
2024.01.20 10:00
-
宇多田ヒカル、 初のベストアルバム 『SCIENCE FICTION』発売決定& 全国ツアーの詳細を発表
2024.01.15 11:00
人気
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第1回 『自己紹介を。』 -
2014.12.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第3回 『魔法の言葉は在るということ、を。』 -
2015.02.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第2回 『忘れられていることを。』 -
2015.01.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第16回 『巡り合いを。』 -
2016.03.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第5回 『新年度を。』 -
2015.04.20 00:00