“段ボール”を語ったら見えてきた、
日本随一のコミックバンド・四星球の
精神性
さて、明けて2018年のファースト・アクションは、1月31日リリースの『鋼鉄の段ボーラーまさゆきe.p.』。四星球と言えば段ボール(で作ったネタ用小道具)ということがロックファンにすっかり浸透した現在だが、その段ボール小道具作りを一手に担っているギターのまさやんを主役にしたこの曲が、なぜ新しい作品の表題曲になったのかを訊いたのが、以下のテキストです。それの前に四星球の2017年について、それのあとに四星球の2018年についても、じっくり訊いております。
あと、本作について二つ補足。初回限定盤には、2017年9月3日に前述の『OTODAMA』でトリを務めた時のライブの模様が、サウンドチェックも含めて丸々入った映像作品が付いています。「フェスの出演者」の範疇を、ちょっとどうかと思うほど踏み越えた超特濃なこのライブ、放送などは一切なかったし今後もないと思われるので、ここで入手することをお勧めします。
それから、本作、「7曲入りでEPってどういうこと? それミニ・アルバムでは?」という疑問をはらんだ作品ですが、それも含めてこの曲順、この内容であることが、聴けばわかります。
2017年は「錆びないようにやったなあ」という感じですかね
で、このシングルは、そういう1年が終わって新しい1年の最初に、主役のスポットライトを当ててもらったなあ、みたいな感じで。そうですね、僕はすごく晴れやかな気持ちで2018年を迎えることができました。
やっぱり、笑い声の大きさだけやなくて、笑い声の色みたいなんが違うじゃないですか? フェスで、笑い声の大きさは一緒やとしても、「あ、ほんわかした笑い声やな」という日もあれば、「うわ、とがった笑い声やな」っていう日もあるやないですか? どの気持ちよさも知ってるんで、「あ、今日はこういう笑い声を聴かしてくれる場所やな」と思ったら、そこにめがけて放りますし。そういうおもしろさを、2017年は感じました。
っていうのはやっぱり、メンバーそれぞれがそれぞれ追われているところもあった、と思ってて。曲を作るのもそうですし、段ボールもそうですし、裏の業務(マネージメント)もそうですし。それぞれが追われてて、でも追われるだけで潰れたら、観にきてくれる人に対して力を抜いた感じが出てしまうかもしんない、というか。それは自分の中で超えてかないとしゃあない。だから、2017年が終わってみた時に……ちょっと大きくなれたのかもしれないな、っていう感覚もあります。
僕自身のことで言うと、自分が表の人か裏の人かわからんようになった時期があって。「家でベース弾いてないよね、ずっとパソコン触ってるよね? これ、バンドマンなのか、マネージャーなのか」って思ったりとか。表に出た時に「イェイ!」ってやって、帰って来てPCに向かう、その振り幅の中で毎週やっていたので、もう自分がわからへんくなって、夏から秋ぐらいに。「何がしたいんかな、俺?」って。でも、それを解消してくれたのが、結局お客さんであったり、対バンの人とかで。「おもしろいよね」って言ってくれることに救われた感じはあったかな。
たとえば2マンのツアーを組む時に、誰とやらせてもらうか、誰に声かけさせてもらうかにしても、その時にベストな人、その時に一緒にやっておもしろい人って、半年ごとに変わってしまう気もしていて。たとえば2017年の一発目にBRAHMANが来てくれたからおもしろかったし、あのツアーの最後に氣志團が来てくれたからおもしろかったし。
でもそれ、半年前でも半年後でも、意味が全然変わるじゃないですか。いつ誰とどこでやらせてもらうかを考えるのって、お客さんからの期待値もあるし、大きいバンドとばっかりでも違うんやろな、っていうのもあるし。特に15周年やし、ハズせへんプレッシャーみたいなんはありましたね。
同じセットリストでフェスを回るのは、損してる気持ちになる
青春パンクを今ちゃんと、30超えていろんなことを覚えた上で、ミックスとかも本気でやって、作ってみたい。大人が新たに作り出す青春パンク、崇高とされてる音楽と戦えるだけの青春パンクって今まであるのかな、ないんちゃうかな、それを16年目でやってみたいな、っていうのがありまして。それで2曲目の「発明倶楽部」って曲ができたんです。で、「この曲メインでいこう」ってなってたんです。
毎週毎週フェスがある中、まさやんが作ってる姿を見ていて……たとえば日曜日にフェスが終わると、次の土日のフェス用のやつを、その日曜の夜から月曜の夜までで僕が考えて、火曜日の練習スタジオでまさやんに伝えるんですね。で、火曜の夜から金曜の夜にかけて、彼は作るんですよ。そのサイクルでずっと回ってたんですけど、伝えた時に「それは作れないな」とか「この日数では無理だな」って言われたら、僕またその日、持ち帰って考えなあかんやないですか。
そういうストレスが一回もなかったな、と思ったんですよ。そのストレスがないまま夏を乗り切ったな、と思った時に「絶対これを歌にした方がいいな」って。「僕、それでライブさせてもらってんなあ」という感謝の気持ちをこめて。まさやんに断られたら僕、ライブできないですからね。
それで、できあがって録ってみたら、メンバーもビクターもみんな気に入っちゃいまして。どっちを1曲目にするかを1日持ち帰って、次の日話し合った結果、こっちになったという感じですね。
だから、まさやんに作っててもらって、その間僕はずっとソデで他のバンドを観てて。で、新たに「ごめん、ちょっとこういうの作って」って発注することもあるし。それでも絶対「無理」とは言わないですね。で、作ってもらって、使わない時もある、ということになるんですけど(笑)。
笑わすためのものを、鬼の形相で作ってる
前のバンドが残り2曲、もうすぐ転換始まりますっていう時に、「ちょっとミッキーマウスの被り物作られへんかな?」って言われると、「マジかよ!」ってなるんですけど。でも、思いついたらやらないと気が済まない人だから。そういう人とバンドをやってる以上は、もうしかたない、ということですね。
全部自分らでやるのが普通じゃないんかな、そういうもんだよね、バンドって
「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」は、他のバンドでも真似しやすい要素は入れてる
「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」がどれくらいまでの可能性を秘めているのかが、今年の前半までのライブで決まると思うんですよ。それ次第かな、と思ってますね。何かタイトルを出すたびにライブを変えたいと思ってて。というか、ライブを変えるために何かタイトルを出したいと思ってるんですよね。今までもそれでずっとやって来たんですけど、それすらも一新できることになればいいな、とは思ってますね。もう根こそぎ変わってしまうような。
それによって、他のバンドも変わっちゃうぐらいの感じになればおもしろい。「あれ? あいつらメンバーのことを歌にしてるよ。『まさゆき』パクってない?」って思えるぐらいになりたいな、と思いますね。そうなれたら、それは全部を変えられたのかな、という。
だから、ちょっといやらしい話ですけど、他のバンドでも真似しやすい要素は入れてるというか。たとえば「運動会やりたい」って曲あるんですけど、あれは四星球のこの4人じゃないとできないと思ってるんですよ。でも「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」は、四星球じゃなくてもできる曲やと思うんで。
要するに、いくつフォーマットを持つか、っていうことじゃないですか。ナイツの漫才がすごいのって、フォーマットの数じゃないですか。フォーマットをいくつ作れるか、ハードがいかに優れてるか、っていう。で、「運動会やりたい」は、ハードのよさで勝負してるんですけど、今回は、ハード関係なしにできる曲やと思っていて。他のバンドさんも真似していただいていいですよ、っていう感じですね。
取材・文=兵庫慎司 撮影=風間大洋
リリース情報
ファーストEP『鋼鉄の段ボーラーまさゆき e.p.』
2018年1月31日発売
完全限定生産盤CD+DVD:VIZL-1296 / 税抜¥1,980
通常盤CD:VICL-37347 / 税抜¥1,280
※CD / DVDの収録内容をスマホで簡単再生できる「プレイパス」サービス対応
CD収録曲:
1. 鋼鉄の段ボーラーまさゆき
2. 発明倶楽部 (BSフジ「冗談手帖」1月クールエンディングテーマ)
3. 3:00 a.m.
4. はじめてのたいあっぷ (「じゃりんこイモの祭謎解きノート 大阪ナゾ道中」タイアップ主題歌 / テレビ朝日「じゅん散歩」12・1月度エンディングテーマ)
5. 六文役者
6. 直りかけのCamera
7. シークレットトラック
「四星球 at OTODAMA’ 17~音泉魂~“夏フェスというボケ編”」 1. <サウンドチェック~今年出てないひとメドレー> 2. <大トリ入場> 3. Mr. Cosmo 4. お告げ 5. クラーク博士と僕 6. 妖怪泣き笑い 7. 四星球十五年史 ~上巻~ 8. <まさやん卒業祭り> 9. WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント 10. 我ら吉野川同盟 2017年9月3日 大阪・泉大津フェニックスにて収録
Bonus: 鋼鉄の段ボーラーまさゆき -Music Video-
四星球1st e.p「鋼鉄の段ボーラーまさゆき e.p.」発売記念ツアー
2018年2月4日(日) なんばHatch 「四星中学発明倶楽部」
2018年3月3日(土) 名古屋DIAMONDHALL 「まさゆき絶体絶命のピンチ ~段ボールのダイアモンド~」
2018年4月12日(木) 川崎CLUB CITTA' 「メジャーをクビになる10の方法」
2018年5月10日(木) 高松オリーブホール 「モリスターバッシュ2018」
※各公演のチケット発売情報詳細はHPをご覧ください。
18:30集合/19:00スタート
18:30集合/19:00スタート
18:15集合/18:30スタート
13:30集合/14:00スタート
内容:まさやん(G.)&それ以外の段ボールメンバーとの写真撮影企画になります。
※撮影はお一人様1シャッターとなります。
※ご参加のお客様のスマホ・携帯電話のカメラ・デジカメ・写ルンですでの撮影となります。
※まさやん(G.)以外のメンバーはあくまでも"動きかけ"ですので、たまに動く場合もございます。
各店舗の参加方法詳細・注意事項はHPをご確認ください。
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