【fhána インタビュー】
居場所を作ろうと頑張ってきた軌跡は
自分のためだけの物語!
L→R 佐藤純一(Key&Cho)、towana(Vo)、kevin mitsunaga(Pc&Sampler)、yuxuki waga(Gu)
昨年は海外でライヴを行なうなど活動の幅を広げてきたfhánaの2018年第一弾シングル「わたしのための物語 〜My Uncompleted Story〜」。カップリングにはtowana(Vo)が初作詞した「ユーレカ」の収録と、5周年に向けて大きな一歩を踏み出す一枚になった。
「わたしのための物語 〜My Uncompleted Story〜」は非常にポップで爽快感のある曲で、歌詞もすごく前向きですね。
佐藤
この曲はTVアニメ『メルヘン・メドヘン』OP主題歌で、その作品は主人公の女の子が自分の居場所を作っていく成長物語でもあるんです。fhánaも音楽シーンの中で居場所を作ってきたし、きっと誰もが自分の居場所を作ろうともがいていると思うので、そういう頑張ってきた軌跡は、誰のものでもない自分のためだけの物語なんだよと歌っています。
《Wow Wow》と歌っているコーラスが印象的でした。
佐藤
その《Wow Wow》を入れてほしいというのが、制作側からの要望で。《Wow Wow》を活かすために、80年代の歌謡曲っぽい歌詞の雰囲気を狙ったのですが、結果的にfhánaの曲としては新鮮なものになりましたね。
yuxuki
メロディーがキャッチーで好きです。それに曲のアクセントの付け方が分かりやすく、演奏していて楽しかった。
kevin
個人的にはコード進行が好きです。fhánaの曲には転調が多いんだけど、これはその塩梅がすごく良くて。
佐藤
確かにコード進行は、さり気なく変わっているかもしれない(笑)。Aメロの中だけで2〜3回転調していて、サビはメロディーの音階を変えずにキーを転調させたりしています。ただ、あくまでさり気なく、ヌルっと転調する感じを狙ってます。
kevin
そういうところが職人っぽいですよね。
towanaさんはどんな印象だったんですか?
towana
最初はサビがちょっと違っていて、“サビが弱くない?”なんて話をしていたんですけど、そこから3バージョンくらいを経て、最終的にキャッチーでfhánaっぽいものになりましたね。それに、自分の得意とする歌い方がはまる曲だったので、すごく歌いやすかったです。
カップリングの「snow scene」はミディアムスローの楽曲で、タイトルの通り雪深い情景が浮かびますね。
yuxuki
北欧の街の絵があると仮定して、周りの人はみんな都会に出て行ってしまったけど、主人公はひとりでその土地で生きていくというストーリーを想像して作りました。
佐藤
モネの『Snow Scene at Argenteuil』という絵があって、タイトルはそこからインスパイアされています。
静かだけれど重厚さのあるサウンドですが、これはどんなふうにしてできていったのですか?
yuxuki
すごく多重録音をしていて、ギターだけで計20本くらい重ねています。ベースも5本くらい入っていて、ウッドベースの指弾きに加え、弓でもクラシカルな感じに弾いてもらい、さらにエレキのフレットレスベースに持ち替えて違うフレーズを弾いてもらったりしました。歌も加工したものを加えると20トラックくらいが同時に鳴っているんですよ。
そのコーラスによって神聖さも感じられますね。
towana
コーラスだけじゃなく、主旋律もハーモニーで奏でているので、全編をコーラスだけで構築しているような感覚の曲ですね。同じところを違う音程で何本も歌ったので、途中でぼ〜っとしてきてしまって、自分が今どこの何を歌っているのか分からなくなってしまった時もあって(笑)。
yuxuki
クワイアとか聖歌隊のようなイメージの曲を作りたかったので、それがしっかりできたと思いますね。
そして、towanaさんが作詞した「ユーレカ」も収録されていて。
佐藤
歌詞のテーマは僕が提示したんですけど、「snow scene」が故郷にひとりで取り残されてしまった人が主人公の曲で、「ユーレカ」はその故郷を出て都会に出てきた人の曲という対比になっています。アーバンな感じというか、都市生活者の憂鬱みたいなものが表現されたものになったらいいなと。
実際にサックスの音が入っていたり、80年代のAORやシティポップスのような雰囲気があるサウンドになっていますね。でも、初作詞は大変ではなかったですか?
towana
最初はずっと繰り返し曲を聴いていたり、気分転換にお散歩をしたりという期間がありましたけど、何度も聴いているうちに、だんだん言葉が聴こえてきて。実際に書き始めたらスムーズに書けたので、すごく楽しかった。
どんなことを意識して書いたのですか?
towana
意味も大切だけど、いかにメロと融合するかということかな。特に2サビの《しゃぼん玉みたいに滲む今日の空》は“この言葉だ!”と確信を持って書いた覚えがあります。
“ユーレカ”というのは“発見”といった意味ですよね。
towana
言葉として耳馴染みがないから“ん?”ってなるけど、聞き心地が良くて語感がかわいらしいし、意味としても初作詞で言葉を見つけた時の自分の気持ちと通じています。
佐藤
出来上がった歌詞を読むと、ひとりの歌い手としての実存みたいなものが迫ってくるものになっていて、ある種の私小説とか純文学的な歌詞になったなと思いましたね。
録り方にもこだわったそうですけど。
佐藤
最近録り音やミックスをアップデートしたいと試行錯誤を続けていて。ちょうど「ユーレカ」が一番最近に録った曲ということもあり、歌もギターも試行錯誤の成果が出て、単なる情報量という意味ではなく、自分たちが目指す気持ち良いと感じる音が、この曲で実現できました。
towana
息遣いや語尾の細かなニュアンスもしっかり聴こえてくるので、何度でも聴いて楽しんでほしいです。
では、最後にfhánaの2018年を1文字でお願いします。
佐藤
拡張の“拡”かな? 冒頭の話に通じてくるんですけど、fhánaの生きる場所を拡張したいです。芯をより深めながら外縁部をもっと広げていく感じでやっていきたいです。
yuxuki
同じこと考えてた!
kevin
さすがですね。
towana
じゃあ、それがfhánaの総意ということで(笑)。
佐藤
あまり間をあけずにアルバムを出して、それに伴うツアーもやる予定なので楽しみにしていてほしいです!
取材:榑林史章
「わたしのための物語 〜My Uncompleted Story〜」MV
アーティスト
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