【コレサワ】
ひとりだったからこそ、
ひとりじゃなくなった気持ちが強い
軽快にスタートダッシュを切るメジャーデビューアルバム『コレカラー』は、共感を呼ぶバラエティー豊かな12曲を収録。シンガーソングライターとしての“これから”の決意も詰め込んだ今作は、これまでの活動を経て身に付けた逞しさも感じられる作品になった。
初めてのフルアルバム『コレカラー』でメジャーデビューですね。メジャーデビューということに対して、これまでは漠然としたイメージだったと思うのですが、何か変わりました?
今も変わらず漠然としてますよ(笑)。でも、やっぱり日本クラウンさんと初めて一緒に作るCDというところで、関わる人が増えたっていうのは一番実感できることだと思います。あとは、周りに“おめでとう”って言われてようやく実感して、わくわくしている感じです。
タイトルは“これから”と“コレサワのカラー”をかけて“コレカラー”なのですよね?
そうなんです。これまでも駄洒落なので、“今回も駄洒落でいかなあかんやろ!”って(笑)。私にとってはここからが本当の闘いなんです。これまですごいと思える人がいたから、私もメジャーというものに憧れがあったので。今はインディーズとメジャーでそんなに変わらないところもあるけど、メジャーデビューっていう1個の夢が誰かにとっての憧れであってほしいし、メジャーに行っても変わらんなって思われたくない。だから、今回のジャケット写真では走り出したし、“これからだぞ”って自分に言い聞かせる意味でもこのタイトルが一番やなって思いました。
「君のバンド」「あたしを彼女にしたいなら」はこれからコレサワに出会う人にとっての挨拶的な2曲ですが、初期の楽曲「たばこ」はいろいろな人のカバーでも話題になっていますね。
「たばこ」は自分でも昔の曲すぎて忘れていたので、カバーされているのにはびっくりです。これは録り直しました。同じように歌いたかったんですけど、前の時は10代だったし、当時とは中身も違うと思っているので、それはもう無理やなって。演奏面ではなるべくその時のテンションとかはそのままにしつつも、バンドでロマンチックにしたかったです。あとは、PVを新しく作れたのが良かったですね。自分の頭の中に思い描いているものをウチボリさんに作っていただけました。
PVは楽曲で歌っている心情を見事に表したものになっていますよね。
“カメラは固定でお願いします!”とか、涙を流すタイミングとか泣き方もこだわって作りました。ウチボリさんのいいところって、ちゃんと現実を書いてくれるところで。実際はちょっと肉付きのいい女の子がほとんどだと思うんですけど、そこにウチボリさんのセンスが炸裂していて、足の太さとか…ナイス!(笑) 実は、たばこを吸っているシーンはPVと同じポジションにカメラを置いて、私が実際に録って送ったんですよ。どうやったら人がむせるのか?っていう(笑)。それを参考にしてもらいました。
だから、リアルに感じられるのですね。コレサワさんは「たばこ」みたいな失恋ソングも歌っていますけど新曲の「失恋ソングを歌ったあとに」はどういったきっかけからできたのですか?
まさに、“「たばこ」を歌っていたら私は不幸になる”“ずっとこんな恋愛しかできないんだ”…って思ったんですよ(笑)。1曲目の「SSW」(シンガーソングライター)も失恋の曲やし、失恋の歌ばかり歌っていたら幸せが逃げると思ったんですよ。それをプラマイゼロにするために作りました。
失恋ソングを歌ったあとにラブソングを歌ってほしいという曲ですけど、《ごめんねはその日のうちに》《別れ話で試したりしない約束にしようよ》って…結局、これがラブソングじゃないですか(笑)。
あはは(笑)。これはカラオケでカップルで、彼女が「たばこ」や「SSW」を歌ったあとに彼氏がスピッツの「チェリー」とかラブソングを歌ってほしいです!
「死ぬこと以外かすり傷」はいつもみたいに繰り返し歌うフレーズのセレクトが絶妙ですけど、“うち”っていう一人称を使っているのが珍しいなと。
…ほんまや! 昔高校の時に組んでたバンドがふたつあるんですけど、そのメンバーと仲が良くて。その子たちが聴いて分かってくれればいいやと思いながら書いたから、“うち”になってたのかな? これは高校生の時の自分のまんまですね。10代って勢いだけで生きているので、その勢いだけで書いてみた感じです。
民族楽器の音が入った「君とインドカレー」は新鮮ですね。
はい。“これはシタールやろ!”って思ったんですけど、手配が難しかったのでキーボードのシタールの音にして、パーカッションも入れてもらいました。言葉遊びみたいなところもあって、語尾が“カレー”と“(お待ち)かね”とか韻を踏んでいるのでそこも楽しんでいただけたら。
インド人のお兄さんが唐突に出てきますけど…
これはエンジニアさんなんですけど、その日のレコーディングにいた、マネージャーを含むおじさん3人でオーディションをしました。いきなりでびっくりしますよね(笑)。私は《真っ白いそのシャツにシミを付けたい》っていうサビがお気に入りなので、このサビができた時にこの曲はもう大丈夫って思いました。
「阪急電車と2DK」はGOOD BYE APRILが演奏と編曲を手掛けていますが、どういったいきさつで?
ずっとGOOD BYE APRILのファンなんですけど、ベースのえんちゃん(延本文音)と仲が良くて、ヒグチアイちゃんとかとたまに集まって洋服屋さんに行ったり、近状報告をしているんです。この曲ができた時に、私の中ではGOOD BYE APRILの音で再生されたし、コーラスも入れたかったのでお願いしたいなと思って。
地元のことを書いた曲ですけど、10代の頃に上京したことが大きいですか?
大阪の歌をずっと書きたかったっていうのもあるんですけど、あんなに落ち着く、良い色をしている電車はないっていうぐらい阪急電車で好きで。離れてみて分かりました。
「お姉ちゃんにだけ部屋があったことまだ恨んでるのかな」は弟に向けた曲で、ラップ調のフレーズから始まるのも勢いがあって面白いですよね。
ラップの部分を含めて歌うのが大変なので、ライヴではあんまりはしゃがないようにして歌います(笑)。
弟にしてきたいじわるエピソードに思わず笑ってしまう明るい曲ですけど、“自慢のお姉ちゃんになる”っていうひたむきな想いが健気ですよね。
家族っていうのは切っても切れない縁があるから、つながっているなって感じています。ジンとくるけど、“悲しいことも明るく歌えばいいんやな〜”って思いました。ポジティブっていうか、自分が生きやすいように変換して生きるのが得意で、都合のいいように生きてるんです(笑)。
でも、思わず好きな子にいじわるしちゃうみたいな愛情があると思いますよ。
私は好きですもん! でも、認めてもらえないくらいが頑張れるので、逆にありがとうっていう気持ちですかね。弟がこっそり聴いてくれているっていうのは私の願望…いや、聴いてくれてると思うんですけど…(笑)。いつも机の上に置いてきていて、それをどうしているかは分からないけど。
この曲自体はライヴで結構やっていますけど、本人にはまだ聴いてもらえていないんですね。
まだなんで、“この曲聴いてね!”って言って今回も置きますよ。でも、ノーコメントだと思いますね〜、あいつは(笑)。でも、根はやさしい子で、こんな不甲斐ない姉の代わりに母を安心させているのが嬉しいですね。
リード曲の「SSW」は“全ての元彼に捧げます”っていうところがある意味パンクだなと思いました。
確かに、気持ち的にはパンクですね。THE BLUE HEARTSの歌詞は中学生が聴いても分かるし、大人が聴いたら違う意味でも分かるっていうすごさがあるので、私もそういう歌詞を書きたいなっていうのを学生時代に思っていました。この曲は私だけじゃなくて、全世界のみんなの元彼に伝わればいいな。私の場合は音楽をやっている以上、全部ネタにしないとあかん。ネタにできるからこそ、辛いことがあっても“お金にかえてやるぞ”って思える(笑)。ひとりでやっているからこそ、サポートメンバー、スタッフ、ウチボリさんとかがいてくれる。そんな私は幸せだっていう曲です。
「女子諸君」のレコーディングは編曲の隅倉弘至さんをはじめ、あえて全員男性メンバーで行なったとのことですが。
隅倉さんは「君のバンド」の時からレコーディングに参加してくれている、音楽でのお父さんみたいな感じで、ずっと陰で支えてくれています。《男よりも夢をなくすほうが怖いし》って書いてるから、あえて男性の中で歌ったらエモいかなと思って、レコーディングメンバーは男性でお願いしました。みんな年上やし、新鮮でしたね。自分が一番年下なので、みんな可愛がってくれたというか、温かかったです。
おばあちゃんが買ってくれたブラジャーは、実際にライヴで衣装に縫い付けて披露していましたよね。
分かんない人もいるかもしれないけど、歌詞に入れちゃいました(笑)。「SSW」と同じなんですけど、ひとりだったからこそ、ひとりじゃなくなったという気持ちが強くて。曲を聴いてくれる人が昔より増えたことにも感謝しています。サビの《頑張れ》というフレーズは自分でもあまり言わないし、言われたくなかったんですけど…曲作りがうまくいかなかったり、ライヴがうまくいかなかったり、頑張りたいけど何を頑張ればいいのか分からない時に、友達に“頑張れってどういうことなんやろう?”って相談したら、“自分を信じることだよ”って言われて。“頑張れ”って努力するとかそういうことじゃなくて、自分のやりたいことを信じ抜くだけでいいんやと思ったら、“頑張れ”という言葉が好きになりました。
《自分のためにだけでもいいんだよ》とか、押し付ける“頑張れ”じゃないから、聴く人にはその気持ちが伝わると思います。
伝わるといいですね。女の子だけじゃなくておじさんからも評判が良くて、いい曲なんだなぁって自分で思ってます。おじさんは“女の子って健気でかわいいな”って、ランチとか奢ってあげてほしいですね(笑)。
「24歳」は以前にお母さんに書いた曲ですよね。
はい。もうすぐ24歳になる時に書きました。お母さんは24歳の時に私を産んだんですけど、自分が24歳を目の前にしてみたらまだやりたいことがいっぱいあって。そんな若い時に子供を産むことを決意した母はすごいなと思ったし、ちゃんと親離れしたよとか、タフに育ててくれてありがとうとか、心配せずにいてくださいっていう気持ちもあります。
曲中に《もう手紙はいりません》とありますが、実際に手紙はもらっていたのですか?
東京に遊びに来て、帰る時に手紙を渡されたりしていましたね。上京したばかりの頃は大阪に帰った時にも手紙をもらったり。でも、今は全然ないんですよね(笑)。
大切な人のことを《ご飯粒を残さない人です》っていうのがコレサワさんらしいなと(笑)。
お母さんに“お米ひと粒に7人の神様がおるねんで!”ってずっと言われていたから、今でもご飯粒は残さないようにしていますし、ご飯粒を残さない人がいいですね。絶対条件です!
(笑)。フジファブリックの金澤ダイスケさんが手掛けている「これから」は、どういったイメージでしたか?
金澤さんのキーボードって、なんでこんなにうきうきするんだろう?って思っていたので、いつか一緒にやりたいと思っていたんです。「これから」ができた時に金澤さんのキーボードのイメージがあったので、これは頼むしかないと思ってお願いしたら引き受けてくれました。私のイメージや曲に対する決意も伝えたので、それを踏まえてメンバーを集めてくれました。
言葉のことを自分の使える“魔法”と歌っていますね。
地域が違うところでも言葉で通じ合えるので、“どうやって言葉って生まれたんやろう? 魔法みたいやな”ってずっと思ってたんです。これからも言葉で勝負していくぞ!っていう決意の歌なので、これが最後にあって頭に「SSW」があれば間には何があっても大丈夫だろうと思いました。曲順はライヴのセトリみたいに考えていて、前半は中高生でも分かりやすくて、進むにつれてだんだん深くなっていくので大人の人にも好きになってもらえるアルバムになったんじゃないかと思います。
リリース後の10月からはワンマンツアーが始まりますね。
ぼっち編とバンド編成の仲間編があるんですけど、ぼっち編ではお客さんと話しながら自由にやりたいですね。仲間編は音で勝負ができるライヴくらい、がっつり曲をやって帰ります。最後は渋谷WWW2デイズなんですけど、2日間まったく同じことっていうのはしないので、期待して来てほしいです!
取材:高良美咲
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