【ねごと】
ミステリアスな“スピッツイズム”を
継承したい
L→R 藤咲 佑(Ba)、蒼山幸子(Vo&Key)、沙田瑞紀(Gu)、澤村小夜子(Dr)
土屋太鳳主演の映画『トリガール!』とタッグを組んだダブルAサイドシングル「空も飛べるはず / ALL RIGHT」。人力飛行機に青春を懸ける若者たちを描いた作品が、ねごとの持つ片や透明感と、片や疾走感と溶け合い、世代を超えたときめきを与える今作について、蒼山幸子(Vo&Key)が語る。
今回のシングルは映画『トリガール!』の主題歌&挿入歌な上に、前者はスピッツの名曲カバーということで、少なからずプレッシャーもありませんでしたか?
いえ、プレッシャーよりも“ぜひやりたいです!”っていう気持ちのほうが大きかったですね。今回は監督から“ぜひ主題歌と挿入歌をねごとにお願いしたい”というお話をいただいて、その時点で「空も飛べるはず」のカバーということも決まっていたのですが…私、日本のバンドで一番好きなんじゃないかと思うくらい、スピッツさんが大好きなんですよ。しかも、映像を観させていただいたら、映画も“青春”というところにフィーチャーしたすごく気持ちが良い作品で。土屋太鳳さん演じる主人公のパワフルさにも惹かれましたし、テンポ感も良くて素敵な映画だったから、その主題歌で「空も飛べるはず」をカバーさせていただけるなんて、こんなに良いお話はないなぁと嬉しかったです。
そして、出来上がった「空も飛べるはず」はキラキラとした青春感がありながらも、その光が直射日光ではなく間接照明のように柔らかくて、ノスタルジックな感慨を覚えました。
ありがとうございます。やっぱり誰もが知る名曲なので、原曲を大切にしながら、ねごとらしさのエッセンスを足していこうという話になったんです。ただ、ガールズバンドがきれいなアレンジをするとかわいい感じになってしまうので、ちょっとガレージ感みたいなものを出したいってギターの沙田瑞紀は言ってました。で、実際にレコーディングしてみたら、良い意味でこの曲の良さに打ちのめされたんですよ。すごい歌詞だなぁ、メロディーだなぁって、カバーをしたことでスピッツさんの偉大さを改めて思い知らされました。
よくよく聴くと、結構意味深な歌詞ですからね。ドキッとする言葉が散りばめられている。
そうなんですよ。含みがあるし、色気があるし、どういうことなんだろう?って想像しちゃう。実は毒があったり、ダークだったり、きっと草野マサムネさんじゃない人が歌ったら、まったく違って聴こえると思うんですね。そこを飛び越える声を持ってらっしゃる上に、メロディーはキャッチーで、ポップシーンでの名曲もたくさんある。だけど、ライヴを観ればちゃんとロックバンドしてるのがスピッツの一番カッコ良いところだと思うんですよ。だから、今回のタイアップで、ねごとを知ってもらいたい気持ちも当然ありますけど、私たちを通してスピッツというバンドや「空も飛べるはず」という曲の存在を知ってほしい想いも大きいんです。内容的にも『トリガール!』という映画は、きっと私たちと同世代だったり、さらに若い世代の人が観る映画のように思うので。
ちなみに映画本編で、この曲はエンディングで流れるわけですよね?
そうです。そのエンドロールもすごく工夫がされていて、人力飛行機で空を飛びながら主人公同士が会話をしているアニメーションの中でねごとの話をしてくださってるんです。そこに監督の愛を感じましたし、挿入歌の「ALL RIGHT」のほうも思ったよりしっかり聴こえる感じになっていて! 主人公たちが体力作りのために自転車で走り始めるシーンに流れるんですけど、情景と曲がものすごく合ってるんですよ。そういった場面的にも“疾走感のある曲だと嬉しいです”というお話もいただいていたので、久々にこういうロックバンド然としたねごとを押し出した曲になったんです。
ここのところアルバムの『ETERNALBEAT』だったり、エレクトロな方向性に進んでいらっしゃったので、最初に聴いた時は驚いたのですが、そのお話を聞けば納得です。
結果的に、これはこれでねごとらしい一曲になったと思います。きっと監督もねごとが持ってるそういった疾走感だったり、透明感に映画のイメージと重なるものを感じてくださったんだと思うんですね。おまけに今回はMVにも太鳳さんが出演してくださっていて、まさに彼女が空を飛んでいる美しい情景で、その場面が「ALL RIGHT」でも一瞬出てきて、2本がつながっているような作りになってるんですよ。撮影の合間には実際にお話もさせてもらって、より『トリガール!』に対して愛着が沸きました。
9月1日の『トリガール!』公開を控え、これからねごとの音楽がどんどん世の中に伝わっていくでしょうね。
ツアーのMCでも話したんですけど、今年は本当に活動的な1年にしたいと考えているんですよ。ねごとを知らなかった層の人にもアプローチしていきたいですし…まぁ、6月に出した「DANCER IN THE HANABIRA」と今作では全然毛色も違うんですけど、どちらもねごとであることに間違いはないので。これをきっかけにスピッツも、私たちの音楽も掘り下げてもらえたら嬉しいですね。
バンドサウンドであれ、打ち込み満載のエレクトロであれ、確かに“ねごと節”ってありますよね。
パッと見はさわやかに見えて、じんわり熱いというか、芯に熱があるような感じはありますよね。
その見た目と実体が裏腹なところは、スピッツにも通じるように感じます。
私もスピッツさんのそういうところが好きなんですよ! とっつきやすいのに棘があって、近付いたら危険な感じもして…すごくミステリアス。今の時代は分かりやすい歌詞が多いけれど、そういう余白のある言葉の書き方に私は魅力を感じるんです。それで今回、ジャケット写真もスピッツの「空も飛べるはず」の色味と、挿入歌のタイトルに、ザ・フーの「キッズ・アー・オールライト」の構図を掛け合わせたオマージュになっているんですよ。もちろん真似はできないですけど、そういったスピッツイズムを私たちも受け継いでいきたいですね。
取材:清水素子
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