yulayulaz『幾何学模様』【時代は戻
る、のではなく、したたかに巡り還る
】
「あぶくのようだ」は偶さかあちこちでよく聴いていたのでネクスト・シングなのだなと思いながら、このバンドの全容やまだまだのポテンシャルは見えないままでいる。
***
この映像内で見せる楽器が密接に寄り合わずにも、ただ、鋭利に朗らかにホメオスタシスを紙縒りの上に置いているのはクラムボンのややアシッドな時期、いやもっと、MPB、ブラジル音楽の行間の中でのドミンゴを確かめる風情に重なりあるリズムは重なる風情もおぼえては、サイケデリックとかローファイ、ネオ・フォークなどの冠詞はいいとして、ソリッドな、ピアノボーカル、トロンボーン、ベース、ドラム編成の男女混合バンドとしてはオルター(Alter)なようでリズムの精確さと、ときに無秩序に譜面から離れたときの自在さには“ゆらゆら”はゆらゆら帝国、フィッシュマンズ、昨今のポスト・クラシカルといった過去例をシンクさせずとも、瀬戸際の葛藤を音の中に漬け込んでくれる。
もっとドープなところと、軽やかなシェルターを往来する内層にこそ一層、彼らの音・音楽はアート性と、伝言板みたく翻訳できない人にも届く気がしている。そして、ファンク・トゥ・ソウル、ソウルからモノクロームと浅いステージ・ライトのあいだの小声の優しさが模様にはならないよう、模様は感応できる誰かが居て成立する気がするだけにグルーヴが優しく。
新しい世代の良質なシティポップや、デカダンスを前提としたリプレゼントが目立っているなかで、かのクレプスキュール・レーベルから、全冷中な何か、また、矢野顕子女史、自問自答が巡る感覚の彼らの音楽は何だか真摯過ぎて、ゆらゆらしていられなくなってくる。行間を墨汁で塗りつぶしてゆくのではなく「間、が美しい」のがいいのもあるが、こういった音に、ライヴに触れてしまうだけで虜になる人はいるのでは、と思う。時代は戻る、のではなく、したたかに巡り還る。
(2017.8.15) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
おすすめ記事
-
『OKMusic』サービス終了のお知らせ
2024.02.20 11:30
-
音楽ファンの声、エールを募集! music UP's/OKMusic特別企画 『Power To The Music』 【vol.89】公開
2024.02.20 10:00
-
今年でデビュー50周年の THE ALFEEが開催する、 春の全国ツアー神奈川公演の チケット販売がいよいよ開始!
2024.02.13 18:00
-
音楽ファンの声、エールを募集! music UP's/OKMusic特別企画 『Power To The Music』 【vol.88】公開
2024.01.20 10:00
-
宇多田ヒカル、 初のベストアルバム 『SCIENCE FICTION』発売決定& 全国ツアーの詳細を発表
2024.01.15 11:00
人気
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第1回 『自己紹介を。』 -
2014.12.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第16回 『巡り合いを。』 -
2016.03.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第2回 『忘れられていることを。』 -
2015.01.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第3回 『魔法の言葉は在るということ、を。』 -
2015.02.20 00:00
-
【連載】 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴 『ナニヲなにを。』 - 第4回 『モヤモヤの正体を。』 -
2015.03.20 00:00