【インタビュー】リングス・オブ・サ
ターン、エイリアン・デスコアという
最先端の音楽
カリフォルニア出身、変態テクニカル・エイリアン・デスコア・バンド、リングス・オブ・サターンが4thアルバム『オルトゥ・ウラ』をリリースする。『オルトゥ・ウラ』は、2017年時点におけるエクストリーム・メタルの究極形態のひとつであることは間違いないだろう。エクストリーム・メタルの演奏テクニックもここまで進化したのだ。
とは言え、『オルトゥ・ウラ』がテクニックをひけらかし、変態スタイルをゴリ押しするような一辺倒の作品ではない。メロデス・ファンでも十分に楽しめる、印象的なフレーズ満載の、いわば“聴きやすい変態”アルバムとでも言うべきか。エイリアン・デスコアという最先端の音楽はどのように生まれるのか、リーダーであるギタリスト、ルーカス・マンに聞いてみた。
──ニュー・アルバム『Ultu Ulla』は、以前のアルバムと比べるとどんな作品ですか?
ルーカス・マン:以前のアルバムでは、細部に至るまでほとんど俺ひとりで曲を書いていたのだけれど、今回は他のメンバーの貢献があった。それに今回はシンセサイザーも使ったし、いくつものレイヤーがあって立体的な音使いになっていると思う。エクストリームなギターやエクストリームなドラムだけでなく、まったく新しい楽器使いになっているよ。
──今回のアルバムは、メロディックになっているという印象を受けたのですが。
ルーカス・マン:そうだね、何というか(笑)…うん、同意するよ(笑)。
──マイルズ・ディミトリ・ベイカーが新たなギタリストとして加入していますが、この変化は彼の影響によるものでしょうか。
ルーカス・マン:他のメンバーが書いたパートについても、一応俺がすべて見直しをするんだ。リングス・オブ・サターンの方向性に合うかの確認をするためにね。確かにマイルズはメロディックなパートのいくつかを書いたよ。シンセは全部俺が弾いたけれど。今回確かに、基本的に聴きやすい方向性をとろうという意図があった。メンバーお互いで補いあった結果だね。過去の作品と同じことをやるのではなく、ロジカルな進歩をした結果だよ。
──今回はホールトーンやディミニッシュ・スケールではなく、一般的なスケールも多用されていますよね。
ルーカス・マン:確かに普通のスケールも使われているけど、いまだにホールトーンやディミニッシュも多用されていると思うよ。
──そもそもホールトーンやディミニッシュに惹かれるのは何故なのですか。
ルーカス・マン:ハーモニック・マイナーも好きだよ。だけどホールトーンやディミニッシュを使うとアウト感が出るだろ?即座に耳を惹きつける力があるというのかな。もちろん普通のメロディも素晴らしいけれど、こういうスケールを使うと、ファンや、あるいはファンでなくても、「一体今のは何なんだ?」という感じで注意を引きつけられる。無調のメロディというのは、通常のものとは違った形で頭に残るからね。ファンが楽しめる俺たちの特徴的なスタイルさ。
──「パラレル・シフト」は、中間部のシンセ・パートがゲーム音楽っぽいですが。
ルーカス・マン:ビデオ・ゲームというのは、俺が曲を書く上で非常に大きなインスピレーションなんだ。特にシンセ・パートにおいてはね。TVゲームやそのサウンドトラック以外の音楽/バンドからインスピレーションを受けることはないんだ。TVゲームの音楽というのは、ただギターとベース、バスドラが一緒に演奏しているだけではなくて、メロディやアレンジが複雑で非常に多くのことが同時に起こっているものだ。それぞれのメロディや楽器を取り出して聴いてみると、とても刺激的でまったく退屈することがない。だから俺が曲を書くときも、同時にいくつものことが起こるようなスタイルにしている。「パラレル・シフト」のシンセ・パートは、俺もとても気に入っているよ。
──ジャズやクラシックの風味を感じるパートもあるのですが、こういった音楽からの影響はありますか?
ルーカス・マン:TVゲームだけだね。他のバンドというのはなるべく聴かないようにしているんだよ。聴いてしまうと、意識的であれ無意識であれ、似たような音楽を書くはめになりかねない。俺は他人にインスピレーションを与えるような、新しい音楽を書きたいんだ。TVゲームからインスピレーションを受けている人はそう多くないだろうし。それから自分が昔書いた曲からインスピレーションを受けて、さらに先へ進めるかというのも試しているからね。
──歌詞のコンセプトは?
ルーカス・マン:俺はボーカリストでも歌詞を書く担当でもないけれど、人類を作ったエイリアンが“人類は失敗作だ”という結論に達し、人類を抹殺する。その後エイリアンは天使と悪魔と戦い、その戦いに勝利をすると、時間と空間を超えて別次元へと向かう。そこで偶然古の存在に遭遇する。その存在は非常に強力で、宇宙の存在そのものを消す力を持っている。おそらくはその存在が宇宙というものを作り出したんだ。
──今回もアルバム・タイトルはシュメール語ですが、これは何故なのでしょう。
ルーカス・マン:俺とボーカリストでリサーチをしたのだけど、シュメール文明の時代にエイリアンが地球にやってきたと言われているんだ。シュメール人たちは、その様子を「天の神」という形で書き残しているんだよ。とても興味深いだろ?
──「土星の環」というバンド名もユニークですが、なぜその名前に?
ルーカス・マン:エイリアンというのが俺たちの追求するテーマだからね。それに土星は俺のお気に入りの惑星なんだ。見てすぐ土星だとわかるだろ。それに俺は1月生まれだから占星学的にも土星が俺の星なんだよ。それに「土星の環」という方が「天王星の環」というよりかっこいい(笑)。
──ギターを始めた頃はどのようなものを弾いていたのですか?
ルーカス・マン:中学生の頃だけど、2006年頃にスーサイド・サイレンスやホワイトチャペルのようなデスコア・バンドが登場して、そこからどんどんテクニカルになっていった訳だけど、ギターを始めた頃はもっとシンプルなロックとか弾いていたな。確か12~13歳の頃だったと思う。日時に関する記憶力が非常に悪いので確かじゃないけど(笑)。
──当時どのくらい練習していました?
ルーカス・マン:当時は学校から帰って来てほとんどずっとギターを弾いていたね。学校にいる時と寝てる時以外は、ずっとギターを練習していた。毎日6~8時間は弾いていたんじゃないかな。とにかく上手くなりたかったんだ。だから毎日練習し続けて高校を卒業するころにはすでにリングス・オブ・サターンで曲を作り、レーベルと契約もしてSummer Slaughterといった大がかりなツアーに参加するようになっていた。そこにたどり着くまで、あっという間だったな。
──若いギタリストにできるアドバイスといえばどういうことですか?
ルーカス・マン:とにかく練習あるのみだよ。練習しかない。脳に覚えこませて、そして筋肉記憶に刻みこむ。何度も何度も同じ動きを練習すれば、身体が覚える。俺は今では何も考えずにスイープをやれるし、もはや練習も必要もない。10数年も毎日6~8時間練習してきたからね。正しい練習をすること、そしてリラックスをすることが大事だ。インターネットにはたくさん有益な情報もある。
──では最後に日本のファンへのメッセージを。
ルーカス・マン:日本ではプレイしたことないけど、もしいつか行けたらクレイジーだね(笑)。
取材・文:川嶋未来/SIGH
編集:BARKS編集部
Photo by Stephanie Cabal
リングス・オブ・サターン『オルトゥ・ウラ』
2017年7月28日 世界同時発売
【CD】 ¥2,300+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.サーヴァント・オブ・ディス・センティエンス
2.パラレル・シフト
3.アンハロウド
4.イメモリアル・エッセンス
5.ザ・レリック
6.マーギッダ
7.ハーヴェスト
8.ザ・マクロコズム
9.プログノシス・コンファームド
10.インアディクエット
【メンバー】
ルーカス・マン(ギター/ベース/シンセサイザー)
イアン・ベアラ(ヴォーカル)
アーロン・ステッカウナー(ドラムス)
マイルス・ディミトリ・ベイカー(ギター)
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